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52話 ギルドからお願い
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ギルド内が一瞬静まり返り、その後囁き声がギルドのあちこちで聞こえてきた。
大した事がないんだったら、なんでそんなに驚いているの?
「珍しい事、なの?」
「珍しいって言うより、難しいんだよ。」
「難しい?」
「そう。専属の受付嬢っていうのは、その受付嬢が優秀でもあるの。」
「優秀なんですか?」
エヴァドネからイサドラさんを見ると微笑んでいる。
また、エヴァドネが真剣に話し出した。
「こちらから名前を聞いても取り合ってもらえないの。で、専属の話は名前と一緒に受付嬢から告げられるもので、そのパーティー若しくは個人に対して必要なサポートをしてくれる、らしい。」
え?らしい?
ここに来て曖昧になった。
エヴァドネにジト目で睨む。
「メイジー、そんな目でみないで。そう言う噂があるのよ。」
「噂、なんですね。」
単純に荒っぽい冒険者に名前を教えないだけなんじゃ?
それに、私が入る前の撃絶の黒颷に闇色の子、黒持ちがいた分怖がられていたっていう落ちでは?
ってことは、私も黒持ちだからパーティーで二人になるんだけど…。
メイジーはカウンター越しに前のめりになり、片手を口の横に立てて小声でイサドラに話をする。
「イサドラさん、耳を…。」
イサドラはメイジーが小さな声で話し掛けてきた為、耳を傾けた。
「黒持ちが二人ですけど、それでも専属に?」
「存じております。それに専属になるにはギルドマスターの承諾が必要です。」
ふ~ん。そうなんだ。
メイジーは取り敢えず納得する。
「これから宜しくね!」
「こちらこそ。」
小声で話し込んでいた内容はメンバーには聞こえなかったようで、首を傾げながらも受付嬢に挨拶を交わしていた。
「あの、私にお願いって…私に出来る事でしょうか?」
挨拶もすみ、メイジーが話を切り出した。
「はい。昨日薬草を納品して頂きありがとうございました。ギルドの在庫が少なくなっていて困っていたんです。それに納品された品質も高品質で薬師の方から絶賛しておりました。現状では浅瀬に薬草が少なくなっている為、奥まで入らなくてはならず。今はCランク以上と行動しないとCランク以下の者は奥まで入れないんです。ここ数日、薬草採取の依頼を受ける者がいなくて困っていた所に、メイジー様が採取して下さった高品質の薬草です。」
「普通に採取しただけなんだけどな~。」
「ギルドからお願いなのですが。また、薬草を少し多く採取していただけないでしょうか?報酬については危険手当付き五束で1000ギルに品質によって報酬を上乗せさせていただきます。」
メイジーは依頼を受けても構わないと思っているが、アディスに確認を取る。
「アディス。私はやってもいいかなって思ってるんだけど、どうかな?」
「メイジーが良いのであれば。それにギルドに着く前に話をしていた件、ついでに出来るんじゃないのか?」
「そうだね。」
メイジーとアディスの話にイサドラは首を傾げる。
「依頼を受けるよ。五束以上採取したら良いんだよね?」
「はい。ありがとうございます!」
「あと、ついでに奥にある薬草を浅瀬に持ってきて、植え直しておくよ。」
軽く伝えた事にイサドラは目を見開いて驚く。
「え?そんなことができるんですか?!普通枯れますよ!」
「そんなに大きな声を出さないで下さい。」
「ゴホンッ…し、失礼致しました。私もまだまだですね。」
メイジーは小さな声でイサドラに伝える。
「方法はありますので大丈夫です。」
「分かりました。ですが、その植え替えについては、報酬が支払われない為、ご注意下さい。」
「はい。それについては個人的にやってみたいだけなので。だけど、こちらからもお願いと言うか注意…かな?」
「どのような事でしょう。」
「昨日採取方法についてお伝えしているんですけどイサドラさんは聞いています?」
「はい。採取する際にはナイフなどで採取し、引き抜かない、千切らない、長く薬草を持たず鞄などで持ち歩き、なるべく早く納品する、と聞いています。ですので、今後採取する方にはお伝えするようになっています。」
「昨日の話だったのでまだ伝わっていないかと思っていましたが…。」
「情報は貴重なので、早い対応が求められます。ちょっとした情報で知っているのと知らないのとでは冒険者、私達の命を左右する場合があるのですから。」
アディス達はイサドラの言葉に頷く。
「情報の連絡が早くて良かったよ。じゃあ、薬草は地面から大体三センチくらい残すことと、短くなっている薬草は採取しない事、薬草群は全部刈らないこと。…かな。」
「あの、最初の二つは分かるのですが…。最後の薬草群は何故全部刈ってはダメなんですか?」
「えー?だって、そんなことしたら、薬草が枯れてしまう場合があるし、翌日も採取するかもしれない、それに他の冒険者だって採取するのに無ければ、また根っこまで抜く恐れがある。そうすると、どうなっていくか分かりますよね?」
「薬草採取が難しくなる、と言うことですね。」
「そうだよ。植え替えしても意味が無いからね。」
「分かりました。この情報は迅速に伝えさせて頂きます。」
「宜しくね。」
メイジーとイサドラの遣り取りが終わり、メイジーがアディスを見ると満足気に頷いていた。
その後、アディスからもイサドラに伝える。
「薬草の情報については宜しく。それと、メイジーの薬草採取とメンバー全員で森の魔物討伐もするので、手続きを。」
「畏まりました。」
ギルドカードを渡し処理を済ませたあと、パマディマの森に向かったのだった。
大した事がないんだったら、なんでそんなに驚いているの?
