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第三章
鑑定結果
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「えーっと、フィア? そんなにくっつかれると動けないんだけど……」
自宅に戻ったと同時になぜかフィアが俺の腕に絡みついてきたのだ。
しばらくフィアと離れてから、距離が近くなったような気がする。……いや、近くなった。一体何があったんだろうか……。
なんにしろこのままでは動けないのでやんわりと離れるように言ってみたのだが。
「……はい」
しょんぼりと表情を沈ませて腕を離してくれるが、手は握られたままだ。
「手は、繋いでいていいですか?」
破壊力抜群の上目遣いでお願いされると断れるわけがない。
「あ、ああ……、かまわないよ」
フィアの変化に戸惑いはあるが、悪い気はしない。悪化するよりはいいだろう。
「それにしても、フィアは俺に付いてきてよかったのか?」
そうなのだ。昼食のあとフィアも一緒に店舗までやってきて、そのままこっちに付いてきたのだった。
一応城からお店までは目立たないように配慮して馬車で来たのだが、逆に目立っている気がしないでもなかった。
それに婚約発表のための準備とやらにフィアは必要ではなかったのだろうか。政治的な駆け引きはよくわからないが、なんとなくそう思ったので聞いてみる。
「えーっと……、それは……」
急に言葉を濁すフィア。どうやらダメらしい。
俯いて肩を震わせているが、しばらくしてキリッとこちらに顔を向ける。
頬を染めて潤んだ瞳で見つめられても凛々しさ半減どころか、可愛いさぶっちぎりである。
「……だって、あっちの世界だとあまりマコトと一緒にいられませんから……」
ああもう! 何可愛い事言っちゃってくれますかねこの娘は!
思わずギュッと抱きしめそうになってしまった! まあ手を握られていたからうまく体が動かなかったというのが正しいけど。
「そっか」
頬を緩ませて握られていない反対側の手でフィアの頭をポンポンとしてやると、ぎりぎりで保っていたキリッとした表情が緩んだ。
ああ、もう俺はダメかもしれない。このままずるずる行くとフィアから離れられなくなりそうだ。
……いやいや、落ち着け俺。「行き遅れになりたくない」という理由だけで俺と一緒にいるというのであれば、それは思い留めさせてあげなければならない……はずだ。……たぶん。
たまたま近くにいたのが俺だったから、というのは何かもやもやするのだ。
「とりあえずフィアがこっちで生活できるように買い物にでも行くか……」
「――はいっ!」
□■□■□■
生活必需品をそろえて落ち着けるようになったのはあれから二日後だ。今は昼食を終えたあと、ダイニングテーブルでまったりしているところだ。
日常的にこちらの世界での常識や道具などの説明をフィアにはしているが、まだまだ足りない。
連れて歩いたりなんぞすればまだおかしな質問やリアクションを取ってくれるときがある。まぁそれはそれで面白かったりするんだが。
「マコト……、すまほはまだですか……」
というわけでスマホを買ってあげることにはしたんだが、まだ持たせるわけにはいかなかった。
なにしろ前科がついてしまったのだ。むしろ気軽に自分のスマホを貸してしまった俺のせいでもあるのだが……。
まさかそうと知らずにゲームで課金アイテムを大量購入してしまうとは思わなかった……。
「まだダメだね」
ここはどんなに可愛い顔でお願いされても断固として譲ることはできないところだ。
一瞬だけ悲しそうな表情になるがすぐに気を取り直して胸の前で両の拳を握りしめる。
「うー、がんばりますっ!」
「がんばってね」
昨日から何度か同じやり取りを行っているのである程度耐性ができている。こんなことに屈する俺ではない。
わけのわからない決意をしていると不意にスマホが鳴った。
「あ、マコト! すまほが鳴ってるよ!」
自分の物でもないのに俺のスマホが鳴るのを嬉しそうに知らせてくるフィア。
自宅にいるときは大抵スマホは自室に放置している俺ではあるが、フィアに事あるごとに「スマホは携帯しておかないといけないでしょ」と、俺が教えた使い方通りに注意してくる。
普段放置しているだけあってそう頻繁に呼び出し音を出すわけではないのだが、スマホに表示された相手の名前を見て納得する。
「へいへい。今出ますよ。――もしもし」
『お、誠か。ちゃんと生きてるな』
いつもの挨拶をするのは小太郎だ。たまには他に言うことないのかな。
「ちゃんと生きてるよ。で、連絡が来たってことは、もしかして換金できた?」
『あー、いや、まあ金貨の話なんだが、換金はまだだ』
「ありゃ」
『だけど鑑定結果が出たよ』
「そうなのか。で、どうだった?」
『いや、結果が出た連絡しか受けてない。
……どうだ、一緒に聞きに行かないか?』
ちらりとダイニングテーブルの向かいに座ってこちらをキラキラした瞳で見つめてくるフィアを見返す。
うーん。絶対付いて来るって言うよね。まあもともとフィアには小太郎の仕事を手伝ってもらおうと思ってたからいいかな……。
自分で仕事をするとは言ってたけど、コンビニの店員とかが務まるとは思えないし。
「おう、わかった。時間はいつでもいいぞ」
とりあえず換金できないと商品の仕入れもできないしね。
『じゃあ今から事務所に来てくれるか』
「了解」
『んじゃまた』
電話を切ると、相変わらずキラキラした瞳でこっちを見つめるフィアが、両肘をテーブルに付けて両手を組んでいる。
「フィア、今から出かけるぞ」
「はいっ!」
そして満面の笑顔で元気よく返事をするのだった。
自宅に戻ったと同時になぜかフィアが俺の腕に絡みついてきたのだ。
しばらくフィアと離れてから、距離が近くなったような気がする。……いや、近くなった。一体何があったんだろうか……。
なんにしろこのままでは動けないのでやんわりと離れるように言ってみたのだが。
「……はい」
しょんぼりと表情を沈ませて腕を離してくれるが、手は握られたままだ。
「手は、繋いでいていいですか?」
破壊力抜群の上目遣いでお願いされると断れるわけがない。
「あ、ああ……、かまわないよ」
フィアの変化に戸惑いはあるが、悪い気はしない。悪化するよりはいいだろう。
「それにしても、フィアは俺に付いてきてよかったのか?」
そうなのだ。昼食のあとフィアも一緒に店舗までやってきて、そのままこっちに付いてきたのだった。
一応城からお店までは目立たないように配慮して馬車で来たのだが、逆に目立っている気がしないでもなかった。
それに婚約発表のための準備とやらにフィアは必要ではなかったのだろうか。政治的な駆け引きはよくわからないが、なんとなくそう思ったので聞いてみる。
「えーっと……、それは……」
急に言葉を濁すフィア。どうやらダメらしい。
俯いて肩を震わせているが、しばらくしてキリッとこちらに顔を向ける。
頬を染めて潤んだ瞳で見つめられても凛々しさ半減どころか、可愛いさぶっちぎりである。
「……だって、あっちの世界だとあまりマコトと一緒にいられませんから……」
ああもう! 何可愛い事言っちゃってくれますかねこの娘は!
