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第三章 ジュリエッタ逃亡編

内緒話 2

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「と言うか、まあ我慢するよりは、ほんの少し食べると言う方法ね。
例えばお菓子。
我慢はするけど、お母様の分を一口だけ分けてもらう。
お友達から一粒だけもらう、と言うやり方をしたの。
絶対に食べないと言う方法より、
一口だけでも食べれば満足感も違うでしょ?」

「お菓子だけでいいのですか?」

「私の場合は、お菓子だけだったけど、
例えば好きなおかずって、ついつい食べ過ぎてしまうでしょう?
それも一口ちょうだいにするか、小さなお皿に自分の分を盛ってもらうの。
見た目は沢山あるように見えるから、視覚的に満足感があるわ。」

「とてもいい方法だと思いますが、やっぱり寂しいわ。」

まあ、ダイエット中は、我慢の連続だからね。

「そう、だから私は週に1日だけ、ダイエットお休み日を作ったの。
だからと言って、その日は馬鹿食いしていいと言う訳では無いわ。
ただ普通に、好きな物やスイーツを解禁したの。
一週間のうちの特別な日、その日が私に取って、とても幸せな日になったわ。」

「それっていいかもしれないわ。」

「先生、それで結果はどうでしたか?」

「そうね、個人差があるでしょうから、私の数値は単なる参考ですが、
一月で2キロほど痩せたわ。」

2キロも!と驚いている子もいれば、それだけ…。とがっかりしている子もいる。
やはりポッチャリちゃんほど、がっかりしている子が多いようだ。

「ダイエットは、結局は日々の積み重ねです。
無理な方法を取って、早く痩せようと思っても結局は体を壊すのが落ち、
ならば気を長く持って、少しづつ無理のない方法でするのが一番ですよ。
あなた方はまだ若いんですもの、
例え一月2キロでも、10か月で20キロも減る計算ですよ。
まあ楽観的に考えた数字ですけど、
とにかく継続できる方法を考え、諦める事無く続けるのが一番です。」

さっきまでガッカリしていた子が、今は目を輝かせている。
20キロ………そう呟いていた。
少しでも力になれたならいいのだけれど…。

「さて、ダイエットで他にお話ししたい方はいますか?」

誰も手を上げる様子が無い。

「では、他にお話したい事はありますか?」

「先生のお話が聞きたいです。」

一人の生徒が手を挙げ、そう言う。
プライべートな事は話せないわね。
それならと、一つ思いついた事を話し始めた。

「それでは、女の子だけの秘密のお話をしましょうか。
これは殿方に言わない様に。
皆様はレディーファーストと言う言葉を知っていますか?」

はい!と数人の子が手を上げる。

「紳士が女性を思いやり、優しく丁寧に接する為のマナーです。」

自信たっぷりにそう言う。
そうなのよね、私もそうだと思っていたわ。

「ほとんどの方がそう思っていると思います。
男性の方もそう考えている人が多いですね。
でも、本来の意味は違うのです。」

さて、この話を聞いて幻滅しなければいいけれど。
まあ、現実を知っておいて、損は無いでしょう。

「これから私が話す事は、男性ですら思い違いをし、
皆が思っているレディーファーストを、
真実と受け取っている方もいらっしゃるでしょう。
男性には、今から話す事は内緒にしていた方が賢いと思います。
さて、レディーファーストとは、
先ほどアンが言った意味通りだと思っている方は?」

すると、殆んどの子が手を挙げた。

「先生、もしかして違うんですか?」

「ええ。実はこの作法が出来た当時、本来の意味は真逆だったのです。」

嘘~。真逆ってどういう事?
皆が興味津々だ。

「後から本来の意味通りの作法も付け加えられましたが、
元々有った物は、女性にとってかなり隷属的でした。
例えば、知っている物を言ってみて下さい。」

「えっと、男性がドアを開け、女性を先に通してあげる。」

「そうですね、これも当初からあった作法の一つです。
今はある程度平和な時代ですが、昔は暗殺や人殺しが横行しておりました。
それで男性は、暗殺者が自分を襲ってくることを恐れ、
先に女性を部屋に通したのです。」

「酷い!」

「そう言う時代だったのです。男性上位の時代はそれが普通だったのですね。
他の例を知っている方は?」

「女性を馬車から守るため、車道側を歩かせない。」

「ええ、これも同じです。
少々汚い話ですが、昔は汚物などは窓からそのまま捨てる事が普通でした。
車道の反対側に有る物、それは建物ですね。
つまり女性をそちら側に歩かせ、上から降ってくる物を男性は除けたのです。」

「つまり、女性は盾ですか?」

「そう、その通り。」

「でっ、では先生、もしかして女性が食事に手を付けるまで、
男性は食べないで待つと言うのは………。」

「分って来たようですね。
それは女性を毒見役にしていたのです。」

みんなショックを受けたようだ。
この話題は、振らない方が良かったのかな。

「ですが、現在はそのマナーを考え違いしている方が多いのです。
だからこの話は、あなた方の胸の中にしまっておいて下さい。
男性のプライドも有るでしょうし、
今の時代、上から汚物が降ってくるなど無いでしょう?
ですから男性も、自分を盾にして馬車から女性を守っているつもりなのですから。」

ごめんなさい、あなた達の夢をすっかり壊しちゃったわね。
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