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第三章
さくら
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「ちょっとお兄ちゃん。……これはどういことかな?」
ここは日本にある我が家である。
モンスターズワールドの世界から帰ってきて着替えてからリビングに足を踏み入れると、目の前には歯ブラシを片手に一本ずつ握りしめた妹のさくらが鬼の形相で仁王立ちしていた。
「お、おう、……久しぶりだな。帰ってくるなら連絡くらいしてくれればよかったのに……」
あまりにも唐突なさくらの出現で戸惑った俺は、さらに地雷を踏み抜く言葉を発していることに気づいていない。
「はあっ!? 何度も連絡したに決まってるでしょ! 電話には出ないしメールしてもほとんど返信してくれないし、心配したんだから!」
憤慨しながらこちらに一歩近づいてくる。と同時に俺は一歩後ろへ下がる。
「全然連絡来ないから心配して来てみれば……、何よコレ! 聞いてないわよ! しかも人が心配している間に彼女なんて作ってるし!!」
二本の歯ブラシを見せつけるように突きつけて憤慨しているさくらに、俺は頭を抱えるしかなかった。
フィアがこの場にいなくてよかった……。
成り行きで婚約者とやらになってしまったが、そんなことを暴露された日にはさくらに犯罪者呼ばわりされかねない。いや絶対にされる。
あれから紹介された店舗をいくつか回った後、王城近くの大通りのやや裏手にある空き家に決めた。
三階建ての石造りの建物だったが、決め手になったのは地下室と風呂があったことだ。
庭もそこそこ広く、その分一般的な家の値段としては値が張ったが、そこは資金力にモノを言わせて賃貸ではなく、金貨百五十枚、千五百万ルクスでの買取となった。
ギルドに戻り引き渡しと同時に店舗として商人ギルドに登録し、そのまま証書を持って何度か訪れた城門衛兵詰所へと行くとさっそく人材を紹介された。
「ほうほう、あんたがマコト殿でっか。わしはアルブレイム・サイレンっちゅうもんです。いやー、こんなわしを頼ってくれるなんておおきに!
いやー、ホンマに助かりましたわ。仕事なくて困っとったさかい、頑張らしてもらいます」
饒舌に関西弁を操るおっちゃんだった。
なんでも商人の家に生まれた退役軍人で暇を持て余していたとかなんとか。おい、国王からの紹介文というのに内容がテキトーだな。大丈夫かこのオッサン。
「あ、ああ、よろしくお願いします」
その他仕入れようと思っている雑貨や、店舗兼住居に必要なものの手配を頼み、軽く打ち合わせなどしながらまたお店へと戻る。
「俺はこれから商品の仕入れに出ますんで、お店の方をよろしくお願いします」
「ほいほい、賜りました」
「では二、三日したらまた戻りますので」
鍵と手持ちの金貨十枚百万ルクスを渡して日本の自宅へと一人で戻ったのだった。
そんなわけで今はリビングのソファにお互いが腰かけて相対している状態だ。
「というか家にいたんなら返事くらいしなさいよ!」
にしてもたかが歯ブラシだけでえらい想像豊かに追及してくるもんだな。まあ確かにフィアが使ったやつだけど。予備の歯ブラシ出してきただけなんだけどなぁ……。
「ごめんなさい」
「全く……、なんで連絡してこなかったのよ?」
ちょっとは落ち着いたのだろうか。さくらが改めて連絡不備の理由を確認してきた。
「いやぁ、スマホ家に置いたまま出かけちまったからな」
俺の言葉にジト目を向けて怪しむさくら。
「途中一度だけメールあったじゃない」
「一時帰宅したんだよ。……んでまたスマホ忘れて出ちまった」
「むぅ……。結局どこ行ってたの?」
納得がいかない様子でむくれているが、とぼけた俺が素直にしゃべらないことは知っているので次の話題へ進めるさくら。むしろその次のほうが重要なのは俺もさくらもわかっているからこそだが。
「あーっとだな……」
いつまでも誤魔化せるもんでもないが、とっさにどう誤魔化したらいいかも思い浮かばない。
なにしろ妹なのだ。もうこの世にただ一人となってしまった家族だ。隠し事もできればしたくない。
「ちょっと……、言えないことなの? お兄ちゃん」
いつまでも黙ったままの俺を不審に思ったのか、不機嫌だった顔がさらに不機嫌になっていく。
「いや……、そういうわけじゃないんだけど……」
「じゃあなんなのよ」
不機嫌顔が泣きそうな顔になったところでこっちがギブアップした。
「……異世界に行ってましたなんて言っても信じないだろ」
しかし信じてもらうしかない。そう思った俺は目立つように両手を何もない上空に掲げると、その場でアイテムボックスから金貨を一枚と、何かの魔物のドロップアイテムである牙を取り出した。
信じられないことを信じてもらうには、目の前で信じられない出来事をやってしまえばいい。
取り出した二つのアイテムをリビングテーブルの上にそっと置く。
