※完結済 【R-18】白薔薇の騎士と純白の姫

白金犬

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第4章 激動の冬編

第118話 それは愛か、怒りか、欲望か

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 実質的なグスタフ側の指揮官役を担ったフェスティアは、見事カリオス達ミュリヌス攻略部隊を撃退した。

 何人かの有能な龍牙騎士をこちら側に引き込み、また厄介な相手である龍牙騎士団長ルエール=ヴァルガンダルを戦闘不能の重傷にまで追い込んだ。

 自らの軍勢である龍の爪も、カリオスの神器によって多大な損害を被ったものの、それを踏まえても、結果としては勝利ーー大戦果を挙げたといっても良い。

 戦闘を終えて龍の爪を引き上げさせたフェスティアは、今はグスタフ陣営の本拠地ともなっているリリライト邸の中にある貴賓室をあてがわれていた。

 自ら剣を持って戦闘の場に出ることもあるが、フェスティアの本業は政治家であり、指揮官だ。むしろ戦闘が終わった後の処理こそが、本当の仕事ともいえる。

 そんな大戦果を挙げたはずのフェスティアは、無表情の中に確かな怒りを滲ませながら、淡々と書類仕事を進めていた。

「まさか……あんな男が聖アルマイトにいたとは……」

 それは静かな口調であったが、フェスティアの恐ろしさをよく知る者であれば、それだけで震えあがってしまうような強烈な怒りが込められていた。

 聖アルマイト側に大きな損害を与えたとはいえ、こちらも予想以上の損害を出してしまった。

 しかしまあ、実のところその点はフェスティアはどうでも良いと考えていた。

 彼女は大局的な状況を俯瞰する立場で、この一戦の内容など大した問題ではないと考えていた。もともとグスタフの「異能」の強力さを知っていたフェスティアは、どうあってもこちらが負けるなど有り得ないと知っていたからだ。

 だからこそ戦闘で勝利を手にしたことよりも、密かに意図していたことが、最後の最後でコウメイに覆されたことが忌々しくて仕方ない。

 の聖アルマイトを巡る動乱の黒幕ーーそれが自分だと思わせることが出来ず、看破されてしまった。

 龍牙騎士コウメイ--確か、団長代理とか名乗っていたか。なるほど、さすがあのルエール=ヴァルガンダルの不在を任されるだけのことはある。ルエールとは違う意味で、そしてそれ以上に厄介な敵のようだ。

 平然を装っていても、コウメイに味合わされた屈辱はいつまで経ってもフェスティアの胸の中に残り続ける。勝利したはずなのに、実質的な目的が果たされなかったことが、ただひたすらに苛立たせる。

 終わってしまったことにこだわることに意味はなく、次善策を考えるべきだと、優秀なフェスティアは理解している。しかし怒りの感情を鎮めることが出来ず、その鬱屈した感情は事務処理を行うフェスティアの集中を妨げる。

 これまで陰謀と謀略にまみれた道を進んできた中でも、自分の思い通りにならないことは無かった。

 相手に華を持たせ、実は自らが取る--それを重ねることで、今の地位と権力を手にしたフェスティアは、初めてコウメイにその逆を取られた。

 だからこそ、悔しいし憎たらしい。

 それはフェスティアが、権力者の道を歩むべく進んできた道で、初めて味合わされる敗北感だった。

 思い返せば思い返す程、怒りは募り、持っていたペンをポキンと折ってしまう。

「代表っ!」

 1人部屋で冷静さを欠いていたフェスティアは、不意に部屋の外からのノックの音に我に返る。

 先ほどの戦いの間も、常に側に寄り添うようにいてくれた可愛い妹分ーーアストリアの声だった。

「いいわよ、入りなさい」

 自分をここまで不快にさせた敵は、逃げてしまった。

 この怒りの感情をどう鎮めてやろうかと、フェスティアは思案しながらアストリアを招き入れた。

    ▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼

「お父様には……っんん……状況を説明して、龍の爪の増援部隊を……っはあん!」

 貴賓室のソファーに、フェスティアとアストリアは座っていた。生真面目に報告を続けるアストリアに、フェスティアはその白いうなじにキスをするように吸い付きながら、優しく乳房を揉みしだいている。

