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最終章 エピローグ編
第133話 カリオス=ド=アルマイトⅡ<転機>
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カリオスの回想はまだ続く。
楽しいことなど何もなかった、辛くて苦しくて孤独だった少年時代――この時代のこと、今となってはそれらと全く逆で、素晴らしくかけがえのない時だっだと思えるものにしてくれたのは。
他の誰でもない、最愛の妹リリライトだった。
▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼
リリライトが人生初の大冒険を経て、真夜中に兄の部屋を訪れた日の翌日。
その日から、カリオスとリリライトの間には、微妙だが確実な変化があった。
『はぁっ……はぁっ……ぜえ、ぜえ……』
『少し休憩を入れましょうか』
相も変わらず神器の召喚が出来ないカリオスは、いつものようにルエールにしごかれていた。至って日常の風景である。
真夏の炎天下の中、汗を滝のように流して視界も霞むくらいに披露しているカリオスに対して、師であるルエールは、さすがに汗は掻いているものの、それ以外はぴくりとも表情の変化も、息切れすらも見せない。
このおっさん、化け物なのだろうか。
熱さと疲労で頭がグラついたカリオスは膝をつき、いつものように陰鬱とした毒を吐く。
どうしてこのクソ熱い中、わざわざ外で剣術訓練なんてするんだろうか。ただの嫌がらせなのだろうか。
そんな愚痴も声に出せないほどに焦燥しきったカリオスに、ルエールは側で見ていた騎士に命じて飲用水を持ってくるように命じる。
『――いらねぇ』
しかし、それを拒否するカリオスに、ルエールはようやく眉をひそめるという、僅かな表情の変化を見せる。
『熱中症になりますよ。何を意地を張っておられるのですか』
『うるせぇっ! いらねえったら、いらねえんだよ!』
カリオスとルエールがそんな言い合いをしていると、遠くからトテトテと、小さな体を揺らすようにして、一生懸命に走ってくるリリライトの姿が見えた。
『兄様、兄様、兄様っ! 今日もリリが汲んできました! 冷たくて美味しいお水です! 飲んで下さいっ! 兄様っ!』
何が嬉しいのか、ぱあっと太陽のような輝かしい満面の笑顔で、水が入った筒を両手で抱えるようにして駆けてくるリリライト。
『ぎゃふっ……!』
そして、何もないところで転ぶ。
『ふ、ふええぇぇぇ……ああああああ……うわあああああああんっ! 転びましたぁぁっ! 痛いです! 兄様、兄様! リリ、怪我しましたぁっ!』
――うるさいな。
むかつく。ああ、くそムカつく。
どうして何もないのに転ぶんだよ。自分で勝手に転んで泣くなよ。勝手に人に助けを求めるなよ。母さんに助けてもらえばいいだろう。母さんは一緒じゃないのかよ。
リリライトが駆けてきた方向を見ても、プリメータも、いつも彼女らの身の周りの世話をしている侍女も連れていないようだ。どうも1人でここまで来たらしい。
『お、王女殿下っ……!』
幼子の扱いに慣れていない騎士達は、おろおろと動揺するだけだったが、ようやくルエールが転んだリリライトの側へかけようとする。
その時ーー
その、ルエールに先んじて、ふらふらだったはずのカリオスが、泣きわめくリリライトの側へ歩み寄っていた。
『ああっ、兄様。お水が……兄様のために汲んできたのに、お水がっ…! ふえええぇっ……!』
転んだ拍子に抱えていた筒の中身を思い切りぶちまけてしまったことに気づいたリリライトは、またも泣き叫ぶための充電を開始する。
――また大声で泣きわめかれたら、頭に響く。
カリオスはひっくりかえった筒を手に持つと、わずかに残った筒の中の水を、喉を鳴らして一気に飲み干す。
