※完結済 【R-18】白薔薇の騎士と純白の姫

白金犬

文字の大きさ
131 / 155
第4章 激動の冬編

第119話 裏切りと絶望と

しおりを挟む
 王都ユールディア。

 カリオス、ラミア、リリライトといった主たる王族らが不在の中、唯一残っているの王族は国王ヴィジオールのみだ。国王とはいっても、本人は政治も戦争も、ほぼ現場を退いており、そのほとんどを息子のカリオスに任せている状態だった。

 だから、ミュリヌスへ向かったカリオスからの早馬で、そこで起こったことを知らされた時ーーヴィジオールは精神的なショックから体調を崩して寝込んでしまった。

 カリオスに次ぐ立場のルエールでさえ不在のため、その中での実質的な最高権力者は龍牙騎士団副団長のクルーズ=ルメイラである。

 立場も才能も、あまりに身分不相応な役割に、クルーズもまた心労で倒れてしまいそうになっていたが、それでも国内に動揺が走らないように、諸侯や国民には表面上は何事も知られることのないよう、精魂を尽くしていた。

 今、王都ユールディアでは、他国の貴賓を1人招いている。

 大陸南部に広がる魔法大国ファヌスの第1王子イルギルスだった。

 コウメイが彼の国と交渉した結果、グスタフの「異能」にかかったアンナ=ヴァルガンダルの治療に当たるために派遣されてきた、大陸最高峰の治癒魔術師だ。

 そんな貴賓と対応する役目も、今では自然とクルーズの役目となる。騎士であるクルーズにしてみれば、他国王子との交渉事など本分ではないのだが、愚痴をこぼしていても仕方ない。

 イルギルスは民族衣装のようなローブに全身を纏い、顔の下半分もヴェールに覆われている。背はクルーズよりも長身だが、男性にしてはかなりの痩躯である。

 クルーズは、イルギルス王子を自らの執務室に招いていた。今日がアンナの治療経過に関して、正式な報告を上げる1つの期限としていたからだ。

「ん~、参った参ったー。本当に参ったよ、クルーズ閣下」

 その神秘的な装いとはそぐわないほど気軽な口調で、イルギルスは頭を掻いている。

 それだけでアンナの治療が芳しくないことは見て取れる。

 尊敬する団長の愛娘の治療経過である。クルーズも仕事とは別に、これまでにたびたびイルギルスからの話を聞いていたが、いつ聞いても良い内容は無かった。やはり、状況は大きく変わっていないようだ。

「あ、そうそう。ミュリヌス地方に向かったカリオス王子達だけど、どうやら失敗したみたいだねー。悪い言い方をすると残念でしたーって感じだけど、良い言い方をするとこれでカリオス王子達が戻ってくれば王都も落ち着くんじゃないかなー」

 部外者にも関わらず、どこで耳にしたのだろうか。

 その独特の言い回しはクルーズを若干苛立たせるものの、この王子に悪気はないのだろう。むしろ今の重責に苦しんでいるクルーズを気遣っての発言かもしれない。

 クルーズは咳ばらいをする。

「それで、団長のご令嬢の容態はいかがなものでしょうか? 今日は報告日のはずですが」

「うん、それなんだけどねー。喜んでよ。すこーしだけ、まともに会話出来るようになってきたよー」

 その思いがけない朗報に、クルーズは思わずガタリと椅子を動かして反応する。

 しかし、そうして気が逸るクルーズを制するように、イルギルスは指を自分の顔に前に立てる。

「でもね前と同じことを言うけど、なんで良くなったのかは分からないんだよねー。このまま良くなる保証もなければ、また悪化していく可能性だったある。予断は許されない状況だよー」

 そのイルギルスの言葉に、クルーズは肩を落とす。

 虚偽でごまかされるよりは何百倍もましだが、やはり悪い状況は変わっていないようだ。

「んー、こうやって悪い言い方ばかりしてたら、僕がわざわざ聖アルマイトまで来た意味って何?って言われそうだし、ちゃんと仕事ーー正式な報告を1つ上げようかな。でも、これは良い言い方も悪い言い方も出来ない。だって、良いことなのか悪いことなのか、僕にも分からないから」