「ありがとう、アストリア。これで、これからのカリオス王子派との戦争に備えられるわ。よく、あのリューク卿を説得してくれたわね」

 フェスティアは愛おし気にアストリアの身体を抱き寄せて、髪の匂いを嗅ぐようにしてアストリアへと顔を寄せる。

「代表のためですからっ……あぁん! それにお父様も代表のことは高く評価されていて、今後も国を挙げてクリアストロの支援を……はんっ、だめぇ……」

 アストリアが報告を続けるうちに、フェスティアの手はアストリアの服の中に入り込んでいく。たまらず甘い息を漏らしながら、身体をびくりと反応させる。

「それも、全て貴女が私のことを良いようにリューク卿に報告してくれているからだわ。本当に、アストリアには感謝しないと……貴女がいなければ、龍の爪は動かせなかったわ」

 連合国内ではトップの軍事力を持つガルガント国ーーそこの大臣の1人娘を味方につけたことは、フェスティアにとってはそのまま龍の爪の全権を掌握したことと等しかった。

「わ、私は代表のために……っん」

 顔を赤くして言うアストリアの唇に、フェスティアは人差し指を当てて塞ぐ。

「--その格好もとっても可愛くて、素敵よ」

 うっとりとした表情で言うフェスティアは、自分が命じた通りの格好のアストリアを見つめる。

 普段のアストリアは、フェスティアと同様にフォーマルなスーツを身にまとっていることが多い。。外見はやや幼さが残るものの、彼女も一国たる大臣の娘ーー高級な素材の服を、いつもそれなりに鮮やかに着こなしているのだが。

 今は使用人が着るような、いわゆるメイド服に身を包んでいる。

 しかもそれだけではなく、女児がごっこ遊びの際に用いるような、作り物の猫の耳の形をしたカチューシャも付けていた。

「だ、代表が言うから着てきましたけど……こ、子供っぽくて恥ずかしすぎます。こんなの誰かに見られたら、死んじゃう……」

 顔から火が出るかと思うくらいに真っ赤にするアストリアはフェスティアから顔を背ける。そのアストリアの顎を、フェスティアは持ち上げるようにして自分に向かせる。

「今は2人きりよ……言葉使いも、教えてあげたでしょう?」

「わ、私は……」

 じっとフェスティアに見つめられると、まるでその瞳に吸い込まれるようだった。身動きも抵抗も出来ないまま、2人の視線が絡み合う。

「私も、戦闘の興奮が収まらないの。今夜は、たっぷりアストリアを愛したいの……だから、ね? アストリアも素直になって?」

 そのフェスティアの言葉に、アストリアはゴクリと生唾を飲み込んで

「わ、私も……お姉ちゃんと、にゃんにゃんしたいにゃあっ……!」

□■□■

 とっぷりと夜も更けた頃。

 アストリアがフェスティアにあてがわれた貴賓室に入ってから2時間が経過していた。

「っにゃあ! にゃんっ! お姉ちゃん、気持ちいいにゃあ! にゃあっ!」

 既に何度もお互いを高め合っているフェスティアとアストリアだったが、未だに行為は延々と続いていた。ソファの上でお互いの秘部をこすりつけている2人ーーフェスティアは全裸だったが、アストリアはメイド服を着崩したような恰好で、乳房は露出している。猫耳カチューシャは言うまでもなく付けたままだ。

「っはぁ……はぁ……私も気持ちいいわ、アストリア。くすくす、可愛いにゃんこだこと。どこが気持ちいのかしら? っあん!」

 フェスティアはアストリアの片足に抱き着くようにしながら、持ち上げて激しく秘部をこすりつけながら聞く。

「にゃあ! おまんこ、にゃあ! おまんこが気持ち良くて、トロトロになっちゃうにゃあ! にゃ、にゃああっ! にゃっ、にゃーっ……クリも……当たってるにゃああっ!」

 行為の前はあれだけ恥ずかしがっていたフェスティアも、今は理性を蕩けさせた瞳をしながら、すっかり猫の口調になり切っていた。その表情は、憧れの姉のような存在の愛を受けて、至福に満ちている。