厳しい訓練で、灼熱を思わせるくらいに熱気だっていた全身に、口から摂取した冷水が染み渡る。それまで感じていた疲労が、痛みが、あっという間に洗い流されていく感覚だった。
カリオスは天を仰ぐように顔を上げながら、筒を逆さまに傾ける。もうなくなってしまった筒の中の水の最後の一滴まで味わおうと、舌を伸ばして水を求めるのだった。
リリライトがカリオスのために持ってきた水を。
『にい、さま……』
『ふー』
口元を腕で拭いながら、カリオスはぶっきらぼうにリリライトに筒を差し出す。
『こんなんじゃ、足りねぇよ。お代わり』
『――はいっ!』
この日、妹のささやかな想いをカリオスが受け取ったのは初めてだった。
言うまでもなくそれが嬉しいリリライトは、これまでで最高の笑顔を見せる。カリオスから受け取った筒をまた大事そうに両手で抱えて、とてとてと駆け去っていく。
『お、王女殿下お待ちくださいっ! 私も一緒に…!』
カリオスとルエールの訓練を見守っていた騎士の1人が慌ててリリライトに付いていくのを見ながら、カリオスはルエールに向き直る。
『――よっし、ちょっと回復した。ルエール、もう1回だ。今日こそは、絶対に召喚してみせる』
あんなほんの僅かな水で満たされるはずがないのに、今日は珍しくカリオスから訓練の続きを申し出てくる。
『そうですか……リリライト様がいつも水を持ってくるから……』
意地っ張りで素直になれない少年カリオスに、なんと、あのルエールが表情を緩める。
『容赦はしませんよ。今日は徹底的にやらせていただきます』
『いつも通りじゃねえか。でも今日は俺だって……!』
そうして木剣を構える2人――珍しく表情が緩んでいたのはルエールだけではなく、カリオスもだった。
□■□■
カリオスに変化があれば、リリライトにもまた変化があった。
『兄様、兄様、兄様っ! 今日もリリが汲んできました! 冷たくて美味しいお水です! 飲んで下さいっ! 兄様っ!』
毎日毎日、全く同じ言葉と共に、全く同じタイミングと速度で、全く同じ様子でやってくるリリライト。
カリオスは、もはや呆れを通して感心すらしていた。
『ぶぎゃっ……!』
そして、何もないところで転ぶまでが、一連の流れである。
『ふぎっ……ひうっ……』
――やれやれ、またあの大声で泣き叫ぶのか。勘弁してほしいな。
ルエールとやり合ってクタクタなのに、余計なことをさせるなよ。
カリオスの胸中には確かに苛立ちがあったが、いつしかどこか使命感――いや、嬉しさのようなものが込みあがっていた。
しかし、その日のリリライトは。
『あう……ひぎ……ころび、ましたっ……い、いた……くありません! こんなの痛くありませんっ……リリは、お兄様にお水を届けるんですっ!』
眼から涙を流しながら、痛みを耐えて必死に泣くのを堪えるリリライト。
今日は何とか死守した水筒を、今度こそ兄に届けようと、一生懸命にカリオスの側まで歩んでくると。
『はい、兄様っ! リリのお水! 飲んで下さいっ!』
ようやく、やっと失敗しないで、大好きな兄に水を渡せたーー
自分が一生懸命に汲んできた水を、あんなに美味しそうに飲んでくれた兄に喜んでほしくて、こんなに頑張った。
何せ、転んでも泣かなかった! これは凄いことだ。
それは例えるならば、長い長い苦難の旅を乗り越えながら成長し、人々を苦しめる魔族の王を打ち滅ぼして、世界に平和を取り戻した勇者の喜びにも勝るのだろう。
そんな世界で一番の嬉しさと愛を込めて、太陽のような満面の笑顔でカリオスを見上げるリリライト。
(――どうして)
それは、大嫌いな妹に、カリオスが常々感じていた疑問だった。
どうしてこの妹は、兄からの理不尽で陰鬱な憎悪を受けながらも、純粋な愛を向け続けることが出来るのだろうか。どうして、その真っ直ぐな想いを強く出来るのだろうか。
何度も何度も怒りと憎しみをぶつけられて傷つけられても、リリライトの愛は衰えるどころか、ますます強くなる。そして遂には、兄の理不尽な憎しみをも溶かしつつあるのだ、
