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第19話 最上階
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「うおおおぉぉ、すげーーーー!」
展望台の壁へと張り付いて景色を眺めながら、空閑が感嘆の声を上げた。
「……なんでやねん」
あれだけガクブルしてたくせになんだコレ。
「ちょっとなんなのよ……」
夕凪からも呆れた声が漏れ聞こえてきた。
「よかったじゃない」
青羽はさすがだ。どこかのはしたない女子とは一味違うな。
「何よ」
「いや何も」
ギロリと睨みつけられたような気がするが、何事もなかったかのようにスルーする。危ない危ない。
いやしかし空閑の反応はどういうことだ。たしかに眺めはすごいんだが、ちょっと感動を返して欲しい。
「高所恐怖症じゃなかったのか」
「いやまぁ……、そうだったんだけどな……」
ガラスに張り付く空閑へと近づいて咎めるような口調で問いかけると、歯切れの悪い言葉が返ってきた。頑なに否定してたくせにここにきたら認めるのな。いやそれはそれでおかしいんだが。
「ここまで下界が小さく見えるとなんつーか、足元の景色というより絵とかポスター見てるような?」
「ほう?」
「まぁそういうわけで、オレの高所恐怖症は大したことないんだよ」
中には一メートルくらいの脚立の上でもダメな人がいるらしいのが高所恐怖症らしい。
「うはー、さすがに……、三百メートルは高いわね……」
空閑を疑いの目で見ていると、その向こう側で窓に近づいていた夕凪が独りごちる。若干腰が引けているが、まぁこの高さなので仕方がないだろう。むしろ空閑がおかしいだけだ。
「いい眺めねー」
青羽もその隣で景色を見下ろしている。こっちは平気そうだ。
「お、あれって通天郭じゃね?」
俺の横を通り過ぎて行った空閑が、窓の外に見える低い塔を指さす。動物園のすぐ向こう側にそれは見えた。
「あ、ホントだ。……以外に小さいね」
いつの間にか隣に来ていた夕凪からそんな声が聞こえてくる。そりゃ三百メートルから見下ろしてたら全部小さく見えるのも仕方がない。
「通天郭かぁ。……そういえば登ったことないかも」
「あたしもないなー」
「マジで? ……ってオレも登ったことないんだけどな」
「白石くんは?」
どうやら三人とも登ったことはないらしい。地元民なのに登ったことねぇのかよと思わずツッコミそうになったが思いとどまる。
「俺もない」
なんというか、地元民ほど地元の観光地には行かないということか。青羽の言葉に肩をすくめて答えていると、すぐ横からも声が上がった。
「あはは、なにそれー」
「まぁ、そんなこともあるよな……」
せっかくの会話のネタになるかと思いきや、そんなことはなかった。いやある意味でネタにはなったが。
たわいのない話をしながら展望台をぐるっと一周する。この六十階は周囲三六〇度の景色が見られるのだ。中央は吹き抜けになっており、通路がぐるっと壁に沿って続いている。遠くに城が見えたり観覧車が見えたりテーマパークが見えたり、あーだこーだ言いながら景色を楽しんだ。
「あ、古墳も見えるね」
ふと気が付いた夕凪が、古墳がでかでかと紹介されているパネルを見ながら呟いた。ここからだと自宅近所にある古墳も遠くに見える。世界遺産に登録されたからか、展望台の南東エリアは古墳一色だ。
「ほー、こうしてみると古墳っていっぱいあるんだな?」
「確か四十五個くらいあるんだっけ?」
空閑の言葉にかぶせるように言ってみるが、あくまでこの数は世界遺産に登録された古墳の数だ。中には風景に紛れてしまって、立て看板もなにもない古墳もあるくらいだ。それくらい地元近辺には古墳があふれている。
「へー」
どっちにしろそこまで興味のない事柄だろう。地元を走る電車が古墳デザインに変わったりしているが、そんなにすぐにわかる変化があるわけでもない。ましてや地味な『古墳』というものに興味を持つ生徒がどれだけいるか。通天郭のように地元だからと言ってよく知っているとは限らないのだ。
「一周したし、下に降りてみる?」
ひとしきり景色を堪能したので四人で下へと向かう。展望台の五十九階は吹き抜けになっており、お土産屋とお帰り専用エレベーターがあった。下にはもう一つフロアがあるので、まだ帰るつもりのない俺たちは五十八階に降り立つ。ここには屋外の庭園と、カフェダイニングバーが入っているのだ。
「あ、パイン飴ソフトクリームだって」
「おいしそう」
「へー、コラボしてるんだ」
パイン飴と言えばあの、中央に穴の開いた、溶けると細くなって舌に突き刺さる凶器と化す飴のことだ。
「これは食べてみないとな」
四人で並んでソフトクリームを買うと、屋外の天空庭園へと出る。夏にはビアガーデンもやっているようで、ここでバーベキューも食べられるらしい。まぁ未成年の俺らには関係ないが……。
窓際の座席を確保すると、景色を眺めながらソフトクリームを食べる。
「はー、結構楽しかったね」
「そうね」
「空閑が中途半端な高所恐怖症だとわかったしな」
「……なんだよ」
「あはは!」
「それじゃあ展望台も堪能したし、帰るか」
「おい待て」
俺の帰る宣言に待ったをかけたのは隣に座る空閑だ。何かあったっけと首をかしげると、鋭いツッコミが飛んできた。