 明るいことなのか、暗いことなのか、どちらにせよ不吉しか感じないことを言ってくるイルギルスにクルーズは顔を上げる。

 そんなクルーズに、イルギルスは「前にも言ったことだけど」と前置きをしてから続ける。

「はっきりとわかったよ。彼女が受けたのは、「魔法」でも「呪術」でもない。少なくともこの世界のものではない「異能」の力だよ」

    ▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼

「いやああああっ! いやっ、いやっ! いやああああっ!」

 リリライト邸内にアストリアの絶叫が響き渡る。

 その声は恐怖と絶望に染まり切った、狂気にも似た叫び声。しかし、今のリリライト邸に彼女を救おうとする人間など皆無であった。

「ふおおおおおっ! フェスティあぁぁぁぁっ……ワシは怒りに打ち震えておるぞぅ。本当に、このメスガキは壊してしまって良いんじゃなああ?」

 いつもに増して感情をむき出しにしたグスタフ。その肉棒は今にも爆発しそうなくらいに膨らんでおり、そこに存在するだけでフェスティアの心と身体を凌辱してくるようだった。

「ええ、既にガルガント大臣には龍の爪の増援は取り付けました。もうこの娘は必要ありません。グスタフ様のお好きなように……交尾しか考えられない廃人にしてもらっても結構ですよ」

「そ、そんなっ! お姉ちゃんっ……!」

 憧れの姉の裏切り--ソファに座るフェスティアの上に座らされたアストリアは、その両腕両足をしっかりとフェスティアに拘束されて、身動き一つとれないでいた。

 冷酷過ぎるそのフェスティアの笑みに、アストリアは心底震えあがる。

「さあ、アストリア。崇高なるグスタフ様ににゃんにゃんしてもらいなさい。まずは、誓いのキスからよ」

「っひ! い、いやぁっ! 絶対にいやぁっ! 気持ち悪いっ!」

 突然すぎる姉の裏切りと、醜悪で悪寒しか感じない目の前の肥満男。アストリアはすっかり混乱しながら泣き叫ぶ。フェスティアが言葉だけは、2人きりの時のように甘いのが、より一層恐ろしかった。

 必死に抵抗するアストリアの後頭部を後ろから力任せに押すフェスティア。その全力の抵抗なかなかアストリアの頭は動かないでいると、痺れを切らしたようにグスタフがアストリアの顔を両手でつかむ。

「ひぃっ!」

「ええい、クソガキのくせに無駄な抵抗なぞしおって。んぢゅううううううっ!」

 唾液をまき散らしながら、グスタフがアストリアの唇を奪う。

 グチュグチュと唾液をアストリアの口内に大量に送り込みながら、その肉厚な舌でアストリアの口内を蹂躙し、欲望のままに舌を貪る。

(んぐっ……こ、これはっ……!)

 むせ返るような濃密な雄臭と共にグスタフの体液を摂取するアストリア。

 それまでは近寄られただけで吐き気をこらえるのに精いっぱいな程だったのに、途端に心臓が激しく高鳴り始めて、フェスティアとの口づけ以上に、強烈な多幸感が湧き上がってくる。

(これがっ、この男の「異能」っ…!)

 それでもまだアストリアが正気を保てていたのは、事前にそのことを把握していたからか。それとも、彼女の指輪に込められた魔抵石がグスタフの「異能」を跳ねのけているのか。

「んぢゅるるるうっ! ぶほぉっ……ぶは、ぶはぁぁぁ……ガキはガキでも、雌じゃのぅ。甘味、甘味。チンポが滾るわい」

 自分とアストリアの唾液が混ざったものを唇の端からたらしながら、グスタフは醜悪に微笑む。

 グスタフの言葉通り、痛そうなくらいに屹立している肉棒を見るアストリアの顔は、既に蕩け始めていた。ちゅぽん、と下品な音を立てながら離れた唇からは、淫靡な唾液の糸が伸びている。

「さあ、久々の初物じゃあ……ぐふ、ぐふふ! あのクソガキに虚仮にされた怒りを、お前で晴らしてやるからのぅ。まともな人間でいられると思うなよぉぉ。フェスティア、股を開かせえい」

 そのグスタフの言葉に、フェスティアはアストリアの足に自らの足を絡めて開かせる。フェスティアとの行為、そしてグスタフの「異能」の影響を受けたそこは、もう唾液を垂らしているかのように愛液を滴らせていた。

「い、いやっ……やぁぁぁっ……!」

 恐ろしすぎるグスタフの言葉に、心底震えあがるアストリア。

「くす……くすくす。アストリア、ご苦労様。龍の爪の増援も取り付けた今となっては、残された貴女の役目はグスタフ様のオチンポ処理係くらいよ。せいぜい嫌われないように、精一杯媚びなさい」