このリリライトの想いは愚かさではない。もはや強さだと、カリオスは認めざるを得なかった。
□■□■
それから2人は少し成長した。
年齢にしてカリオスは19歳、リリライトが8歳頃の時である。
少年カリオスは立派な青年へと成長し、徐々に王の後継者たるに相応しい風格を身に着け始めていた。一方リリライトも幼女と言われる時期を過ぎて、後に「純白の姫」と謳われるに相応しい、純粋で可憐な少女へ育っていた。
そして兄妹の仲は、少し前から大きく変わることは無かった。
ほんの僅かだけ妹の愛を受け入れることが出来たカリオスは、相変わらずリリライトのことが大嫌いだった。いい加減、母親の愛情を欲する年齢ではないが、未だに母親にべったりとするリリライトを見ているのは、気分が良いものではない。自分がそれを最も求めていた時期に独り占めしていたにも関わらず、まだ足らないか…と、思ってしまうのだった。根本の所では、リリライトへの嫌悪は変わっていなかった。
そしてリリライトも相変わらず、兄へ惜しみない愛情を向け続けていた。カリオスが少し大人になり、少年時代のようにあからさまにリリライトを嫌悪することが無くなったせいか、余計にカリオスに引っ付いてくるようになったのだ。
『それじゃあ、カリオス。リリをお願いね』
とある日、母プリターラは父ヴィジオールに伴いヘルベルト連合への政治会談のため、しばしの間王都を不在にする時期があった。穏やかな話し合いになるとは限らないため、子供たちは王都で留守を預かることになった。
『ああ。母さんも気を付けて』
『母様、行ってらっしゃい!』
少し前までは母親と数日離れるだけでも洪水のように涙を流していたリリライトも、今では笑顔で母を送れるようになっていた。もしかすると、兄と一緒の時間が増えるという期待もあるのかもしれない。
そうして母親達が王都を出立すると、早速――
『兄様、兄様。リリはお花摘みがしたいです。兄様にたーくさんのお花をプレゼントしたいです』
カリオスは、妹の前で大きくため息を吐いた。
成人間近になったカリオスは、昔のようにただひたすら武芸の訓練に励んでいれば良い立場ではなくなった。実際の政務にも関わるようになっており、ただでさプライベートの時間などほぼ皆無なのだ。
にも関わらず、同じ王族ーー第2王女という立場たるこの妹は、相変わらず周囲からちやほやされながら、能天気に笑っているだけ。
『リリライト。俺も暇じゃないんだよ』
『えー……でも、リリはお兄様と遊びたいです』
口を尖らせて不満を口にするリリライト。仲が最悪だった時期であれば、問答無用にリリライトを突き放して、泣かせて、母親に叱られるまでがお決まりのパターンだったが、さすがにカリオスもそれを繰り返す中で学習していた。
『――お。シンパじゃないか。そうか、陛下と母さんにはルエールが付いていったから、シンパは居残りか』
王宮内の廊下をリリライトと並んで歩いていたカリオスは、前から近づいてくる白薔薇騎士を見つけると、助けを求めんばかりに声を掛けた。
この時期の白薔薇騎士団は、王妃プリメータ=リ=アルマイトの近衛を担っていた。そして、シンパ=レイオールは世代交代により、最近になって新しく白薔薇騎士団長に任命されたばかりの女性騎士だった。
王妃プリメータの護衛騎士でもある彼女は、自然とプリメータにべったりであるリリライトのお目付け役を担う機会も多い。
『悪い。リリライトの相手を頼む』
申し訳無さそうに手を合わせるカリオスに、シンパはふうとため息を吐く。
代々白薔薇騎士団長を輩出する名家出身という、家柄からして王族に対して絶対なる忠実を誓う彼女は決して顔には出さないが、彼女もカリオス同様にリリライトにあまりポジティブな想いは寄せていないようだった。
『かしこまりました。ではリリライト王女殿下、私と一緒に参りましょう。たまには私と一緒に剣の稽古でも致しましょう。兄君さまも、今のリリライト様の年齢の頃には――』