「あははっ! エッチな子猫ちゃんね……あんっ! 腰が、止まらないわ……ああ、気持ちいい! アストリアにゃんこ、可愛いくて興奮しちゃうわ!」

「んにゃあああっ! あ、アストリアもお姉ちゃんが大好きにゃあ! あっ、ダメダメ! イクにゃあっ! 気持ち良くてイクにゃあ! にゃああっ! イクぅぅぅぅ!」

 フェスティアが激しく腰をグラインドさせるように秘部を押し付けると、グチュグチュという愛液が混ざり合う音が響き、2人は同時に身を痙攣させて絶頂に達する。

「はぁ……はぁ……きょ、今日お姉ちゃん、激しいにゃあ……いつもより興奮してるにゃ?」

「うふふ……アストリアが可愛いから。こういうの、嫌いかしら?」

 フェスティアも息を切らせながら、見上げてくるアストリアを淫靡な表情で見つめる。そのフェスティアの問いに、アストリアは頬を赤らめて首を横に振る。

 そしてフェスティアの下から手を伸ばし、彼女の首に腕を巻き付けるようにして抱き着く。

「大好き、にゃあ。お姉ちゃんもエッチも、エッチなにゃんこのアストリアは大好きにゃあ」

「くすくす……私もよ、アストリア」

 フェスティアが嬉しいというと、自然とアストリアも嬉しくなる。2人は熱っぽい瞳で見つめ合いながら唇を重ね合わせて、舌を絡めていく。

「……あら」

 ふと、アストリアの指に指輪がされているのに気づくフェスティア。戦闘や仕事の邪魔になるといって装飾品の類を好まないアストリアにしては珍しい。アストリアの手を取って、まじまじと指輪を見つめる。

「あら……これは……」

 その指輪に埋め込まれた石はフェスティアの見覚えがあるものだった。

 それは、アストリアと関係を持ったあの夜にフェスティアが話した物ーーグスタフの「異能」を防ぐ程の力を持った「魔抵石」が埋め込まれた指輪だった。

「ふふ、こんな時まで付けているなんて」

「あう……そ、その……お姉ちゃんがプレゼントしてくれたものだから、嬉しくて……どんな時でもつけているの」

 本来ならそれは、グスタフの「異能」や戦闘において敵の攻撃魔法からアストリアの身を守るためにフェスティアから渡されたものであり、装飾が目的ではない。

 しかし、そんないじらしいアストリアの反応に、フェスティアはその指輪を付けた手の頬ずりする。

「ふふ……私も今つけているのよ。お揃いね」

 そういうフェスティアの耳には、言う通りにいつものイヤリングがつけられている。勿論、アストリアと同じ魔抵石が埋め込まれたものだ。

 お揃いのものをつけているというだけで、アストリアの胸は嬉しさで満たされる。

「っああ……私、こんなにも幸せでっ……お姉ちゃん!」

 感極まったようにフェスティアに抱き着くアストリア。しかしフェスティアは意地悪そうな顔をしながら

「アストリア、口調が戻っているわ。2人きりの時は、常にエッチなにゃんこでいなさいな」

 そのフェスティアの言葉に、アストリアはボッと顔を赤くするものの、もう恥ずかしがることは無かった。

「……にゃあ」

 嬉しそうにそう鳴くと、アストリアは何度も何度も甘えるようにフェスティアにキスを求める。フェスティアもそれにこたえるように、しばらくの間2人は唇を吸い合う。

「にゃあ、ん……そうだにゃあ。お姉ちゃんに聞きたいことがあったにゃあ」

 愛する姉ととろけるようなキスをしながら、陶然とした表情で聞いてくるアストリアにフェスティアは首をかしげる。

「何かしら?」

「フォルテア森林帯の戦いで、お姉ちゃんはカリオス王子を殺そうとしていたように見えたにゃ。カリオス王子は生きて帰国させるつもりだったんじゃないかにゃ?」

 まさか、こんな行為の時にもそんなことを聞いてくるなんて、アストリアらしいといえばアストリアらしい。

 最初は驚きに目を見張っていたフェスティアだが、すぐにくすくすと可笑しそうに笑う。

「ああ、そんなことを気にしていたの?」

「んにゃあ。だって、お姉ちゃんは天才で、私なんかじゃ思いも付かないことを簡単にしちゃうにゃ。私も、少しでもお姉ちゃんに近づきたい、お姉ちゃんみたいになりたいにゃあ」