さすがにいきなり空中に現れた物体に驚愕の表情を見せるさくら。
「お、おお、お兄ちゃん……、魔法使いだったの!?」
ここは日本にある我が家である。
モンスターズワールドの世界から帰ってきて着替えてからリビングに足を踏み入れると、目の前には歯ブラシを片手に一本ずつ握りしめた妹のさくらが鬼の形相で仁王立ちしていた。
「お、おう、……久しぶりだな。帰ってくるなら連絡くらいしてくれればよかったのに……」
あまりにも唐突なさくらの出現で戸惑った俺は、さらに地雷を踏み抜く言葉を発していることに気づいていない。
「はあっ!? 何度も連絡したに決まってるでしょ! 電話には出ないしメールしてもほとんど返信してくれないし、心配したんだから!」
憤慨しながらこちらに一歩近づいてくる。と同時に俺は一歩後ろへ下がる。
「全然連絡来ないから心配して来てみれば……、何よコレ! 聞いてないわよ! しかも人が心配している間に彼女なんて作ってるし!!」
二本の歯ブラシを見せつけるように突きつけて憤慨しているさくらに、俺は頭を抱えるしかなかった。
フィアがこの場にいなくてよかった……。
成り行きで婚約者とやらになってしまったが、そんなことを暴露された日にはさくらに犯罪者呼ばわりされかねない。いや絶対にされる。
あれから紹介された店舗をいくつか回った後、王城近くの大通りのやや裏手にある空き家に決めた。
三階建ての石造りの建物だったが、決め手になったのは地下室と風呂があったことだ。
庭もそこそこ広く、その分一般的な家の値段としては値が張ったが、そこは資金力にモノを言わせて賃貸ではなく、金貨百五十枚、千五百万ルクスでの買取となった。
ギルドに戻り引き渡しと同時に店舗として商人ギルドに登録し、そのまま証書を持って何度か訪れた城門衛兵詰所へと行くとさっそく人材を紹介された。
「ほうほう、あんたがマコト殿でっか。わしはアルブレイム・サイレンっちゅうもんです。いやー、こんなわしを頼ってくれるなんておおきに!
いやー、ホンマに助かりましたわ。仕事なくて困っとったさかい、頑張らしてもらいます」
饒舌に関西弁を操るおっちゃんだった。
なんでも商人の家に生まれた退役軍人で暇を持て余していたとかなんとか。おい、国王からの紹介文というのに内容がテキトーだな。大丈夫かこのオッサン。
「あ、ああ、よろしくお願いします」
その他仕入れようと思っている雑貨や、店舗兼住居に必要なものの手配を頼み、軽く打ち合わせなどしながらまたお店へと戻る。
「俺はこれから商品の仕入れに出ますんで、お店の方をよろしくお願いします」
「ほいほい、賜りました」
「では二、三日したらまた戻りますので」
鍵と手持ちの金貨十枚百万ルクスを渡して日本の自宅へと一人で戻ったのだった。
そんなわけで今はリビングのソファにお互いが腰かけて相対している状態だ。
「というか家にいたんなら返事くらいしなさいよ!」
にしてもたかが歯ブラシだけでえらい想像豊かに追及してくるもんだな。まあ確かにフィアが使ったやつだけど。予備の歯ブラシ出してきただけなんだけどなぁ……。
「ごめんなさい」
「全く……、なんで連絡してこなかったのよ?」
ちょっとは落ち着いたのだろうか。さくらが改めて連絡不備の理由を確認してきた。
「いやぁ、スマホ家に置いたまま出かけちまったからな」
俺の言葉にジト目を向けて怪しむさくら。
「途中一度だけメールあったじゃない」
「一時帰宅したんだよ。……んでまたスマホ忘れて出ちまった」
「むぅ……。結局どこ行ってたの?」
納得がいかない様子でむくれているが、とぼけた俺が素直にしゃべらないことは知っているので次の話題へ進めるさくら。むしろその次のほうが重要なのは俺もさくらもわかっているからこそだが。
「あーっとだな……」
いつまでも誤魔化せるもんでもないが、とっさにどう誤魔化したらいいかも思い浮かばない。
なにしろ妹なのだ。もうこの世にただ一人となってしまった家族だ。隠し事もできればしたくない。
「ちょっと……、言えないことなの? お兄ちゃん」
いつまでも黙ったままの俺を不審に思ったのか、不機嫌だった顔がさらに不機嫌になっていく。
「いや……、そういうわけじゃないんだけど……」
「じゃあなんなのよ」
不機嫌顔が泣きそうな顔になったところでこっちがギブアップした。
「……異世界に行ってましたなんて言っても信じないだろ」
しかし信じてもらうしかない。そう思った俺は目立つように両手を何もない上空に掲げると、その場でアイテムボックスから金貨を一枚と、何かの魔物のドロップアイテムである牙を取り出した。
信じられないことを信じてもらうには、目の前で信じられない出来事をやってしまえばいい。
取り出した二つのアイテムをリビングテーブルの上にそっと置く。
さすがにいきなり空中に現れた物体に驚愕の表情を見せるさくら。
「お、おお、お兄ちゃん……、魔法使いだったの!?」
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