『えー、やだやだ! 嫌です。兄様がいいです! 兄様となら剣のお稽古も頑張ります!』
いくら子供と言えど、幼すぎる主張にカリオスもシンパも閉口する。
『あのなぁ、リリライト。陛下がご不在の間、俺がやらないといけないこともたくさなるんだよ。分かるだろ。頼むから言うことを聞いてくれ』
実はこの時期ーー多忙という事情以上に、カリオスがストレスを抱えていたことがあった。
それは、この年齢になってからも相変わらず神器が扱えるようにならないということ。
それは少年時代に感じていた劣等感から、強大なプレッシャーとしてカリオスにのしかかっていた。それが余計にカリオスを苛立たせて、リリライトへの嫌悪を募らせる。
『なんでも言うことを聞いてやるから、今日は勘弁してくれ。花摘みどころじゃないんだよ、俺は』
それでもグッとこらえて妹をなだめていると、我ながら丸くなったものだ……と実感する。以前ならすぐに手が出ていものだが。
(こんな所ばっか要領よくなってどうすんだよ、俺は)
そんな風に思う自分への自己嫌悪が募る。
神器が扱えない理由は未だに不明だ。やはりカリオスが代々の王家の血筋の者に比べて、特別に劣っているようなところはない。それなのに、どうして神器が使えないのか。
少年時代から、執拗に何度もルエールに指摘されるのは……「強さ」が足りない。神器を扱うに相応しい「強さ」を身に着けていないから、神器が応えないのだという。
(へらへらしながら妹をなだめることが、強さかよ……!)
しかし、そんなカリオスの鬱屈した胸中になどまるで気づいた様子もなく、リリライトは「何でも聞く」というカリオスの言葉に顔を輝かせる。
『あっ、そうしたらぁ……兄様も、今度からリリのこと、リリって呼んで下さい! そしたら、今日はリリ我慢しますね。さあ、早く呼んで下さい! リリ、大好きだよっていってくれたら、リリは満足します』
『~~~~っ!』
無邪気な笑顔のまま、何のてらいもなくそう言えるリリライトが、本当にすごいと思う。カリオスは言葉にならない言葉を口にしながら、頭を掻きむしる。
『――分かった。それじゃあリリライトに”お使い”を頼む』
『ぶう』
それでも愛称で呼ぼうとしない兄に頬を膨らますリリライトだったが、あえてもうカリオスは取り合わない。
『へブリッジ薔薇園から白薔薇を採ってきてくれ。俺の部屋が今殺風景だから、何か華やかなものが欲しいと思っていたところなんだ。あそこの薔薇が、俺は好きでなぁ』
『わあっ、リリも白薔薇は大好きですっ! 母様も大好きですよね』
カリオスのその言葉に、シンパが微妙にハッと反応したことにリリライトは全く気付かない。愛する兄からの初めて”お使い”を頼まれたことに、顔をキラキラと輝かせていた。
『へブリッジ薔薇園ですね、分かりました! リリは、今日は兄様のための白薔薇を採りに行ってきます。では、早速準備をしてきますねっ!』
嬉しそうにわめきながら、リリライトはぱたぱたと足早に駆け足で去っていった。さすがに、もう何もないところで転ばないようにはなっており、リリライトはあっという間に見えなくなるところまで去っていったのだった。
『――ふう、これで仕事に集中できるな。悪い、シンパ。リリライトのこと、宜しくな』
悪戯をした子供の様に笑うカリオスに、シンパは珍しく不満そうに息を吐きながら答えた。
『人が悪いですよ、カリオス殿下』
聖アルマイトにおいて白薔薇は、白薔薇騎士団がそうであるように、王族の女系の象徴とされている。そのため王宮外では、平民だろうが貴族だろうが、無許可での白薔薇の栽培は禁じられているのだ。
だから、王都の外れにある、一職人が切り盛りしている薔薇園などに白薔薇があるはずなどない。
へブリッジ薔薇園まで行けば、誰に何と言われようとも自分が満足するまで白薔薇を探し続けるだろう。そして疲れ果てて帰ってきた頃には夜になっている。
とりあえず、今日のところはこれで厄介払いできそうだ。