思わずギュッと抱きしめそうになってしまった! まあ手を握られていたからうまく体が動かなかったというのが正しいけど。
「そっか」
頬を緩ませて握られていない反対側の手でフィアの頭をポンポンとしてやると、ぎりぎりで保っていたキリッとした表情が緩んだ。
ああ、もう俺はダメかもしれない。このままずるずる行くとフィアから離れられなくなりそうだ。
……いやいや、落ち着け俺。「行き遅れになりたくない」という理由だけで俺と一緒にいるというのであれば、それは思い留めさせてあげなければならない……はずだ。……たぶん。
たまたま近くにいたのが俺だったから、というのは何かもやもやするのだ。
「とりあえずフィアがこっちで生活できるように買い物にでも行くか……」
「――はいっ!」
□■□■□■
生活必需品をそろえて落ち着けるようになったのはあれから二日後だ。今は昼食を終えたあと、ダイニングテーブルでまったりしているところだ。
日常的にこちらの世界での常識や道具などの説明をフィアにはしているが、まだまだ足りない。
連れて歩いたりなんぞすればまだおかしな質問やリアクションを取ってくれるときがある。まぁそれはそれで面白かったりするんだが。
「マコト……、すまほはまだですか……」
というわけでスマホを買ってあげることにはしたんだが、まだ持たせるわけにはいかなかった。
なにしろ前科がついてしまったのだ。むしろ気軽に自分のスマホを貸してしまった俺のせいでもあるのだが……。
まさかそうと知らずにゲームで課金アイテムを大量購入してしまうとは思わなかった……。
「まだダメだね」
ここはどんなに可愛い顔でお願いされても断固として譲ることはできないところだ。
一瞬だけ悲しそうな表情になるがすぐに気を取り直して胸の前で両の拳を握りしめる。
「うー、がんばりますっ!」
「がんばってね」
昨日から何度か同じやり取りを行っているのである程度耐性ができている。こんなことに屈する俺ではない。
わけのわからない決意をしていると不意にスマホが鳴った。
「あ、マコト! すまほが鳴ってるよ!」
自分の物でもないのに俺のスマホが鳴るのを嬉しそうに知らせてくるフィア。
自宅にいるときは大抵スマホは自室に放置している俺ではあるが、フィアに事あるごとに「スマホは携帯しておかないといけないでしょ」と、俺が教えた使い方通りに注意してくる。
普段放置しているだけあってそう頻繁に呼び出し音を出すわけではないのだが、スマホに表示された相手の名前を見て納得する。
「へいへい。今出ますよ。――もしもし」
『お、誠か。ちゃんと生きてるな』
いつもの挨拶をするのは小太郎だ。たまには他に言うことないのかな。
「ちゃんと生きてるよ。で、連絡が来たってことは、もしかして換金できた?」
『あー、いや、まあ金貨の話なんだが、換金はまだだ』
「ありゃ」
『だけど鑑定結果が出たよ』
「そうなのか。で、どうだった?」
『いや、結果が出た連絡しか受けてない。
……どうだ、一緒に聞きに行かないか?』
ちらりとダイニングテーブルの向かいに座ってこちらをキラキラした瞳で見つめてくるフィアを見返す。
うーん。絶対付いて来るって言うよね。まあもともとフィアには小太郎の仕事を手伝ってもらおうと思ってたからいいかな……。
自分で仕事をするとは言ってたけど、コンビニの店員とかが務まるとは思えないし。
「おう、わかった。時間はいつでもいいぞ」
とりあえず換金できないと商品の仕入れもできないしね。
『じゃあ今から事務所に来てくれるか』
「了解」
『んじゃまた』
電話を切ると、相変わらずキラキラした瞳でこっちを見つめるフィアが、両肘をテーブルに付けて両手を組んでいる。
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「はいっ!」
そして満面の笑顔で元気よく返事をするのだった。
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