本からはじまる異世界旅行記

m-kawa

文字の大きさ
8 / 153
第一章

モンスターズワールド -王女-

しおりを挟む
「あなたは……、魔術師ではないのですか……?」

 フィアリーシス王女様の口から問いかけが漏れる。

 えっ!? ちょっ、どういうこと?
 辺りをキョロキョロするが、近くには誰もいない。やっぱり俺への質問だろう。
 つかこれはどう答えるべきなんだ……。わからんぞ!

「あ、えっと……。魔術師ではないですよ」

 とりあえずステータスに記載されている通りに答える。マジシャンの記載はあるが、魔術師の記載はないので嘘ではないぞ。
 しかし王女様の後ろに控える護衛騎士の二人の威圧感が半端ねぇ。って、あ、ここは跪いたほうがいいんだっけか? いやでも質問に答えたあとだし今更かな……。

「えっ? そんなに魔力をお持ちなのに……?」

 全く関係ないことで冷や汗をかいているところに予想外の答えが返ってくる。
 えーっと、それはマジシャンの職業にも就いてるからってことなのかな? でもまだレベル6だしな。

「……うーん、自分がそんなに魔力を持っている実感はないのですが……」

 正直言って本当に実感がない。そりゃ多少は同レベルの人と比べたらステータスが多い自覚はあるが、単純に強さだけで見ればまだまだだ。
 この世界にだってベテランとか一流と呼ばれる人種もいるだろうし、そういう人にはまだまだ敵わないだろうと思う。

「……そう、ですか。でも――」

 何か言いたそうに言葉を途切れさせるが、王女様との対面と後ろの護衛騎士の威圧感で冷静になりきれていない俺は、まったく疑問に思うことなくスルーだ。

「いえ、なぜ剣士になられたのか気になったもので……」

「はあ……、特に理由はないですね……」

 マジシャンの職業はすでに就いているので、とは口が裂けても言えない。

「そうですか……。お時間を取らせてしまいました。では私はこれで……」

 歯切れ悪く退室する王女様。何がなんだかわからない俺は呆けた顔で見送ることしかできない。一体なんだったんだろう。
 ゲームでは最初からこんなイベントはなかったはずだ。
 うーむ。決められたプログラム通りに動くわけではないのか。現実世界として考えた方がいいのか……。ま、危なくなったらすぐ帰ればいいか。

「おいおい、王女様に声を掛けられるなんてラッキーだな!」

 考え込んでいると後ろから背中をバンバンと叩かれた。
 振り返るとさっきまでカウンターにいた受付の男だった。

「あ、はい。……運がよかったですね。ははは」

 若干乾いた笑いになっていたような気はするが、気にしないでおく。

「はっはっは! まあがんばれよ!」

「……がんばります」

 受付の男に送り出されて詰め所を出る。気が付けばもう昼前だ。腹へったなーと思いながら通りを歩くと、近くの露店からいい匂いが漂ってくる。
 チラッと覗き込んでみるが、値札を見たところで無一文だったことに愕然とした。

「しょうがない。持ち込んだ弁当でも食うか」

 日本で準備した物資の中には弁当も含まれる。ただまあ、こんな人目につくような街中では目立つので、街の外に出てからだな。そのあとでスキルを色々と試してみることにしよう。
 
 さっそく街の外、東門へと来てみた。ちらほらと駆け出しが魔物を探してうろうろしているのが見える。
 さて、俺が目指すのは人のいないところだ。確か向こうのほうに雑木林があったはず。入り口から外れたところなら人は来ないだろう。
 入り口から回り込んで見えないところまで来たが、ちょうどいい切り株を発見。弁当食うか。

 食ったあとは実験だ。



「ではさっそく。――フレアアロー!」

 かざした指先から二十センチほどの炎の矢が、プラスチックの弁当ケースへと向かって飛んでいく。ぼふっという音がしたかと思うと、ゴミは真っ黒の灰となった。

「……出た」

 ついでにゴミ処分できたことなんてどうでもいい。魔法が発動しちゃったよ。これなんてチート?
 まあ、ステータス画面に出てる時点で使える気はしてたけど、やばいねコレ。職業をコロコロ変えられるゲームもあるけど、ロードライフオンラインとモンスターズワールドではできない芸当だ。
 っとそこまで考えて、そのゲームに入ったらどうなるんだ? という疑問が湧く。すごくやばくね? すでになんでもありな状態になってる気がしないでもないが、これはもう際限がないな。

 うーむ。まあ未来のスキルより現在の実験だな。とりあえずまだ使ってない魔法を試すか。だいたいは名前で効果はわかるが、実体験しないとね。
 さっきまで座っていた切り株に意識を向ける。