そんな安易に考えていたカリオスの目論見が、この兄妹にとって大きな転機をもたらすこととなった。
楽しいことなど何もなかった、辛くて苦しくて孤独だった少年時代――この時代のこと、今となってはそれらと全く逆で、素晴らしくかけがえのない時だっだと思えるものにしてくれたのは。
他の誰でもない、最愛の妹リリライトだった。
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リリライトが人生初の大冒険を経て、真夜中に兄の部屋を訪れた日の翌日。
その日から、カリオスとリリライトの間には、微妙だが確実な変化があった。
『はぁっ……はぁっ……ぜえ、ぜえ……』
『少し休憩を入れましょうか』
相も変わらず神器の召喚が出来ないカリオスは、いつものようにルエールにしごかれていた。至って日常の風景である。
真夏の炎天下の中、汗を滝のように流して視界も霞むくらいに披露しているカリオスに対して、師であるルエールは、さすがに汗は掻いているものの、それ以外はぴくりとも表情の変化も、息切れすらも見せない。
このおっさん、化け物なのだろうか。
熱さと疲労で頭がグラついたカリオスは膝をつき、いつものように陰鬱とした毒を吐く。
どうしてこのクソ熱い中、わざわざ外で剣術訓練なんてするんだろうか。ただの嫌がらせなのだろうか。
そんな愚痴も声に出せないほどに焦燥しきったカリオスに、ルエールは側で見ていた騎士に命じて飲用水を持ってくるように命じる。
『――いらねぇ』
しかし、それを拒否するカリオスに、ルエールはようやく眉をひそめるという、僅かな表情の変化を見せる。
『熱中症になりますよ。何を意地を張っておられるのですか』
『うるせぇっ! いらねえったら、いらねえんだよ!』
カリオスとルエールがそんな言い合いをしていると、遠くからトテトテと、小さな体を揺らすようにして、一生懸命に走ってくるリリライトの姿が見えた。
『兄様、兄様、兄様っ! 今日もリリが汲んできました! 冷たくて美味しいお水です! 飲んで下さいっ! 兄様っ!』
何が嬉しいのか、ぱあっと太陽のような輝かしい満面の笑顔で、水が入った筒を両手で抱えるようにして駆けてくるリリライト。
『ぎゃふっ……!』
そして、何もないところで転ぶ。
『ふ、ふええぇぇぇ……ああああああ……うわあああああああんっ! 転びましたぁぁっ! 痛いです! 兄様、兄様! リリ、怪我しましたぁっ!』
――うるさいな。
むかつく。ああ、くそムカつく。
どうして何もないのに転ぶんだよ。自分で勝手に転んで泣くなよ。勝手に人に助けを求めるなよ。母さんに助けてもらえばいいだろう。母さんは一緒じゃないのかよ。
リリライトが駆けてきた方向を見ても、プリメータも、いつも彼女らの身の周りの世話をしている侍女も連れていないようだ。どうも1人でここまで来たらしい。
『お、王女殿下っ……!』
幼子の扱いに慣れていない騎士達は、おろおろと動揺するだけだったが、ようやくルエールが転んだリリライトの側へかけようとする。
その時ーー
その、ルエールに先んじて、ふらふらだったはずのカリオスが、泣きわめくリリライトの側へ歩み寄っていた。
『ああっ、兄様。お水が……兄様のために汲んできたのに、お水がっ…! ふえええぇっ……!』
転んだ拍子に抱えていた筒の中身を思い切りぶちまけてしまったことに気づいたリリライトは、またも泣き叫ぶための充電を開始する。
――また大声で泣きわめかれたら、頭に響く。
カリオスはひっくりかえった筒を手に持つと、わずかに残った筒の中の水を、喉を鳴らして一気に飲み干す。
厳しい訓練で、灼熱を思わせるくらいに熱気だっていた全身に、口から摂取した冷水が染み渡る。それまで感じていた疲労が、痛みが、あっという間に洗い流されていく感覚だった。
カリオスは天を仰ぐように顔を上げながら、筒を逆さまに傾ける。もうなくなってしまった筒の中の水の最後の一滴まで味わおうと、舌を伸ばして水を求めるのだった。
