黒頭巾は異世界で…

62話 新人冒険者

ウォルターはギルド内にいる冒険者に睨みをきかせ黙らせる。
メイジーを見てジト目で睨むウォルター。
メイジーは乾いた笑いで誤魔化す。

「ウォルターお兄さん。ご、ごめんね？だって、髭を剃っただけで、そんなに変わるなんて…」

ダンディなイケメンお兄さんになるなんて、思いもよらないじゃん！

ウォルターは頭をガシガシ掻きながら苦笑いをこぼす。

「メイジー嬢ちゃんが髭を剃ればマシだと言ったから剃ってみたんだ。」

顎に片手をあて撫でるウォルター。

「剃ったら剃ったで、皆んな同じ反応しやがってー…。」

そう言って、周りの皆んなを睨む。

「はぁ。まあいい。でメイジー嬢ちゃんは、これから帰るところか？」

「うん。これから宿に帰るところだよ。ウォルターお兄さん？名前の後、嬢ちゃんを付けるのやめてよ。メイジーって呼び捨てでお願い。」

「じゃあ、お前さんも呼び捨てにしろ？」

「えー？私のは、あだ名で読んでいるのにー。」

「お、でつっかえるだろぉが！」

「それは、…ご愛嬌、でしょ？」

「お前な～。」

ウォルターは呆れる。

「で、そこの男の子達が私を睨んでるのは、なんでかな？」

ウォルターとローレンの後ろに私と同じくらいの身長か、少し高いくらいの身長の男の子三人と女の子二人が、何故か私に対抗心のようなものを持って睨み付けていた。

ウォルター達とアディス達はメイジーを睨み付けていた事には気付いていたが危険ではないと黙殺していた。

「そこは、居て居ないものとして目を瞑れよ。はぁ。ただメイジーが羨ましいだけだ。」

「私が羨ましい？」

羨ましい…ねぇ。そりゃー、まぁ、チートだしな～。

メイジーが思考に耽っていると、女の子から苛立ちのこもった声で喋り出す。

「私達と変わらない新人冒険者でしょ！貴方みたいな女の子が何故Bランクパーティーと一緒に居るのよ！」

続いて、別の女の子が声を荒だてたのを歯切りに男の子までも荒立てる。

「そうよ！貴方みたいな子を腰巾着って言うの！」

「ウォルターさんをあんたみたいな新人が、からかえるような人じゃないんだ！」

「お前、どうやって取り入った？新人は新人らしく身の丈にあったパーティーへ入るべきだ。」

「おい！お前達！」
「そこまでだ！」

ウォルターとライアスは同時に怒鳴る。
アディスは威圧を込めて告げる。

「俺たちがメイジーを誘った。実力もある。お前達に言われる筋合いはない。」

話し終え威圧を止めたアディスはギルドを出る為、背を向け歩き出す。
ライアスとエヴァドネも続いて歩き出す。
メイジーは横目で男女若い新人冒険者達を見ると腰が抜けたのか、地面に座り込んでいた。

「はぁ。」

メイジーは呆れて溜息を吐く。

「若いもんが、すまねぇなー。」

「ううん、こっちこそ。あんな事で怒るなんて。私は気にしてないのに…。ウォルター達も新人教育、大変ね。」

「あいつらは、まだ考えがたりねーからこんな事になる。」

「まあ、経験を積めば浅はかな言葉も出ないでしょ？」

「メイジーFランクだよな？」

「新人Fランクでも経験はあるわ。…じゃ。ローレンさんもまたね。」

「ええ。また。」

メイジーはアディスを追い掛けてギルドを出て行く。
メイジーの去って行く背中を見ていたウォルターとローレン。

「メイジーちゃん、凄いわね。」

「アディスの威圧を浴びても何事もなかったような素振りだったな。…はぁ。」

アディスの軽い威圧はメインフロア全体に掛かっていた。
それを浴びた、ウォルター、ローレン、他の冒険者達はアディス達が出た後、大きく溜息を漏らすのだった。

「おい、お前ら！いつまで座ってやがる！」

「あの程度の威圧で座り込んでどうするの！」

ウォルターとローレンの叱咤が飛ぶのだった。