「オレの買い物が終わってねぇだろうが!」
展望台の壁へと張り付いて景色を眺めながら、空閑が感嘆の声を上げた。
「……なんでやねん」
あれだけガクブルしてたくせになんだコレ。
「ちょっとなんなのよ……」
夕凪からも呆れた声が漏れ聞こえてきた。
「よかったじゃない」
青羽はさすがだ。どこかのはしたない女子とは一味違うな。
「何よ」
「いや何も」
ギロリと睨みつけられたような気がするが、何事もなかったかのようにスルーする。危ない危ない。
いやしかし空閑の反応はどういうことだ。たしかに眺めはすごいんだが、ちょっと感動を返して欲しい。
「高所恐怖症じゃなかったのか」
「いやまぁ……、そうだったんだけどな……」
ガラスに張り付く空閑へと近づいて咎めるような口調で問いかけると、歯切れの悪い言葉が返ってきた。頑なに否定してたくせにここにきたら認めるのな。いやそれはそれでおかしいんだが。
「ここまで下界が小さく見えるとなんつーか、足元の景色というより絵とかポスター見てるような?」
「ほう?」
「まぁそういうわけで、オレの高所恐怖症は大したことないんだよ」
中には一メートルくらいの脚立の上でもダメな人がいるらしいのが高所恐怖症らしい。
「うはー、さすがに……、三百メートルは高いわね……」
空閑を疑いの目で見ていると、その向こう側で窓に近づいていた夕凪が独りごちる。若干腰が引けているが、まぁこの高さなので仕方がないだろう。むしろ空閑がおかしいだけだ。
「いい眺めねー」
青羽もその隣で景色を見下ろしている。こっちは平気そうだ。
「お、あれって通天郭じゃね?」
俺の横を通り過ぎて行った空閑が、窓の外に見える低い塔を指さす。動物園のすぐ向こう側にそれは見えた。
「あ、ホントだ。……以外に小さいね」
いつの間にか隣に来ていた夕凪からそんな声が聞こえてくる。そりゃ三百メートルから見下ろしてたら全部小さく見えるのも仕方がない。
「通天郭かぁ。……そういえば登ったことないかも」
「あたしもないなー」
「マジで? ……ってオレも登ったことないんだけどな」
「白石くんは?」
どうやら三人とも登ったことはないらしい。地元民なのに登ったことねぇのかよと思わずツッコミそうになったが思いとどまる。
「俺もない」
なんというか、地元民ほど地元の観光地には行かないということか。青羽の言葉に肩をすくめて答えていると、すぐ横からも声が上がった。
「あはは、なにそれー」
「まぁ、そんなこともあるよな……」
せっかくの会話のネタになるかと思いきや、そんなことはなかった。いやある意味でネタにはなったが。
たわいのない話をしながら展望台をぐるっと一周する。この六十階は周囲三六〇度の景色が見られるのだ。中央は吹き抜けになっており、通路がぐるっと壁に沿って続いている。遠くに城が見えたり観覧車が見えたりテーマパークが見えたり、あーだこーだ言いながら景色を楽しんだ。
「あ、古墳も見えるね」
ふと気が付いた夕凪が、古墳がでかでかと紹介されているパネルを見ながら呟いた。ここからだと自宅近所にある古墳も遠くに見える。世界遺産に登録されたからか、展望台の南東エリアは古墳一色だ。
「ほー、こうしてみると古墳っていっぱいあるんだな?」
「確か四十五個くらいあるんだっけ?」
空閑の言葉にかぶせるように言ってみるが、あくまでこの数は世界遺産に登録された古墳の数だ。中には風景に紛れてしまって、立て看板もなにもない古墳もあるくらいだ。それくらい地元近辺には古墳があふれている。
「へー」
どっちにしろそこまで興味のない事柄だろう。地元を走る電車が古墳デザインに変わったりしているが、そんなにすぐにわかる変化があるわけでもない。ましてや地味な『古墳』というものに興味を持つ生徒がどれだけいるか。通天郭のように地元だからと言ってよく知っているとは限らないのだ。
「一周したし、下に降りてみる?」
ひとしきり景色を堪能したので四人で下へと向かう。展望台の五十九階は吹き抜けになっており、お土産屋とお帰り専用エレベーターがあった。下にはもう一つフロアがあるので、まだ帰るつもりのない俺たちは五十八階に降り立つ。ここには屋外の庭園と、カフェダイニングバーが入っているのだ。
「あ、パイン飴ソフトクリームだって」
「おいしそう」
「へー、コラボしてるんだ」
パイン飴と言えばあの、中央に穴の開いた、溶けると細くなって舌に突き刺さる凶器と化す飴のことだ。
「これは食べてみないとな」
四人で並んでソフトクリームを買うと、屋外の天空庭園へと出る。夏にはビアガーデンもやっているようで、ここでバーベキューも食べられるらしい。まぁ未成年の俺らには関係ないが……。
窓際の座席を確保すると、景色を眺めながらソフトクリームを食べる。
「はー、結構楽しかったね」
「そうね」
「空閑が中途半端な高所恐怖症だとわかったしな」
「……なんだよ」
「あはは!」
「それじゃあ展望台も堪能したし、帰るか」
「おい待て」
俺の帰る宣言に待ったをかけたのは隣に座る空閑だ。何かあったっけと首をかしげると、鋭いツッコミが飛んできた。
「オレの買い物が終わってねぇだろうが!」
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