「あ、あああ……どうして、どうして……」

 混乱の極みに達するアストリア。

 フェスティアはグスタフを操っているのではなかったのか。全てフェスティアの計算通り……グスタフを利用してリリライトを操り、カリオスに対して内乱を起こさせる。そういう計画ではなかったか。

 だって、魔抵石でグスタフの「異能」を防いだと、そういっていた。

 そこまで考えが及んで思い出す。今もアストリアは身に着けている。大事な姉からもらったプレゼント。身を守るための、大切なお守りを埋め込んだ指輪。

「え……えいっ……えいぃっ! どっか行け、悪魔!」

 アストリアは必死で、指をつけた手を前に伸ばしてグスタフに向ける。

 グスタフの「異能」に取り込まれる前の必死の抵抗。とにかくこの場からなんとか逃げ出そう。そして聖アルマイトに助けを求めるのだ。狂ってしまった姉を助けるには、それしかない。

「んんぅ?」

 そんな滑稽すぎるアストリアの所作に、初めはきょとんとしていたグスタフは、不思議そうにフェスティアに問う。

「なんじゃあ、これは?」

「--ああ……私と同じですよ。この娘、こんな石コロ程度で、グスタフ様の偉大なるオチンポに勝てると思っているんです」

「……え?」

 フェスティアの、アストリアを凍らせるような言葉。

 冷静に考えれば当たり前のことだが、フェスティアがこうなっているということは、彼女が身に着けていた魔抵石は効果が無かったということは誰にでも分かる。現に、相手の魔術を打ち消した魔抵石は砕けるというのに、フェスティアの指輪に埋め込まれた魔抵石は何の反応も示さない。

「……ぐふ、ぐふふふふ。馬鹿じゃのう……このワシの力は魔法なんかじゃないぞぅ? 勿論呪いなどでもない。雌を幸せの絶頂に昇りつめさせる、チート能力じゃあ」

「ち……ちぃ……と?」

 もう枯れてしまうのではないかと思う程、それでも大量の涙を流しながら、絶望に染まった声でその言葉を繰り返すアストリア。

 全く意味が出来ていないアストリアに耳打ちするように、そっとフェスティアが囁く。

「つまり、この世のものならざる力ーー魔抵石なんて、何の効果もないのよ」

 フェスティアがアストリアの腰を後ろから押し出して、つきつけられたグスタフの肉棒を迎え入れるようにする。

「さあ、人間をやめて、淫乱ドスケベにゃんこにしてもらいましょうね、アストリア」

 それは、リアラ、リリライト、ミリアムらと同じ、色情の狂気に染まったフェスティアの言葉。

 --もう誰も助けてくれる人はいない。

 アストリアは、それ以上底のない絶望に叩き落されて、もはや恐怖すら感じることも出来なかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

肉食御曹司の独占愛で極甘懐妊しそうです

沖田弥子
恋愛
過去のトラウマから恋愛と結婚を避けて生きている、二十六歳のさやか。そんなある日、飲み会の帰り際、イケメン上司で会社の御曹司でもある久我凌河に二人きりの二次会に誘われる。ホテルの最上階にある豪華なバーで呑むことになったさやか。お酒の勢いもあって、さやかが強く抱いている『とある願望』を彼に話したところ、なんと彼と一夜を過ごすことになり、しかも恋人になってしまった!? 彼は自分を女除けとして使っているだけだ、と考えるさやかだったが、少しずつ彼に恋心を覚えるようになっていき……。肉食でイケメンな彼にとろとろに蕩かされる、極甘濃密ラブ・ロマンス!

ヤンデレ社長は別れた妻を一途に愛しすぎている

藍川せりか
恋愛
コスメブランドでマーケティング兼アドバイザートレーナーとして働く茉莉花は三十歳のバツイチOL。離婚して一年、もう恋も結婚もしない! と仕事に没頭する彼女の前に、突然、別れた夫の裕典が新社長として現れた。戸惑う茉莉花をよそに、なぜか色気全開の容赦ないアプローチが始まって!? 分かり合えずに離婚した元旦那とまた恋に落ちるなんて不毛すぎる――そう思うのに、昔とは違う濃密な愛撫に心も体も甘く乱され、眠っていた女としての欲求が彼に向かって溢れ出し……。「もう遠慮しない。俺だけ見て、俺以外考えられないくらい愛させて」すれ違い元夫婦の、やり直し極上ラブ!

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

処理中です...