「珍しい事、なの?」
「珍しいって言うより、難しいんだよ。」
「難しい?」
「そう。専属の受付嬢っていうのは、その受付嬢が優秀でもあるの。」
「優秀なんですか?」
エヴァドネからイサドラさんを見ると微笑んでいる。
また、エヴァドネが真剣に話し出した。
「こちらから名前を聞いても取り合ってもらえないの。で、専属の話は名前と一緒に受付嬢から告げられるもので、そのパーティー若しくは個人に対して必要なサポートをしてくれる、らしい。」
え?らしい?
ここに来て曖昧になった。
エヴァドネにジト目で睨む。
「メイジー、そんな目でみないで。そう言う噂があるのよ。」
「噂、なんですね。」
単純に荒っぽい冒険者に名前を教えないだけなんじゃ?
それに、私が入る前の撃絶の黒颷に闇色の子、黒持ちがいた分怖がられていたっていう落ちでは?
ってことは、私も黒持ちだからパーティーで二人になるんだけど…。
メイジーはカウンター越しに前のめりになり、片手を口の横に立てて小声でイサドラに話をする。
「イサドラさん、耳を…。」
イサドラはメイジーが小さな声で話し掛けてきた為、耳を傾けた。
「黒持ちが二人ですけど、それでも専属に?」
「存じております。それに専属になるにはギルドマスターの承諾が必要です。」
ふ~ん。そうなんだ。
メイジーは取り敢えず納得する。
「これから宜しくね!」
「こちらこそ。」
小声で話し込んでいた内容はメンバーには聞こえなかったようで、首を傾げながらも受付嬢に挨拶を交わしていた。
「あの、私にお願いって…私に出来る事でしょうか?」
挨拶もすみ、メイジーが話を切り出した。
「はい。昨日薬草を納品して頂きありがとうございました。ギルドの在庫が少なくなっていて困っていたんです。それに納品された品質も高品質で薬師の方から絶賛しておりました。現状では浅瀬に薬草が少なくなっている為、奥まで入らなくてはならず。今はCランク以上と行動しないとCランク以下の者は奥まで入れないんです。ここ数日、薬草採取の依頼を受ける者がいなくて困っていた所に、メイジー様が採取して下さった高品質の薬草です。」
「普通に採取しただけなんだけどな~。」
「ギルドからお願いなのですが。また、薬草を少し多く採取していただけないでしょうか?報酬については危険手当付き五束で1000ギルに品質によって報酬を上乗せさせていただきます。」
メイジーは依頼を受けても構わないと思っているが、アディスに確認を取る。
「アディス。私はやってもいいかなって思ってるんだけど、どうかな?」
「メイジーが良いのであれば。それにギルドに着く前に話をしていた件、ついでに出来るんじゃないのか?」
「そうだね。」
メイジーとアディスの話にイサドラは首を傾げる。
「依頼を受けるよ。五束以上採取したら良いんだよね?」
「はい。ありがとうございます!」
「あと、ついでに奥にある薬草を浅瀬に持ってきて、植え直しておくよ。」
軽く伝えた事にイサドラは目を見開いて驚く。
「え?そんなことができるんですか?!普通枯れますよ!」
「そんなに大きな声を出さないで下さい。」
「ゴホンッ…し、失礼致しました。私もまだまだですね。」
メイジーは小さな声でイサドラに伝える。
「方法はありますので大丈夫です。」
「分かりました。ですが、その植え替えについては、報酬が支払われない為、ご注意下さい。」
「はい。それについては個人的にやってみたいだけなので。だけど、こちらからもお願いと言うか注意…かな?」
「どのような事でしょう。」
「昨日採取方法についてお伝えしているんですけどイサドラさんは聞いています?」
「はい。採取する際にはナイフなどで採取し、引き抜かない、千切らない、長く薬草を持たず鞄などで持ち歩き、なるべく早く納品する、と聞いています。ですので、今後採取する方にはお伝えするようになっています。」
「昨日の話だったのでまだ伝わっていないかと思っていましたが…。」
「情報は貴重なので、早い対応が求められます。ちょっとした情報で知っているのと知らないのとでは冒険者、私達の命を左右する場合があるのですから。」
アディス達はイサドラの言葉に頷く。
「情報の連絡が早くて良かったよ。じゃあ、薬草は地面から大体三センチくらい残すことと、短くなっている薬草は採取しない事、薬草群は全部刈らないこと。…かな。」
「あの、最初の二つは分かるのですが…。最後の薬草群は何故全部刈ってはダメなんですか?」
「えー?だって、そんなことしたら、薬草が枯れてしまう場合があるし、翌日も採取するかもしれない、それに他の冒険者だって採取するのに無ければ、また根っこまで抜く恐れがある。そうすると、どうなっていくか分かりますよね?」
「薬草採取が難しくなる、と言うことですね。」
「そうだよ。植え替えしても意味が無いからね。」
「分かりました。この情報は迅速に伝えさせて頂きます。」
「宜しくね。」
メイジーとイサドラの遣り取りが終わり、メイジーがアディスを見ると満足気に頷いていた。
その後、アディスからもイサドラに伝える。
「薬草の情報については宜しく。それと、メイジーの薬草採取とメンバー全員で森の魔物討伐もするので、手続きを。」
「畏まりました。」
ギルドカードを渡し処理を済ませたあと、パマディマの森に向かったのだった。
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