リリライトがカリオスのために持ってきた水を。
『にい、さま……』
『ふー』
口元を腕で拭いながら、カリオスはぶっきらぼうにリリライトに筒を差し出す。
『こんなんじゃ、足りねぇよ。お代わり』
『――はいっ!』
この日、妹のささやかな想いをカリオスが受け取ったのは初めてだった。
言うまでもなくそれが嬉しいリリライトは、これまでで最高の笑顔を見せる。カリオスから受け取った筒をまた大事そうに両手で抱えて、とてとてと駆け去っていく。
『お、王女殿下お待ちくださいっ! 私も一緒に…!』
カリオスとルエールの訓練を見守っていた騎士の1人が慌ててリリライトに付いていくのを見ながら、カリオスはルエールに向き直る。
『――よっし、ちょっと回復した。ルエール、もう1回だ。今日こそは、絶対に召喚してみせる』
あんなほんの僅かな水で満たされるはずがないのに、今日は珍しくカリオスから訓練の続きを申し出てくる。
『そうですか……リリライト様がいつも水を持ってくるから……』
意地っ張りで素直になれない少年カリオスに、なんと、あのルエールが表情を緩める。
『容赦はしませんよ。今日は徹底的にやらせていただきます』
『いつも通りじゃねえか。でも今日は俺だって……!』
そうして木剣を構える2人――珍しく表情が緩んでいたのはルエールだけではなく、カリオスもだった。
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カリオスに変化があれば、リリライトにもまた変化があった。
『兄様、兄様、兄様っ! 今日もリリが汲んできました! 冷たくて美味しいお水です! 飲んで下さいっ! 兄様っ!』
毎日毎日、全く同じ言葉と共に、全く同じタイミングと速度で、全く同じ様子でやってくるリリライト。
カリオスは、もはや呆れを通して感心すらしていた。
『ぶぎゃっ……!』
そして、何もないところで転ぶまでが、一連の流れである。
『ふぎっ……ひうっ……』
――やれやれ、またあの大声で泣き叫ぶのか。勘弁してほしいな。
ルエールとやり合ってクタクタなのに、余計なことをさせるなよ。
カリオスの胸中には確かに苛立ちがあったが、いつしかどこか使命感――いや、嬉しさのようなものが込みあがっていた。
しかし、その日のリリライトは。
『あう……ひぎ……ころび、ましたっ……い、いた……くありません! こんなの痛くありませんっ……リリは、お兄様にお水を届けるんですっ!』
眼から涙を流しながら、痛みを耐えて必死に泣くのを堪えるリリライト。
今日は何とか死守した水筒を、今度こそ兄に届けようと、一生懸命にカリオスの側まで歩んでくると。
『はい、兄様っ! リリのお水! 飲んで下さいっ!』
ようやく、やっと失敗しないで、大好きな兄に水を渡せたーー
自分が一生懸命に汲んできた水を、あんなに美味しそうに飲んでくれた兄に喜んでほしくて、こんなに頑張った。
何せ、転んでも泣かなかった! これは凄いことだ。
それは例えるならば、長い長い苦難の旅を乗り越えながら成長し、人々を苦しめる魔族の王を打ち滅ぼして、世界に平和を取り戻した勇者の喜びにも勝るのだろう。
そんな世界で一番の嬉しさと愛を込めて、太陽のような満面の笑顔でカリオスを見上げるリリライト。
(――どうして)
それは、大嫌いな妹に、カリオスが常々感じていた疑問だった。
どうしてこの妹は、兄からの理不尽で陰鬱な憎悪を受けながらも、純粋な愛を向け続けることが出来るのだろうか。どうして、その真っ直ぐな想いを強く出来るのだろうか。
何度も何度も怒りと憎しみをぶつけられて傷つけられても、リリライトの愛は衰えるどころか、ますます強くなる。そして遂には、兄の理不尽な憎しみをも溶かしつつあるのだ、
このリリライトの想いは愚かさではない。もはや強さだと、カリオスは認めざるを得なかった。
□■□■
それから2人は少し成長した。
年齢にしてカリオスは19歳、リリライトが8歳頃の時である。
