【完結】無関心アルファと偽りの番関係を結んだら、抱かれないうちに壊れ始めました

紬木莉音

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第6章

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「未紘くん酒飲めるんだね~、てっきり未成年かと思ってたわ」
「……っす、両親共に酒豪なんで」
「将来有望すぎるじゃーん!」

 会社の近くにある居酒屋は、サラリーマンで溢れ返っていた。場違いな気がしなくもないが、奢ってあげるからじゃんじゃん飲んで、なんて言われてしまえば断る理由もない。
 正面に座っているのは、ついさっき知り合ったばかりの男。目が合うと彼は、にこりと笑みを深めた。

「自己紹介が遅くなったけど、俺は芹の友人であり、同じ会社で働いてる花柳はなやぎです。よろしくね~」

 明るくて朗らかな印象の花柳は、藤城とは正反対の雰囲気を持っている。この人が彼の友人だなんて俄かには信じ難い。

「芹とは小学生のときからの付き合いなんだ。幼馴染ってヤツ! 今でこそあんな鼻につくような感じだけど、昔はもーっと可愛かったんだよ」
「……と言いますと……?」
「俺が給食のときにアイツのプリン勝手に食べたら泣いちゃったことあってさあ~! ウケるよね!」

 あははと笑いながらポテトを摘む彼からは、見かけによらず辛辣な素顔が見え隠れする。想像して未紘もつられて笑ってしまった。

「ねえそういえばさあ、最近芹となんかあった?」

 しばらく藤城の過去の話で盛り上がっていると、唐突に花柳がそんなことを口にし始めた。
 最近彼との間に起きたこと──ひとつだけ思い当たる節がある。だけどそんなことを初対面の彼に話すわけにはいかない。
 脳内に卑猥な回想が流れ込もうとするのをなんとか振り切った未紘は、平然とした顔で誤魔化して乗り切ることにした。

「特にないすけど」
「ホント? 抱かれたりしなかった?」
「っ、ごほっ……!」

 僅か数秒で言い当てられて、動揺した未紘は口にしていたビールを吹き出した。おしぼりで口元を抑えながら、恥ずかしさに顔がじわじわと赤く染まっていく。
 向かい側では、花柳が興奮したように両手を叩いて笑っていた。

「あっは、わかりやす~! そのリアクションは当たり?」
「っ、な、なんでそんなこと、聞くんすか」
「最近アイツ機嫌いいんだもん。この前すれ違ったときなんかすました顔して鼻歌うたってたんだよ!? あの藤城芹が!」
「鼻歌……?」

 確かにどう転んでも想像ができない。困惑しているそばで、花柳が言葉を続ける。

「そういえば美味しいケーキ屋さん知らない?とか聞かれたこともあったな、未紘くんの誕生日か何かだったの?」
「えっ……あれって貰い物じゃなかったんすか?」
「え、違うよ。有名な店教えてあげたら仕事抜け出して買いに行ってたけど」

 あれは確か未紘のヒートが終わった直後だ。ケーキを五個持って帰ってきた藤城は、結局未紘に四個も分けてくれたのだった。
 まさか未紘のために買ってきてくれたものだったなんて。でも、一体どうしてそんなことをしたのだろう。

「でもよかった。番作ったって聞いたときは心配したけど、ちゃんと仲良くやれてるみたいで」
「……仲良いのかはわかんないすけど」
「オメガ恐怖症のアイツがオメガを抱いたなんて俺からしたら奇跡みたいなもんだよ。今でもまだ半信半疑だもん」

 花柳は肘をついた手の上に顎を乗せて、優しげに目を細めた。その表情からは、未紘の知らない藤城と過ごしてきた時間が垣間見えるような気がした。
 彼なら知っているのだろうか。ビールを一気に飲み干した未紘は、意を決して口を開いた。

「あの、花柳さん」
「うん?」
「藤城があそこまでオメガ嫌いなのって、常軌を逸してると思うんすけど……何があったか知ってますか?」



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