 顔こそ淫蕩に蕩けて、言葉使いも悪ノリをしているが、その思いはいつもと変わらない姉への憧れだ。

「そうね……あの時は、確かにコウメイとかいう男に動揺させられて、冷静ではなかったわね」

 コウメイへの激烈な怒りはアストリアと行為に及んでいる間も、実は燻りつづけていた。性の快感を得ても、全く晴れない怒りの感情。だからこそ、無意識にいつもよりも激しい責めになってしまったのだろう。

「斥侯部隊に参加するはずが無いと思っていたカリオス王子の性格、そして”神器”の威力。コウメイとかいう知将の存在……正直、聖アルマイトを甘く見ていたことは認めざるを得ないわ。大いに反省しないといけないわね」

 アストリアは全く気付いていないが、その言葉を境にフェスティアの空気が変わった。

「結果、コウメイにこちらの意図を見透かされて、挙句の果てに取り逃がしてしまった……コウメイみたいな男は早々に殺しておかないと、後々厄介極まりないのに。それに出来ればカリオス王子も、グスタフ様のためにも、やはりあの場で殺しておくべきだったわ。これは私の失態よ」

「……お姉ちゃん?」

 急にぶつぶつと口数が多くなったフェスティアは、欝々とした怒りの感情を表すように爪を噛んでいた。そんな今までに見たことがない姉の様子に、急速にアストリアの頭が冷えて、思考が冷静に戻っていく。

 おかしい。

 戦闘前には、カリオスを帰国させて、リリライトに内乱を起こさせて、聖アルマイトを混乱させることが狙いだと話していたはずなのに。

 戦闘中はグスタフに迫られて、やむを得ずにカリオス達を殺すように見せかけていたと思っていたのだが、本気であの場で殺そうとしていたのか。

 フェスティアらしからぬ、支離滅裂な言葉と行動ではないか。

「ど、どうしたの? お姉ちゃん……ヘルベルト連合のために、聖アルマイトを混乱させるって言ってたじゃない。そのためにグスタフを操っているって……そう言ってたよね? おかしいよ?」

 急に不安に駆られるアストリアは、どこかしら恐怖を感じ、身体をブルブルと震わせる。

 おかしい。

 どうして2人きりなのに、必要ないのに、グスタフを様付けで呼ぶのだ?

「ヘルベルト連合のため?」

 ふっと、フェスティアが笑う。

 それはいつものような余裕のある優雅な笑みではない。

 相手を--愛おしい妹分であるはずのアストリアを嘲る笑みだ。

「何を言っているの? あの時から、私はいつだって--」

 おかしい。

 おかしい、おかしい。

 だって、大好きな姉は天才なのだ。

 血筋など関係ない。男女の差など関係ない。

 実力さえあれば、誰だって上に昇り詰めることが出来ると、そう自分に見せてくれた憧れの姉なのだ。

 どんな相手でも、あらゆる手段を行使して、先の先を見据えながら利用してきて、自分にそんな夢を見せてくれたフェスティア。誰かを利用することはあれど、フェスティアが利用されることなど想像すらできない。

 そんな憧れの姉が、まさか、よもや……有り得ない。

 それは妄信じゃない。だって、姉は具体的に示してくれたじゃないか。あの醜悪な男の邪悪な力を跳ねのける方法を。今自分が身に着けている、魔法技術の最先端である魔抵石というものがあると言っていたじゃないか。

 だから、そんなことはあり得ないのだ。

 しかし現実は、そんなアストリアの必死の懇願ともいえる考えを全面的に否定する。

「グスタフ様のオチンポのことしか考えていないわ」

 ギィィ…と、貴賓室のドアが開く。

 そこにはただでさえ醜悪な顔を、さらに歪んだ怒りの表情に染めた、醜く肥え太った豚のような悪魔が全裸で立っていた。

 アストリアにとって絶望と狂気の夜が始まろうとしていた。
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