少年カリオスは立派な青年へと成長し、徐々に王の後継者たるに相応しい風格を身に着け始めていた。一方リリライトも幼女と言われる時期を過ぎて、後に「純白の姫」と謳われるに相応しい、純粋で可憐な少女へ育っていた。
そして兄妹の仲は、少し前から大きく変わることは無かった。
ほんの僅かだけ妹の愛を受け入れることが出来たカリオスは、相変わらずリリライトのことが大嫌いだった。いい加減、母親の愛情を欲する年齢ではないが、未だに母親にべったりとするリリライトを見ているのは、気分が良いものではない。自分がそれを最も求めていた時期に独り占めしていたにも関わらず、まだ足らないか…と、思ってしまうのだった。根本の所では、リリライトへの嫌悪は変わっていなかった。
そしてリリライトも相変わらず、兄へ惜しみない愛情を向け続けていた。カリオスが少し大人になり、少年時代のようにあからさまにリリライトを嫌悪することが無くなったせいか、余計にカリオスに引っ付いてくるようになったのだ。
『それじゃあ、カリオス。リリをお願いね』
とある日、母プリターラは父ヴィジオールに伴いヘルベルト連合への政治会談のため、しばしの間王都を不在にする時期があった。穏やかな話し合いになるとは限らないため、子供たちは王都で留守を預かることになった。
『ああ。母さんも気を付けて』
『母様、行ってらっしゃい!』
少し前までは母親と数日離れるだけでも洪水のように涙を流していたリリライトも、今では笑顔で母を送れるようになっていた。もしかすると、兄と一緒の時間が増えるという期待もあるのかもしれない。
そうして母親達が王都を出立すると、早速――
『兄様、兄様。リリはお花摘みがしたいです。兄様にたーくさんのお花をプレゼントしたいです』
カリオスは、妹の前で大きくため息を吐いた。
成人間近になったカリオスは、昔のようにただひたすら武芸の訓練に励んでいれば良い立場ではなくなった。実際の政務にも関わるようになっており、ただでさプライベートの時間などほぼ皆無なのだ。
にも関わらず、同じ王族ーー第2王女という立場たるこの妹は、相変わらず周囲からちやほやされながら、能天気に笑っているだけ。
『リリライト。俺も暇じゃないんだよ』
『えー……でも、リリはお兄様と遊びたいです』
口を尖らせて不満を口にするリリライト。仲が最悪だった時期であれば、問答無用にリリライトを突き放して、泣かせて、母親に叱られるまでがお決まりのパターンだったが、さすがにカリオスもそれを繰り返す中で学習していた。
『――お。シンパじゃないか。そうか、陛下と母さんにはルエールが付いていったから、シンパは居残りか』
王宮内の廊下をリリライトと並んで歩いていたカリオスは、前から近づいてくる白薔薇騎士を見つけると、助けを求めんばかりに声を掛けた。
この時期の白薔薇騎士団は、王妃プリメータ=リ=アルマイトの近衛を担っていた。そして、シンパ=レイオールは世代交代により、最近になって新しく白薔薇騎士団長に任命されたばかりの女性騎士だった。
王妃プリメータの護衛騎士でもある彼女は、自然とプリメータにべったりであるリリライトのお目付け役を担う機会も多い。
『悪い。リリライトの相手を頼む』
申し訳無さそうに手を合わせるカリオスに、シンパはふうとため息を吐く。
代々白薔薇騎士団長を輩出する名家出身という、家柄からして王族に対して絶対なる忠実を誓う彼女は決して顔には出さないが、彼女もカリオス同様にリリライトにあまりポジティブな想いは寄せていないようだった。
『かしこまりました。ではリリライト王女殿下、私と一緒に参りましょう。たまには私と一緒に剣の稽古でも致しましょう。兄君さまも、今のリリライト様の年齢の頃には――』
『えー、やだやだ! 嫌です。兄様がいいです! 兄様となら剣のお稽古も頑張ります!』
いくら子供と言えど、幼すぎる主張にカリオスもシンパも閉口する。
