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第二章
物語1 -呼び方-
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あれから三日。王城から外に出る自由時間もなく、訓練に明け暮れる日々が続いていた。まったくもって帰る機会がないが、それも今日までかもしれない。
この世界では一年が十二か月、ひと月五週間、一週間が六日という一年で三百六十日のわかりやすい数え方をしており、明日が毎週一日ある休日となっていた。
王城から出られる許可は下りなかったが、訓練もなく一日自由にしていていいとのことなので、もしかすると一度自宅へと帰る機会があるかもしれない。
しかしどうしてこうなった。
俺は今王女様に魔法を教えている。
少し離れたところでは、王国騎士団員の一人が明に剣術を、セルフィナさんが穂乃果に魔法を教えている。
やはりスキルが示す通り、明は魔法よりも剣術などの武器を扱う才能がより高いようだった。
というか三日でそれがわかるというのもかなりの成長速度らしいけど。
魔法訓練の翌日は武器を扱う訓練があったわけだが、そこでも魔法訓練のときと同じことが起こった。
自重しないと決めた俺が騎士団長をあっさりと下すと、俺は王女様を指導する側に就かされた。
俺に教えることはないというのはわかるが、なぜ王女様付きなのだ。
解せぬ。
魔法のスキルしか持っていない王女様なので魔法を教えるのはわかるんだが、なぜ俺なんだ。
ぶっちゃけ俺が魔法を使えるようになってまだ半月も経っていない。――ということはぶっちゃける気はないけど。
「さすがマコト様です!」
王女様に至ってはさっきからこのセリフしか言ってない気がする。
「いえいえ、王女様の筋がいいからですよ。俺は今まで人にモノを教えたことなんてありませんから」
実際に王女様の魔法の才能はかなりあるほうだと思う。元々魔法のある世界で魔法が使えたのだからそういうものかもしれないが、セルフィナさんから話を聞いただけで発動までに至ったのは才能があったからだろう。
事実この三日ですこぶる上達している。
すでに無詠唱で、元々使えた魔法と同程度の威力で発動することができていた。多少集中に時間がかかるが、ここは回数を重ねて慣れるしかないところだろう。
「……もうっ! 何度も言ってるでしょう。私を王女ではなく、きちんと名前で、フィアって呼んでください」
静かにぷりぷりと怒る器用な王女様に苦笑しつつ意趣返しをしてみる。
「じゃあ王女様も俺を様付で呼ぶのをやめてください。そうしたら名前で呼んであげます」
「むー。わかりました……。マコト――」
「はい、それで構いませんよ」
名前の後に何をつけようかと一瞬悩んだ隙を逃さずにこちらから口を挟む。
「……ずるいです。…………マコト、……マコト」
と言う割にはブツブツと俺の名前を呟くの止めてくれませんかね。下手に『マコト殿』とか言われるのを防いだつもりだったんだが、墓穴を掘ったかな。
不機嫌そうに俺の名前を呟いていたかと思ったが、何か納得できたんだろうか。気が付けばうんうんと頷いていた王女様がこちらを振り返ると、
「マコト! 私のこともフィアって呼んでくださいね!」
ビシッとこちらを指さして念を押すように力強い口調で畳みかけてきた。
「わかったよ、フィア」
こちらも名前を呼び捨てで、口調もさらに砕けたものにしてやる。王女様相手ではあるが、そのことを何も知らないこちらの世界の人間の前で、年下の少女に敬語を使うのは不自然だろう。
咄嗟に敬語が出ないようにしたほうがいいかもしれないという思いもあって、いい機会なので口調を改めさせてもらうことにしよう。
若干耳を赤くしたフィアの後ろから穂乃果が近づいてきた。こっちもなんか不機嫌そうだな。
「ハイハイ、イチャつくのは他所でやってもらえないかしら」
穂乃果の言葉にフィアの耳がさらに赤くなるのがわかる。
別にイチャついてるつもりはないんだがな。会って話をするようになってまだ数日しか経っていないのに何かあるわけがなかろう。
ということは面倒なことになるので言わないが。
「へいへい。……穂乃果ちゃんにも明くんって子がいるんだからそっちで我慢しなさい」
「はぁ? ……なんであんな子どもに」
不機嫌さをさらに強めて文句を言う穂乃果。
ここ数日の様子を見てる限りあの二人の雰囲気は悪くないんだが、俺の思い違いだったのかな?
