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第一章
モンスターズワールド -試験結果-
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目の前で剣戟が繰り広げられる。お互いが木剣なので金属音ではないが、それでも目の前で打ち合う音は心に響くものがある。
片方は余裕の表情で、そして片方は必死の形相だ。
さすがに試験官と挑戦者という図だけあって、模擬戦の優劣は圧倒的だった。ステータスが似通っているからといって互角になるはずもないということか。
ますますもって自分も楽観視できないという思いが募るのみである。
とは言え、目の前の模擬戦が目で追えないかというとそういうわけでもなく、そこは高ステータスに任せて力押しでもいいんではないかというかすかな期待も持っているのだが。
今まで一方的にモンスターを狩っていたが、人同士のぶつかり合いは今回が初めてなのだ。やはり人が相手だと簡単にはいかないようだ。
「まあいいだろう。――合格だ」
考察している間に終わったようで、バグワーヌがアイロスに向かってしぶしぶといった形で合格を告げていた。
「はあっ、はあっ、……ありがとう、ございました」
肩で息をしながらアイロスが軽く頭を下げる。と、そこで力尽きたのか、膝から崩れて尻餅をついた。
一方試験官のバグワーヌは息一つ乱れた様子もなく、余裕の表情だ。
「さっそく次やるかい?」
「はい、お願いします」
何本か無造作に置かれた木剣から一本を物色すると、軽く振って確かめる。
うん。よくわかんないけどこれでいいかな。
剣道をかじったこともないし、剣の良し悪しなんてこれっぽっちもわからないので適当だ。
バグワーヌの前方、五メートルほどの距離を置いて真正面に立ち、木剣を正眼に構える。右足を軽く前に出し、いつでも動けるように腰を軽く落としておく。
あとは気持ちで負けたらダメって言うよな。まあ負けるつもりもないけど、とりあえず相手を睨み付けておこう。あ、睨み付けることに集中しすぎないように、体全体どこが動き出すかも注意しとかないとな。
……ってか、こういう場面ってこっちから仕掛けるもんだっけ? アニメやドラマなどを思い出していると、やはり挑戦者のほうから仕掛ける場面が多い気がしてくる。
などと相手に集中しているはずが、思考が逸れていき始めた時だった。
「――はっ!」
隙と見られたのか、バグワーヌが力強く踏み込んでこちらに飛び込んできた。手にした右手の木剣は左側に構えられており、横への薙ぎ払いが来そうな雰囲気である。
「――っ!」
集中が逸れていたせいか反応が遅れる……、かと思いきや、相手に合わせるようにこちらも足が自然と前に出ていた。
相手の薙ぎ払いが上中下段のどこにくるかはわからないが、木剣を持つ手の位置はそうそう変わらないだろうと目算をつけて、正眼に構えた剣を手首へと向けて振り下ろす。
同時に自分も踏み出してくることなど予想していなかったのか、まるで反応できていないバグワーヌ。木剣を振り下ろす目標である手首は動き出さないままだ。
ゴッ!
硬い音とともにバグワーヌが剣を取り落としたかと思うと、飛び出した勢いのまま前方に倒れる。
倒れこむバグワーヌとすれ違うようにして前方へ抜けると、俺は構えを解いて振り返った。
「――おや?」
なぜかバグワーヌが倒れているではないか。剣術のけの字も知らないが、自然と出た足に逆らわず、思ったまま木剣を振り下ろしただけである。
「……ははっ」
手首をぷらぷらと振って具合を確かめながら立ち上がるバグワーヌ。その表情はどうやら苦笑だった。
「まったく、期待の新人って話は聞いてたが……、想像以上だな」
「えっ?」
「一週間で昇格試験までたどり着いた奴がいるってギロリスがぼやいてたからな」
そのぼやきをどう解釈すれば『期待の新人』になるんですかね?
「はあ……」
よくわからない回答に曖昧な返事しか返せない。
まあ、あんたの思考もそうだけど、あっさり試験官を下した自分の運の良さのほうがびっくりですよ。
今まで力押ししかしてこなかったから、熟練相手じゃ手こずるかと思ったけど……。ここでまさかの強運を発揮するとは思わなかった。
自分のステータスを確認するたびに妙に運だけ高いのが気になってたが、もしかして強敵には運で対抗するしかないとか言わないよね。
一瞬だけど自分に技術が付いたとか思ったけど、自惚れちゃいけませんな。常に挑戦者の気持ちでいかねば。
「では、続きをお願いします」
気持ちを入れ替えて木剣を構えなおす。次こそは思考を逸らせたりせずにしっかり集中だ。一度だけ大きく深呼吸をしてバグワーヌを見据える。
「いやいや、もう勘弁してくれ」
両手を目の前で振りながらバグワーヌが否定の声を上げる。
「えっ?」
もう終わり? 運の良さしか発揮してないんだけど。もっと色んな面を試験してくださいお願いします。
「あんたは文句なしで合格だよ」
えーっと、どういうこと?