『あのなぁ、リリライト。陛下がご不在の間、俺がやらないといけないこともたくさなるんだよ。分かるだろ。頼むから言うことを聞いてくれ』
実はこの時期ーー多忙という事情以上に、カリオスがストレスを抱えていたことがあった。
それは、この年齢になってからも相変わらず神器が扱えるようにならないということ。
それは少年時代に感じていた劣等感から、強大なプレッシャーとしてカリオスにのしかかっていた。それが余計にカリオスを苛立たせて、リリライトへの嫌悪を募らせる。
『なんでも言うことを聞いてやるから、今日は勘弁してくれ。花摘みどころじゃないんだよ、俺は』
それでもグッとこらえて妹をなだめていると、我ながら丸くなったものだ……と実感する。以前ならすぐに手が出ていものだが。
(こんな所ばっか要領よくなってどうすんだよ、俺は)
そんな風に思う自分への自己嫌悪が募る。
神器が扱えない理由は未だに不明だ。やはりカリオスが代々の王家の血筋の者に比べて、特別に劣っているようなところはない。それなのに、どうして神器が使えないのか。
少年時代から、執拗に何度もルエールに指摘されるのは……「強さ」が足りない。神器を扱うに相応しい「強さ」を身に着けていないから、神器が応えないのだという。
(へらへらしながら妹をなだめることが、強さかよ……!)
しかし、そんなカリオスの鬱屈した胸中になどまるで気づいた様子もなく、リリライトは「何でも聞く」というカリオスの言葉に顔を輝かせる。
『あっ、そうしたらぁ……兄様も、今度からリリのこと、リリって呼んで下さい! そしたら、今日はリリ我慢しますね。さあ、早く呼んで下さい! リリ、大好きだよっていってくれたら、リリは満足します』
『~~~~っ!』
無邪気な笑顔のまま、何のてらいもなくそう言えるリリライトが、本当にすごいと思う。カリオスは言葉にならない言葉を口にしながら、頭を掻きむしる。
『――分かった。それじゃあリリライトに”お使い”を頼む』
『ぶう』
それでも愛称で呼ぼうとしない兄に頬を膨らますリリライトだったが、あえてもうカリオスは取り合わない。
『へブリッジ薔薇園から白薔薇を採ってきてくれ。俺の部屋が今殺風景だから、何か華やかなものが欲しいと思っていたところなんだ。あそこの薔薇が、俺は好きでなぁ』
『わあっ、リリも白薔薇は大好きですっ! 母様も大好きですよね』
カリオスのその言葉に、シンパが微妙にハッと反応したことにリリライトは全く気付かない。愛する兄からの初めて”お使い”を頼まれたことに、顔をキラキラと輝かせていた。
『へブリッジ薔薇園ですね、分かりました! リリは、今日は兄様のための白薔薇を採りに行ってきます。では、早速準備をしてきますねっ!』
嬉しそうにわめきながら、リリライトはぱたぱたと足早に駆け足で去っていった。さすがに、もう何もないところで転ばないようにはなっており、リリライトはあっという間に見えなくなるところまで去っていったのだった。
『――ふう、これで仕事に集中できるな。悪い、シンパ。リリライトのこと、宜しくな』
悪戯をした子供の様に笑うカリオスに、シンパは珍しく不満そうに息を吐きながら答えた。
『人が悪いですよ、カリオス殿下』
聖アルマイトにおいて白薔薇は、白薔薇騎士団がそうであるように、王族の女系の象徴とされている。そのため王宮外では、平民だろうが貴族だろうが、無許可での白薔薇の栽培は禁じられているのだ。
だから、王都の外れにある、一職人が切り盛りしている薔薇園などに白薔薇があるはずなどない。
へブリッジ薔薇園まで行けば、誰に何と言われようとも自分が満足するまで白薔薇を探し続けるだろう。そして疲れ果てて帰ってきた頃には夜になっている。
とりあえず、今日のところはこれで厄介払いできそうだ。
そんな安易に考えていたカリオスの目論見が、この兄妹にとって大きな転機をもたらすこととなった。
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