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第3章 欲望と謀略の秋 編
第35話 絶好調と絶不調
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リアラとリリライトがお茶会を楽しんでいたのと同日。
その日はミュリヌス学園の休みの日。そこにたまたまリリライトのスケジュールがあったためお茶会の実現がかなったのだった。
アンナ=ヴァルガンダルも、休日を楽しみに、友人と一緒に街へ買い物に出かけていた。いつものかしこまった制服ではなく、ふわふわとした少女らしいワンピース姿のアンナ。服装の趣味は少女的だったが、そもそも彼女の外見も幼さが残っていたため、結果的にはよく似合った可愛らしさが引き立てられている。
休日で街も商店通りもにぎわっている。
普段から仲の良い5人ほどの集団で、人の波の中を談笑しながら歩いていた。
「アンナってば夏休みが終わってから、本当絶好調だよねー」
「うん。最近、なんかすっごく調子良いんだよね。夏休みはお父様と稽古ばっかりしてて疲れたけど、その成果が出ているんだね」
「アンナのお父様って、龍牙騎士団の騎士団長だもんね。なんか、凄そう」
「そういえば、急ぎの用事って結局何だったの? 夏休み前に、慌てて帰ったみたいだけど」
「急ぎの……? 用事……?」
わいわいと雑談をしながら歩みを進めていたアンナは、難しそうな表情になって足を止めた。
「どうしたの、アンナ?」
そんな彼女に合わせて、友人たちも足を止めてアンナに振りかえる。アンナは自分が勝った荷物を両手で持ちながら、うーんと首を傾げていた。
「急ぎの用事……なんだっけ? 確かに、夏休みよりも前に、何かあったような?」
思い出せない……とは何か違う感覚。
その部分だけがぽっかりと空いてしまっているような、不思議な感覚だった。そもそもないものだから、思い出すも何もない。
(用事? なんだっけ? そもそも、何で私って夏休み前に帰ったんだっけ? ん? 夏休み、私お父様との稽古以外に何を? うーん……うーん……)
不自然な記憶の空白。それに、何が現実と矛盾があるような。
外から見てても?マークが見える気がするほど悩むアンナ。
「も、もういいよアンナ。そんなとこでボーっとしてたら迷惑だよ」
「う、うん。あれー?」
何か腑に落ちなかったが、それ以上考え込んでも仕方ないことだ。違和感を置き去りに、アンナは友人達と歩き始める。
「そういえば、リアラさんは逆に不調だよねー」
話題は戻り、学園の話となる。そしてアンナがライバル認定しているリアラの話になると、アンナは若干顔を曇らせた。
彼女たちが言う通り、最近のリアラの不調ぶりはあまりにも目立つ。1学期の頃も一時期ミスが多かったりしていた時期があるが、その時よりも目に余る。
授業中もボーっとしていることが多いようで、鍛錬中も集中力不足から相手を怪我させていたりするなど、失敗が多い。
成績も、いまや次席から3席に落ちかねない勢いで落ち込んでいる。
アンナが心配して声を掛けるも、「大丈夫だから」と全然大丈夫そうじゃない顔で答えるだけのリアラ。アンナはそれが悲しかった。
「何か悩み事かな?」
「彼氏とのことじゃない? 夏休みに何かあったかな?」
ミュリヌス学園の生徒とはいえ、年頃の少女達である。恋には興味が尽きない年頃のため、ついつい邪推してしまうのも無理はない。
例え恋人のことで悩みがあったとしても、あのリアラがそんなことで学園生活にここまで影響を与えるのだろうか。
あいにくと恋人が出来たことがないアンナには分からなかった。
だからといって、異性関係で悩んで落ち込むリアラを――それが真実かどうかは分からないが――軽蔑することは無かった。
誰だって、自分にしか分からない悩みを持っているだろう。それは苦しく、辛いものだろう。
アンナが悲しかったのは、何も相談をしてくれなかったことだった。
「ボク達はライバルだけど、親友じゃないか」
リアラがアンナのことをどう思っているかは分からないが、少なくともアンナはそう思っている。お互いに高め合うライバルであると同時に、お互いに励まし合う親友なのだ。
辛い時にはその思いを共有して支え合っていきたい。自分が辛い時には助けて欲しいから、リアラが辛い時には助けてあげたい。
しかし、リアラから何も言われていない以上、アンナが出来ることは、ただただ心配することだけだった。
「御前試合、もうすぐなんだけどな」
