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番外編⑴芹呼びしたい未紘の話
6*
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気に入らない。
未紘が夜通しあんなに頭を悩ませていたというのに、ふざけたようなこの男の態度が。
(馬鹿にしやがって、今に見てろ)
もともと未紘は極度の負けず嫌いなのだ。してやられてばかりでは気が済まない。
つまらない演技を続ける藤城の肩を、勢いよく後ろに押し倒した。
「うわっ、びっくりした」
目を丸くする藤城を見て、少しだけ気をよくする。
そうだ、もっと驚けばいい。いつまでも大人しく揶揄われてばっかりはいてやらない。
少しだけ上体を倒して、仰向けになった彼に顔を近付ける。
その服がシワになるほどぎゅっと握ると、僅かに眉根を寄せながら、意を決して言葉を紡いだ。
「…………芹、の、ばか」
言った。声に出せた。
多少ガンを飛ばすような顔にはなってしまった気がするが、今この瞬間に彼の名前を呼べたという事実には変わりない。
達成感が胸を満たす。安心しきった未紘は、ふうと息を吐きながら脱力した。
「……っあ、えっ……?」
次の瞬間、自分の中で熱が膨らんでいくのを感じた。ただでさえ窮屈な腸壁が押し広げられて、その圧迫感に思わず目を細めてしまう。
「…………死ぬほど勃った」
藤城は珍しく余裕がなさそうな顔で笑いながら、熱を逃すように荒っぽく息を吐いている。
あまり見せることのない雄々しい表情に、どきっと鼓動が跳ねた。
「今のは完全におまえが悪いよ」
「まっ……ッや、あっ、ばか、いきなり……っ!」
形勢逆転。今度は未紘が押し倒されると、覆い被さってきた藤城によって胎の中をガツガツと蹂躙される。
「ねえ、もういっかい聞かせてよ」
「あ、っせり……っ」
「そのまま好きって言って」
「っは、せり、すき、だいすき……っ」
「…………あー、マジでだめになりそ……」
これ以上ないほど張り詰めたものが、自分の中で暴れ回っている。
思考が吹っ飛びそうなほどの快感に、無意識に上に逃げようとするが、腰を掴まれているせいで叶わない。
「う、あっ、せり、せりぃ……っ」
「──っ」
藤城はもう何も発することなく、無言で未紘の奥に切っ先を突き立ててくる。
いつもとは違う余裕のない姿を見て、とてつもない優越感に包まれて、数え切れないほど達してしまった。
*
「もう呼ぶのやめる」
「なんで?」
すっかり一夜が明けてしまった。ソファーの上で膝を抱えている未紘は、ズキズキと痛む腰に顔を歪めながら、淹れてもらったばかりのほかほかのココアを口に含んでいる。
「昨日のあんた本当に酷かった」
「ごめんね、未紘が致死量の可愛さ浴びせてくるから制御効かなかった」
「もう呼ばねえ」
「えー……俺のせい?」
隣で藤城はしゅんと肩を落としている。そんな顔をしたって今度こそ騙されないぞ、と強い意志を持って、その様子をむっとしたまま眺めた。
「でも嬉しかったのは本当だよ。あれから思い出したんだけど、昨日の夜から何回も呼ぼうとしてくれてたでしょ?」
「っ、それは……」
「俺を喜ばせようと頑張ってくれたんだよね。未紘は優しいね、ありがとう」
片手で軽く抱き寄せられて、こつんと頭をくっつけられた。たかだか名前を呼ぶぐらいであんなに必死になっていたことが見つかって恥ずかしい。
だけど気付いてくれたことは嬉しい。気持ちは相変わらずちぐはぐだ。
「……まあ、たまになら呼んであげてもいいけど」
未紘が言うと、隣で藤城が息を呑むのがわかった。
「じゃあ今とか」
「今は無理。たまにって言っただろ」
「たまにっていつ? 何分後?」
「そんなすぐには来ねえよ」
隣で大袈裟にため息を吐く藤城を尻目に、未紘は何食わぬ顔でごくりとココアを飲んだ。
そうだ、そんな簡単には呼べるはずもない。だって──。
(名前呼んだら、色々思い出しちまうだろ……!)
