黒頭巾は異世界で…

雪城 いぶき

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54話

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「エヴァドネ、落ち着け!」

「ライアス!これが落ち着いていられないわ!…なんで、こんなっ。」

えー?何故そんなに怒ってるの!?

「あ、あの。私、何か怒るような事、言いましたか?」

「怒っていない。」

えー?怒っていないと言いながら顔は怒ってるんですけどー。

アディスの顔は眉間に皺を寄せ子供が怖がるほど低い声で応える。
そのあとライアスも込み上げる怒りを鎮め、冷静に問い掛ける。

「メイジーを怒った訳じゃない。そのスタンピードはいつの話だ?」

最初の頃はいろんなイベントがあったのに、サービス終了日に近付くにつれて少なくなっていった。記憶に新しいのは…一年半?いや、あれはダンジョンの最終レイドボスだった。スタンピードは三年前、か?

「多分三年前くらいだったと思う。」

「三年、前だと?」

ドスの利いた声でアディスが呟く。

「子供を前線に送るって!」

エヴァドネも怒りを露わに発する。

へぇっ!?ちょっと待って!え?子供って?
私!?…はっ!…今の私って十六才、三年前って言ったら十三才って事になるから…。

「大人達はなにをしていた。」

アディスは堪えきれず低い声を出していた。

あー、それで皆んな怒ってたの?あれはゲームのクエストだったから子供から大人まで参加出来る。それに当時の私は34才で大人。

「そのー。」

なんて応えたらいいか分からない。
あれはゲームでー、とか日本にいた時は
当時34才だったとか、言えない。

「参加は一回じゃないな?」

苦渋に満ちた口調でアディスに問われるが、なんて応えればよいか、少し考えたがゲーム時の状況を少しだけ加えて話し、どうにか話を逸らせないか考える。

「あー、…そうだね。何度かあるよ。…子供でも戦える者は前衛として出る事になってた。スタンピードになった時は、村、街を防衛しないといけないから、素材の事は考えず、魔物を討伐するだけに集中して、さっきの大鎌で乱切りに…。」

話に夢中になり過ぎて魔物が近付いている事に気付かず危機察知能力が発動する。
ハッと思考を切り替えたメイジーはホログラムマップを展開し確認しているとコボルトが六匹現れた。
アディス達が動く前に既にメイジーは大鎌を構え走りだし斬る体勢に入っていたのだ。
アディス達は武器を構えて驚きを露わに見入っていた。



コボルト六匹を大鎌で切り捨てた後、血を振り落とし、何故かポーズを決めてアディス達がいる方向に振り向き一言告げる。

「こんな、感じ?」


アディス達はコボルトの死骸を見て、悲観的に想像する。
子供の頃から戦わなければ生きていけない環境で育ったのだろうと。
だがメイジーは、ただゲームのクエストをこなしスキルなどの技を磨きレベルをあげていただけの事である。

今はまだ、フードを被ったままで表情がアディス達からは見えない。
メイジーは大鎌を収納し皆んなの顔色を見て控えめに伝えた。

「実際に行動で見せた方がいいかな、と思って…。」

アディスはメイジーの頭を優しく撫で、落ち着いた声で話し出す。

「子供までスタンピードに参加しないと行けなかったと言う事実に、行き場の無い気持ちが出てしまった。すまない。」

物凄く勘違いさせているな~。と心苦しい思いで、メイジーは顔を左右に振る。

「みんなが私の事を心配してくれている事がわかるよ。ありがとう。…今までスタンピードや大規模戦闘などに参加した事があるけど。その事で無理矢理出されたとか、無茶な事を押し付けられたとかもない。危なくなれば、退避もしてきた。……だからこそ今も生きてる…。これからは仲間と一緒だから不安もないし、いっぱい甘えさせてもらうよ。」

ゲーム時の事でしか語れない自分に気が咎めてしまう。
アディスからはフードを深く被っている為、口元でしかメイジーの表情が読み取れない。
だけどメイジーはアディスの目を見つめていた。



スタンピードの話から一段落し、皆んなの気持ちが落ち着いた頃、メイジーは話を切り出した。

「皆んなと一緒に依頼をして、色んな所を見て回りたい。……もしかしたら今後も規格外な、斜め上を行くような、言葉とか行動が出てくるかもしれない。」

マップを見たところ、周りには誰もいない。
フードを下ろし皆んなの顔を見て満面の笑顔で自分にも言い聞かせるように伝える。

「…だから、覚悟してよね!」

それに応えるようにエヴァドネが意気込む。

「その時はメイジーだからと受け入れるわ!」

「ああ。」
「そうだな。」

アディスとライアスはエヴァドネに続き同時に同意した。






気持ちを切り替えて、アディスは落ち着いた声で皆んなに告げる。

「依頼を再開する。」

「ああ。」

「行こう!」

ライアスもエヴァドネもアディスに明るく頷き歩き出す。


皆んなの後ろ姿を見つめながら、"つくづくいい仲間に出会えたな~"、と頰をほころばせながらメイジーも歩きだしたのだった。





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