おそらくは首席の自分と次席のリアラが戦うこととなるだろう。少し前までは楽しみな気持ちが強かったアンナだが、今は不安の感情の方が強かった。
その日はミュリヌス学園の休みの日。そこにたまたまリリライトのスケジュールがあったためお茶会の実現がかなったのだった。
アンナ=ヴァルガンダルも、休日を楽しみに、友人と一緒に街へ買い物に出かけていた。いつものかしこまった制服ではなく、ふわふわとした少女らしいワンピース姿のアンナ。服装の趣味は少女的だったが、そもそも彼女の外見も幼さが残っていたため、結果的にはよく似合った可愛らしさが引き立てられている。
休日で街も商店通りもにぎわっている。
普段から仲の良い5人ほどの集団で、人の波の中を談笑しながら歩いていた。
「アンナってば夏休みが終わってから、本当絶好調だよねー」
「うん。最近、なんかすっごく調子良いんだよね。夏休みはお父様と稽古ばっかりしてて疲れたけど、その成果が出ているんだね」
「アンナのお父様って、龍牙騎士団の騎士団長だもんね。なんか、凄そう」
「そういえば、急ぎの用事って結局何だったの? 夏休み前に、慌てて帰ったみたいだけど」
「急ぎの……? 用事……?」
わいわいと雑談をしながら歩みを進めていたアンナは、難しそうな表情になって足を止めた。
「どうしたの、アンナ?」
そんな彼女に合わせて、友人たちも足を止めてアンナに振りかえる。アンナは自分が勝った荷物を両手で持ちながら、うーんと首を傾げていた。
「急ぎの用事……なんだっけ? 確かに、夏休みよりも前に、何かあったような?」
思い出せない……とは何か違う感覚。
その部分だけがぽっかりと空いてしまっているような、不思議な感覚だった。そもそもないものだから、思い出すも何もない。
(用事? なんだっけ? そもそも、何で私って夏休み前に帰ったんだっけ? ん? 夏休み、私お父様との稽古以外に何を? うーん……うーん……)
不自然な記憶の空白。それに、何が現実と矛盾があるような。
外から見てても?マークが見える気がするほど悩むアンナ。
「も、もういいよアンナ。そんなとこでボーっとしてたら迷惑だよ」
「う、うん。あれー?」
何か腑に落ちなかったが、それ以上考え込んでも仕方ないことだ。違和感を置き去りに、アンナは友人達と歩き始める。
「そういえば、リアラさんは逆に不調だよねー」
話題は戻り、学園の話となる。そしてアンナがライバル認定しているリアラの話になると、アンナは若干顔を曇らせた。
彼女たちが言う通り、最近のリアラの不調ぶりはあまりにも目立つ。1学期の頃も一時期ミスが多かったりしていた時期があるが、その時よりも目に余る。
授業中もボーっとしていることが多いようで、鍛錬中も集中力不足から相手を怪我させていたりするなど、失敗が多い。
成績も、いまや次席から3席に落ちかねない勢いで落ち込んでいる。
アンナが心配して声を掛けるも、「大丈夫だから」と全然大丈夫そうじゃない顔で答えるだけのリアラ。アンナはそれが悲しかった。
「何か悩み事かな?」
「彼氏とのことじゃない? 夏休みに何かあったかな?」
ミュリヌス学園の生徒とはいえ、年頃の少女達である。恋には興味が尽きない年頃のため、ついつい邪推してしまうのも無理はない。
例え恋人のことで悩みがあったとしても、あのリアラがそんなことで学園生活にここまで影響を与えるのだろうか。
あいにくと恋人が出来たことがないアンナには分からなかった。
だからといって、異性関係で悩んで落ち込むリアラを――それが真実かどうかは分からないが――軽蔑することは無かった。
誰だって、自分にしか分からない悩みを持っているだろう。それは苦しく、辛いものだろう。
アンナが悲しかったのは、何も相談をしてくれなかったことだった。
「ボク達はライバルだけど、親友じゃないか」
リアラがアンナのことをどう思っているかは分からないが、少なくともアンナはそう思っている。お互いに高め合うライバルであると同時に、お互いに励まし合う親友なのだ。
辛い時にはその思いを共有して支え合っていきたい。自分が辛い時には助けて欲しいから、リアラが辛い時には助けてあげたい。
しかし、リアラから何も言われていない以上、アンナが出来ることは、ただただ心配することだけだった。
「御前試合、もうすぐなんだけどな」
おそらくは首席の自分と次席のリアラが戦うこととなるだろう。少し前までは楽しみな気持ちが強かったアンナだが、今は不安の感情の方が強かった。
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