「――エアハンマー!」

 ズンっという地響きと共に切り株が地面にめり込む。圧縮された空気の塊をハンマーのようにして振り下ろすイメージだろうか。

「――アーススパイク!」

 地面から岩の塊が勢い良く飛び出して来たかと思うと、地面にめり込んでいた切り株を砕きながら吹き飛ばす。

「――身体強化!」

 ……何も起こらない。
 ああ、そりゃそうだ。強化だもんね。上から順番にと思ってたけど適当すぎたな。
 うーん、強化されたのかな? いまいち実感が湧かないけど。とりあえず走ってみるか。

「…………」

 うん、さっぱりわからん。十分ほど走ったが軽く息が切れる程度だし。そういえば剣士になって筋力体力が大幅に上がったんだった。
 慣れてきてから試してみよう。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

オリジナルの桜間トオルは死にました

青山喜太
ファンタジー
主人公桜間トオル17歳は家族との旅行中、車の中ではなく突然なんの脈絡もなく遺跡の中で目が覚めてしまう。 混乱する桜間トオルの目の前にいたのは自分と瓜二つ、服装さえ一緒のもう一人の桜間トオルだった。 もう一人の桜間トオルは全身から出血し血を吐きながら、乞う。 「父さんと、母さん……妹をアカリを頼む……!!」 思わず、頷いた桜間トオルはもう一人の自分の最後を看取った。 その時、見知らぬ声が響く。 「私のことがわかるか? 13人目の桜間トオル?」 これはただの高校生である桜間トオルが英雄たちとの戦争に巻き込まれていく物語

【1/20本編堂々完結!】自力で帰還した錬金術師の爛れた日常

ちょす氏
ファンタジー
「この先は分からないな」 帰れると言っても、時間まで同じかどうかわからない。 さて。 「とりあえず──妹と家族は救わないと」 あと金持ちになって、ニート三昧だな。 こっちは地球と環境が違いすぎるし。 やりたい事が多いな。 「さ、お別れの時間だ」 これは、異世界で全てを手に入れた男の爛れた日常の物語である。 ※物語に出てくる組織、人物など全てフィクションです。 ※主人公の癖が若干終わっているのは師匠のせいです。 ゆっくり投稿です。

最弱スライムに転生した俺、捕食スキルで無限進化していたら魔王軍すら支配してました

チー牛Y
ファンタジー
残業中に倒れた俺が次に目を覚ました時、なぜか異世界で最弱モンスターのスライムになっていた。 完全に詰んだ、戦う力もない。そう思っていた時、俺には一つだけ、とんでもないスキルがあった。 【捕食】 それは、倒した相手を取り込み、能力・スキル・力のすべてを奪うチート能力だった。 ゴブリンを食べれば腕力を獲得。 魔物を食べれば新スキルを習得。 レベルは爆速で上がり、進化は止まらない。 森の魔物を支配し、ダンジョンを制圧し、気づけば俺は魔物たちの王になっていた。 やがてその力は魔王軍すら飲み込み、世界の勢力図を塗り替えていく。 これは―― 最弱スライムから始まる、無限進化の成り上がり無双譚。

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。 ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。 そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。 問題は一つ。 兄様との関係が、どうしようもなく悪い。 僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。 このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない! 追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。 それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!! それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります! 5/9から小説になろうでも掲載中

ポンコツと蔑まれた冒険者は最強クランをつくる

ぽとりひょん
ファンタジー
エアハルトは、幼なじみのエルメンヒルトを追ってダンジョンの町「ゴルドベルク」で冒険者になろうとする。しかし、彼のアビリティを見た人たちは冒険者を諦め村へ帰るように説得する。彼には魔力がなかった。魔力がなければ深層で魔物と戦うことが出来ないのだ。エアハルトは諦めきれずエルメンヒルトと肩を並べて冒険するため、冒険者となってポンコツと蔑まれながら、ソロでダンジョンに挑み始める。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

半世紀の契約

篠原皐月
恋愛
 それぞれ個性的な妹達に振り回されつつ、五人姉妹の長女としての役割を自分なりに理解し、母親に代わって藤宮家を纏めている美子(よしこ)。一見、他人からは凡庸に見られがちな彼女は、自分の人生においての生きがいを、未だにはっきりと見い出せないまま日々を過ごしていたが、とある見合いの席で鼻持ちならない相手を袖にした結果、その男が彼女の家族とその後の人生に、大きく関わってくる事になる。  一見常識人でも、とてつもなく非凡な美子と、傲岸不遜で得体の知れない秀明の、二人の出会いから始まる物語です。

処理中です...