しかし……お前も十分子どもだろうが。つか同い年じゃねーかお前ら。
「なんだ、団長さんみたいな人が好みなのか?」
子どもと対照的な筋肉ムキムキのでかいおっさんを思い浮かべて聞いてみる。
「……はあっ!? なんでそうなるのよ! ……もう、訓練終わったから帰るわよ!」
さらに不機嫌になった穂乃果が明には声を掛けずにさっさと引っ込んで行く。
さて、もうそんな時間か。
フィアに魔法を教えていると時間がたつのが早いな。飲み込みが早いからか、俺の教え方がうまいんじゃないかとつい錯覚してしって楽しくなってくる。
「なんであんなに機嫌が悪いんだろうな?」
同じく訓練を切り上げて帰ろうとしていた明に聞いてみる。
「……はは、逆にからかわれたからじゃないですかね。……はあ」
苦笑で答える明。なんだ、最後のため息は。穂乃果に子ども扱いされたセリフでも聞こえてたのかな。
「マコト、私たちも帰りましょう」
「そうだな」
よし、明日こそフィアを元の世界に送り届けて誘拐犯にならないようにするぞ――。
この世界では一年が十二か月、ひと月五週間、一週間が六日という一年で三百六十日のわかりやすい数え方をしており、明日が毎週一日ある休日となっていた。
王城から出られる許可は下りなかったが、訓練もなく一日自由にしていていいとのことなので、もしかすると一度自宅へと帰る機会があるかもしれない。
しかしどうしてこうなった。
俺は今王女様に魔法を教えている。
少し離れたところでは、王国騎士団員の一人が明に剣術を、セルフィナさんが穂乃果に魔法を教えている。
やはりスキルが示す通り、明は魔法よりも剣術などの武器を扱う才能がより高いようだった。
というか三日でそれがわかるというのもかなりの成長速度らしいけど。
魔法訓練の翌日は武器を扱う訓練があったわけだが、そこでも魔法訓練のときと同じことが起こった。
自重しないと決めた俺が騎士団長をあっさりと下すと、俺は王女様を指導する側に就かされた。
俺に教えることはないというのはわかるが、なぜ王女様付きなのだ。
解せぬ。
魔法のスキルしか持っていない王女様なので魔法を教えるのはわかるんだが、なぜ俺なんだ。
ぶっちゃけ俺が魔法を使えるようになってまだ半月も経っていない。――ということはぶっちゃける気はないけど。
「さすがマコト様です!」
王女様に至ってはさっきからこのセリフしか言ってない気がする。
「いえいえ、王女様の筋がいいからですよ。俺は今まで人にモノを教えたことなんてありませんから」
実際に王女様の魔法の才能はかなりあるほうだと思う。元々魔法のある世界で魔法が使えたのだからそういうものかもしれないが、セルフィナさんから話を聞いただけで発動までに至ったのは才能があったからだろう。
事実この三日ですこぶる上達している。
すでに無詠唱で、元々使えた魔法と同程度の威力で発動することができていた。多少集中に時間がかかるが、ここは回数を重ねて慣れるしかないところだろう。
「……もうっ! 何度も言ってるでしょう。私を王女ではなく、きちんと名前で、フィアって呼んでください」
静かにぷりぷりと怒る器用な王女様に苦笑しつつ意趣返しをしてみる。
「じゃあ王女様も俺を様付で呼ぶのをやめてください。そうしたら名前で呼んであげます」
「むー。わかりました……。マコト――」
「はい、それで構いませんよ」
名前の後に何をつけようかと一瞬悩んだ隙を逃さずにこちらから口を挟む。
「……ずるいです。…………マコト、……マコト」
と言う割にはブツブツと俺の名前を呟くの止めてくれませんかね。下手に『マコト殿』とか言われるのを防いだつもりだったんだが、墓穴を掘ったかな。
不機嫌そうに俺の名前を呟いていたかと思ったが、何か納得できたんだろうか。気が付けばうんうんと頷いていた王女様がこちらを振り返ると、
「マコト! 私のこともフィアって呼んでくださいね!」
ビシッとこちらを指さして念を押すように力強い口調で畳みかけてきた。
「わかったよ、フィア」
こちらも名前を呼び捨てで、口調もさらに砕けたものにしてやる。王女様相手ではあるが、そのことを何も知らないこちらの世界の人間の前で、年下の少女に敬語を使うのは不自然だろう。
咄嗟に敬語が出ないようにしたほうがいいかもしれないという思いもあって、いい機会なので口調を改めさせてもらうことにしよう。
若干耳を赤くしたフィアの後ろから穂乃果が近づいてきた。こっちもなんか不機嫌そうだな。
「ハイハイ、イチャつくのは他所でやってもらえないかしら」
穂乃果の言葉にフィアの耳がさらに赤くなるのがわかる。
別にイチャついてるつもりはないんだがな。会って話をするようになってまだ数日しか経っていないのに何かあるわけがなかろう。
ということは面倒なことになるので言わないが。
「へいへい。……穂乃果ちゃんにも明くんって子がいるんだからそっちで我慢しなさい」
「はぁ? ……なんであんな子どもに」
不機嫌さをさらに強めて文句を言う穂乃果。
ここ数日の様子を見てる限りあの二人の雰囲気は悪くないんだが、俺の思い違いだったのかな?
しかし……お前も十分子どもだろうが。つか同い年じゃねーかお前ら。
「なんだ、団長さんみたいな人が好みなのか?」
子どもと対照的な筋肉ムキムキのでかいおっさんを思い浮かべて聞いてみる。
「……はあっ!? なんでそうなるのよ! ……もう、訓練終わったから帰るわよ!」
さらに不機嫌になった穂乃果が明には声を掛けずにさっさと引っ込んで行く。
さて、もうそんな時間か。
フィアに魔法を教えていると時間がたつのが早いな。飲み込みが早いからか、俺の教え方がうまいんじゃないかとつい錯覚してしって楽しくなってくる。
「なんであんなに機嫌が悪いんだろうな?」
同じく訓練を切り上げて帰ろうとしていた明に聞いてみる。
「……はは、逆にからかわれたからじゃないですかね。……はあ」
苦笑で答える明。なんだ、最後のため息は。穂乃果に子ども扱いされたセリフでも聞こえてたのかな。
「マコト、私たちも帰りましょう」
「そうだな」
よし、明日こそフィアを元の世界に送り届けて誘拐犯にならないようにするぞ――。
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