他に意見が聞きたい気がして横を向くが、目と口を大きく開きっぱなしで微動だにしないもう一人の挑戦者がいるだけだ。
だめだ。なんとなくだがこの犬人族には期待できそうにない。
ギギギっと擬音が聞こえそうな動きでバグワーヌの方へと向き直る。
「そういやあんたに呼び出し命令が出てるぜ。騎士昇格の手続き終わったら城に顔出せよ。
――いったい何をやらかしたんだ?」
「――はぁ!?」
片方は余裕の表情で、そして片方は必死の形相だ。
さすがに試験官と挑戦者という図だけあって、模擬戦の優劣は圧倒的だった。ステータスが似通っているからといって互角になるはずもないということか。
ますますもって自分も楽観視できないという思いが募るのみである。
とは言え、目の前の模擬戦が目で追えないかというとそういうわけでもなく、そこは高ステータスに任せて力押しでもいいんではないかというかすかな期待も持っているのだが。
今まで一方的にモンスターを狩っていたが、人同士のぶつかり合いは今回が初めてなのだ。やはり人が相手だと簡単にはいかないようだ。
「まあいいだろう。――合格だ」
考察している間に終わったようで、バグワーヌがアイロスに向かってしぶしぶといった形で合格を告げていた。
「はあっ、はあっ、……ありがとう、ございました」
肩で息をしながらアイロスが軽く頭を下げる。と、そこで力尽きたのか、膝から崩れて尻餅をついた。
一方試験官のバグワーヌは息一つ乱れた様子もなく、余裕の表情だ。
「さっそく次やるかい?」
「はい、お願いします」
何本か無造作に置かれた木剣から一本を物色すると、軽く振って確かめる。
うん。よくわかんないけどこれでいいかな。
剣道をかじったこともないし、剣の良し悪しなんてこれっぽっちもわからないので適当だ。
バグワーヌの前方、五メートルほどの距離を置いて真正面に立ち、木剣を正眼に構える。右足を軽く前に出し、いつでも動けるように腰を軽く落としておく。
あとは気持ちで負けたらダメって言うよな。まあ負けるつもりもないけど、とりあえず相手を睨み付けておこう。あ、睨み付けることに集中しすぎないように、体全体どこが動き出すかも注意しとかないとな。
……ってか、こういう場面ってこっちから仕掛けるもんだっけ? アニメやドラマなどを思い出していると、やはり挑戦者のほうから仕掛ける場面が多い気がしてくる。
などと相手に集中しているはずが、思考が逸れていき始めた時だった。
「――はっ!」
隙と見られたのか、バグワーヌが力強く踏み込んでこちらに飛び込んできた。手にした右手の木剣は左側に構えられており、横への薙ぎ払いが来そうな雰囲気である。
「――っ!」
集中が逸れていたせいか反応が遅れる……、かと思いきや、相手に合わせるようにこちらも足が自然と前に出ていた。
相手の薙ぎ払いが上中下段のどこにくるかはわからないが、木剣を持つ手の位置はそうそう変わらないだろうと目算をつけて、正眼に構えた剣を手首へと向けて振り下ろす。
同時に自分も踏み出してくることなど予想していなかったのか、まるで反応できていないバグワーヌ。木剣を振り下ろす目標である手首は動き出さないままだ。
ゴッ!
硬い音とともにバグワーヌが剣を取り落としたかと思うと、飛び出した勢いのまま前方に倒れる。
倒れこむバグワーヌとすれ違うようにして前方へ抜けると、俺は構えを解いて振り返った。
「――おや?」
なぜかバグワーヌが倒れているではないか。剣術のけの字も知らないが、自然と出た足に逆らわず、思ったまま木剣を振り下ろしただけである。
「……ははっ」
手首をぷらぷらと振って具合を確かめながら立ち上がるバグワーヌ。その表情はどうやら苦笑だった。
「まったく、期待の新人って話は聞いてたが……、想像以上だな」
「えっ?」
「一週間で昇格試験までたどり着いた奴がいるってギロリスがぼやいてたからな」
そのぼやきをどう解釈すれば『期待の新人』になるんですかね?
「はあ……」
よくわからない回答に曖昧な返事しか返せない。
まあ、あんたの思考もそうだけど、あっさり試験官を下した自分の運の良さのほうがびっくりですよ。
今まで力押ししかしてこなかったから、熟練相手じゃ手こずるかと思ったけど……。ここでまさかの強運を発揮するとは思わなかった。
自分のステータスを確認するたびに妙に運だけ高いのが気になってたが、もしかして強敵には運で対抗するしかないとか言わないよね。
一瞬だけど自分に技術が付いたとか思ったけど、自惚れちゃいけませんな。常に挑戦者の気持ちでいかねば。
「では、続きをお願いします」
気持ちを入れ替えて木剣を構えなおす。次こそは思考を逸らせたりせずにしっかり集中だ。一度だけ大きく深呼吸をしてバグワーヌを見据える。
「いやいや、もう勘弁してくれ」
両手を目の前で振りながらバグワーヌが否定の声を上げる。
「えっ?」
もう終わり? 運の良さしか発揮してないんだけど。もっと色んな面を試験してくださいお願いします。
「あんたは文句なしで合格だよ」
えーっと、どういうこと?
他に意見が聞きたい気がして横を向くが、目と口を大きく開きっぱなしで微動だにしないもう一人の挑戦者がいるだけだ。
だめだ。なんとなくだがこの犬人族には期待できそうにない。
ギギギっと擬音が聞こえそうな動きでバグワーヌの方へと向き直る。
「そういやあんたに呼び出し命令が出てるぜ。騎士昇格の手続き終わったら城に顔出せよ。
――いったい何をやらかしたんだ?」
「――はぁ!?」
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