昨夜のあれこれが蘇り、僅かに咳払いを漏らす。藤城には口が裂けても言えないが、昨夜の余裕を失くした彼との行為はかなり良かった。
いつもはすましている男が自分の声ひとつであんなに乱心するのだと思うと、たまらないものがある。
あの後も声が枯れるほど散々名前を呼ばされた結果、名前を呼ぶとあのときの記憶が勝手に蘇ってくるようになってしまったのは最悪の誤算だが。
「これからもいっぱい呼んでいいからね」
そんな未紘の気持ちなどつゆ知らず、藤城はマグカップを片手に優雅に微笑みながら、未紘の肩をそっと抱き寄せる。
「はあ……」
頭の中がすっかりピンク色に染められてしまった未紘は、熱を帯びた吐息をこぼすのであった。
未紘が夜通しあんなに頭を悩ませていたというのに、ふざけたようなこの男の態度が。
(馬鹿にしやがって、今に見てろ)
もともと未紘は極度の負けず嫌いなのだ。してやられてばかりでは気が済まない。
つまらない演技を続ける藤城の肩を、勢いよく後ろに押し倒した。
「うわっ、びっくりした」
目を丸くする藤城を見て、少しだけ気をよくする。
そうだ、もっと驚けばいい。いつまでも大人しく揶揄われてばっかりはいてやらない。
少しだけ上体を倒して、仰向けになった彼に顔を近付ける。
その服がシワになるほどぎゅっと握ると、僅かに眉根を寄せながら、意を決して言葉を紡いだ。
「…………芹、の、ばか」
言った。声に出せた。
多少ガンを飛ばすような顔にはなってしまった気がするが、今この瞬間に彼の名前を呼べたという事実には変わりない。
達成感が胸を満たす。安心しきった未紘は、ふうと息を吐きながら脱力した。
「……っあ、えっ……?」
次の瞬間、自分の中で熱が膨らんでいくのを感じた。ただでさえ窮屈な腸壁が押し広げられて、その圧迫感に思わず目を細めてしまう。
「…………死ぬほど勃った」
藤城は珍しく余裕がなさそうな顔で笑いながら、熱を逃すように荒っぽく息を吐いている。
あまり見せることのない雄々しい表情に、どきっと鼓動が跳ねた。
「今のは完全におまえが悪いよ」
「まっ……ッや、あっ、ばか、いきなり……っ!」
形勢逆転。今度は未紘が押し倒されると、覆い被さってきた藤城によって胎の中をガツガツと蹂躙される。
「ねえ、もういっかい聞かせてよ」
「あ、っせり……っ」
「そのまま好きって言って」
「っは、せり、すき、だいすき……っ」
「…………あー、マジでだめになりそ……」
これ以上ないほど張り詰めたものが、自分の中で暴れ回っている。
思考が吹っ飛びそうなほどの快感に、無意識に上に逃げようとするが、腰を掴まれているせいで叶わない。
「う、あっ、せり、せりぃ……っ」
「──っ」
藤城はもう何も発することなく、無言で未紘の奥に切っ先を突き立ててくる。
いつもとは違う余裕のない姿を見て、とてつもない優越感に包まれて、数え切れないほど達してしまった。
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「もう呼ぶのやめる」
「なんで?」
すっかり一夜が明けてしまった。ソファーの上で膝を抱えている未紘は、ズキズキと痛む腰に顔を歪めながら、淹れてもらったばかりのほかほかのココアを口に含んでいる。
「昨日のあんた本当に酷かった」
「ごめんね、未紘が致死量の可愛さ浴びせてくるから制御効かなかった」
「もう呼ばねえ」
「えー……俺のせい?」
隣で藤城はしゅんと肩を落としている。そんな顔をしたって今度こそ騙されないぞ、と強い意志を持って、その様子をむっとしたまま眺めた。
「でも嬉しかったのは本当だよ。あれから思い出したんだけど、昨日の夜から何回も呼ぼうとしてくれてたでしょ?」
「っ、それは……」
「俺を喜ばせようと頑張ってくれたんだよね。未紘は優しいね、ありがとう」
片手で軽く抱き寄せられて、こつんと頭をくっつけられた。たかだか名前を呼ぶぐらいであんなに必死になっていたことが見つかって恥ずかしい。
だけど気付いてくれたことは嬉しい。気持ちは相変わらずちぐはぐだ。
「……まあ、たまになら呼んであげてもいいけど」
未紘が言うと、隣で藤城が息を呑むのがわかった。
「じゃあ今とか」
「今は無理。たまにって言っただろ」
「たまにっていつ? 何分後?」
「そんなすぐには来ねえよ」
隣で大袈裟にため息を吐く藤城を尻目に、未紘は何食わぬ顔でごくりとココアを飲んだ。
そうだ、そんな簡単には呼べるはずもない。だって──。
(名前呼んだら、色々思い出しちまうだろ……!)
昨夜のあれこれが蘇り、僅かに咳払いを漏らす。藤城には口が裂けても言えないが、昨夜の余裕を失くした彼との行為はかなり良かった。
いつもはすましている男が自分の声ひとつであんなに乱心するのだと思うと、たまらないものがある。
あの後も声が枯れるほど散々名前を呼ばされた結果、名前を呼ぶとあのときの記憶が勝手に蘇ってくるようになってしまったのは最悪の誤算だが。
「これからもいっぱい呼んでいいからね」
そんな未紘の気持ちなどつゆ知らず、藤城はマグカップを片手に優雅に微笑みながら、未紘の肩をそっと抱き寄せる。
「はあ……」
頭の中がすっかりピンク色に染められてしまった未紘は、熱を帯びた吐息をこぼすのであった。
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