【完結】無関心アルファと偽りの番関係を結んだら、抱かれないうちに壊れ始めました

紬木莉音

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終章

53*

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 長い口付けの後、再び仰向けに横たえられる。藤城に向かって両腕を伸ばすと、嬉しそうに目を細めながら腕の中に収まってくれた。

「めちゃくちゃ嬉しいけど、挿れらんないから一旦離して?」
「やだ」
「やけに素直でクソ可愛いんですけど」

 ぎゅうっとますます腕に力を入れると、宥めるように頭を撫でられた。

「俺のこと好き?」
「……すき」
「えー? なに?」
「す、好きだってば……!」

 本当は聞こえているくせに。勢いに任せて未紘が言うと、やっぱり楽しそうな笑い声が聞こえてきた。

「半ギレなのがおまえらしいよ」
「うるせえ。藤城ってほんと性格悪くて最悪」
「っふは、抱き着きながら言うことじゃないから」

 最悪なところも好きだなんて、未紘の思考はきっと筒抜けのはずだ。
 満足したのでやっと腕を緩めてやると、藤城が身体を起こした。上から見下ろされるのは、身体のコントロール権を奪われるみたいで落ち着かない。

「やっぱ顔見てする方が興奮する」
「……俺は結構恥ずかしい」

 感じている顔なんて出来れば見てほしくない。顔を背けると片手で顎を掴まれて、正面を向かされた。

「そうやって恥ずかしがってるおまえを見るのが、たまんないの」

 上体を折り畳んだ藤城に顔を近付けられる。愉悦を滲ませながら笑う表情に、唇を震わせながら眉をひそめた。
 
「まじで、趣味わる……、ッうあっ……!」

 言い返そうとした途端、すぐに屹立が捩じ込まれた。肉襞を掻き分けて、一気に奥まで熱が押し込まれる。
 肉がぶつかり合う音と、体液が混ざり合う水音が室内に響き渡っている。羞恥を感じるより先に、心臓を抉られるような快感がきた。

「う、あっ、きもち、藤城……っ」
「あー……本当に可愛い。俺のに突かれてそんな顔しちゃうんだ」
「んっ、ふう、んん……」

 未紘の顔を見て恍惚とした表情を浮かべた藤城に、息を奪われるほど強く唇を塞がれる。
 薄々感じていたけど、藤城はキスが好きみたいだ。
 深くなる口付けにぞくぞくと腰が疼き、中に入ってるモノを無意識に締め付けてしまう。
 唇を離すと、鼻先が触れる距離で藤城が薄く笑った。

「これからは毎日しよっか。もうフェロモンの誤作動が起きる心配もないよな」
「あっ、う、まいにちは、むり……っ」
「俺の言いつけ守らないと、また他のヤツに襲われるかもしれないだろ?」
「ばか、限度ってもんが、あんだろ」

 必死に答える未紘に比べて、ハイになっているらしい藤城は笑いながら腰を打ち付けてくる。激しく中を貫いてくるくせに、息一つ乱れていない。

「心配しなくても、嫌ってほど俺の匂いでいっぱいにしてあげるから。おまえは俺のものだって、誰が見ても一目でわかるようにね」
「そんなの、はずかし……ッうあ、あっ、ん……!」

 首筋に刺すような痛みを感じて視線を向ければ、自分のそこに吸い付く彼の姿が見えた。何度も場所を変えて甘い痛みを与えられる。
 彼の所有物だと身体中に刻み込まれているみたいで、得も言われぬ優越感に包まれる。
 
(なんか、藤城って、めちゃくちゃ俺のこと好きなんだな)

 嘘偽りのない、等身大の自分。何一つ飾らない自分のまま愛してもらえるなんて、奇跡のようだ。
 
「藤城、あ、ふじしろ……っ!」
「ん、なーに」
「すき、あっ、すきぃ……」

 胸に抱えた思いのうちの、少しでも気持ちが伝わるようにと、彼の瞳を必死に見上げる。
 すると、その眦が柔らかく溶けるのを見た。

「俺も、未紘が大好きだよ」

 どんな砂糖菓子よりも甘い声が耳に滑り込む。
 好きと言えば好きと返ってくることが、こんなに幸せだってことを知らなかった。
 込み上げる愛しさを堪え切れずに、戯れるように鼻先を擦りつけると、クスクスと笑いながら受け入れてくれた。

「……はー、頭おかしくなりそ……」

 藤城が浮ついたように呟く。額に軽く口付けを落とされた後、明確に抽送が速くなるのがわかった。

「出していい?」
「うん、一緒がいい」
「ん、一緒にイこうね」

 落ち着けるように唇を甘く吸われる。彼に抱き着いたまま、一層激しく身体を揺さぶられた。身体の奥から大きな波が押し寄せてくるのがわかる。

「……あっ、ああっ……──~~っ!」

 全身が痙攣するほどの快楽に包まれ、中に埋め込まれたものが脈打つのをはっきりと感じる。
 愛しい体温を感じながら、意識が真っ白に塗り潰されていった。



 

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