本からはじまる異世界旅行記

m-kawa

文字の大きさ
85 / 153
第三章

モンスターズワールド -納入-

しおりを挟む
「で、他にあった要望ってのは?」

 店の奥でガツガツと飯を食う野良猫を見ながらアルブレイムに続きを促す。
 やたらとニャーニャーうるさいと思ったらどうも腹が減ってたようだ。すごい勢いで貪り食っている。

「ええ、あとは追加注文をいくつか受けてます。ガラス食器にLEDライトと、あとは意外ととらんぷっちゅーカードゲームが人気ですな」

 いくつかトランプでの遊び方を書いた解説書を付けたのが功を奏したのだろうか。
 トランプ以外のゲームも人気があるとのことだったが、トランプだけは群を抜いていた。

「あとは、遠回しにやけど商品の仕入れ先を聞き出そうとする客もおったね」

 暗黙のルールとしてそこは聞いちゃダメなところだが、物がモノだけに思わず聞いてしまったのだろう。

「要望と言ったらそんなところですわ」

「ああ、ありがとう。要望は次回の仕入れのときにでも取り入れるかな……。
 んじゃさっそく、今回仕入れた商品だけど」

 開店前の店舗を見渡すが、仕入れた商品を広げるスペースはないようだ。
 仕入れた商品を全部出したらどれほどの量になるのか自分でも把握できていない。

「……ここだと狭いですね」

 一緒に仕入れをしていたフィアがそう口にする。
 前回は少量しか仕入れていないため、店内にはこの世界にある既存商品でほとんどが埋められている。
 値段設定もしていない今回の商品はまずは倉庫代わりにしている地下に置くことにした。
 三人連れだって、先ほど出てきた階段を下り、こちらの世界へと来た小部屋とは別の大部屋へと入る。

 部屋の奥へとやってくると、アイテムボックスから取り出すと、備え付けの棚へと並べていき、段ボールで仕入れたものはそのまま地面へと置いていく。
 ひたすら並べていくと、アルブレイムの表情がだんだんと引き攣っていくのがわかる。

「か、会頭殿……。一体どんだけ出てくるんや……」

 アルブレイムは俺がアイテムボックスというスキルを持っていることは知っているが、どれだけの容量が入るのかまでは知らない。

「これで最後かな?」

 広い大部屋の半分ほどが埋まってしまった。もともとこの世界既存の商品はメインにするつもりはなかったので、倉庫内には置いていない。

「こら、どういう商品なんか覚えるほうも大変やな……」

 アルブレイムに言われて初めて気が付いた。つまり俺は商品について全部説明しないといけないわけで。
 フィアも何に使うかわからない商品も多いだろう。

「会頭殿。他にも店員が欲しいところやな……」

「……そうだな。信用できそうな人物がいれば頼む」

「おおきに。さすがにこんなに商品が大量に入るとは思ってなかったわ……」

 さて、商品の説明をしますかね。……でないと売れないから。



□■□■□■



「マコト、お疲れ様です」

 使用の許可をもらった城のプライベートエリアの一室にて、フィア自らがお茶を入れてくれていた。
 侍女も待機しているので、呼べばお茶くらい入れてくれるのだが、このところ家事類は率先して自らやっていた。

「ああ……、ありがとう」

 久々に帰ってきたのだからフィアも両親に会うために戻ってきたというわけである。
 仕入れた商品も一種類ずつ全部見本のために持参している。
 時間はもう夕方になろうとしていた。
 そんな感じでくつろいでいる俺たちの部屋に、扉をノックする音が響き渡る。

「はい、どうぞ」

「失礼します」

 フィアが返事をすると、扉を開けて入ってきたのは五十代ほどの女性であった。
 廊下を歩いているとすれ違う侍女と同じ服装ではあるが、その雰囲気にはどこか貫禄がある。

「――リア!」

 入ってきた女性の姿を見た瞬間、フィアは飲んでいたお茶のカップをテーブルに置くと立ち上がり、勢いよくリアと呼んだ女性へと向かった。

「お久しぶりでございます。フィアリーシス様」

「ええ、リアも変わりないようで」

 フィアに接するその顔は慈愛に満ち溢れており、娘に対する母親のようでもある。
 ああ、この人がフィアが言っていた侍女頭かな。
 入ってきたときは貫禄があって、さすが侍女頭かとも思ったけど、フィアの前では乳母をやっていたときの雰囲気が出るんだろうか。
 そんなことを考えているとリアと呼ばれた女性がこちらに向かって挨拶をするところだった。

「お初にお目にかかります。侍女頭を務めておりますフローリアと申します。以後お見知りおきを」

 深くお辞儀をすると、何も見逃すまいとするかのように視線が鋭くなる。
 乳母をやっていたということなら、娘と言ってもいいフィアの婚約者がどんな人物なのか気になるところだろう。
 こっちも挨拶はしておいたほうがいいとは思っていたからちょうどいい。
 ゆっくりと立ち上がるとフィアの隣まで歩いていく。

「これはご丁寧に。マコト・サワノイと申します。こちらこそよろしくお願いします」

「ではやはりあなたがサワノイ商会の……!」

 自己紹介とともに驚かれるが、いったい何に対しての驚きだろうか。

「あの皮むき器という道具はとても便利に使わせていただいておりますよ」

 あ、そこでしたか。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

【1/20本編堂々完結!】自力で帰還した錬金術師の爛れた日常

ちょす氏
ファンタジー
「この先は分からないな」 帰れると言っても、時間まで同じかどうかわからない。 さて。 「とりあえず──妹と家族は救わないと」 あと金持ちになって、ニート三昧だな。 こっちは地球と環境が違いすぎるし。 やりたい事が多いな。 「さ、お別れの時間だ」 これは、異世界で全てを手に入れた男の爛れた日常の物語である。 ※物語に出てくる組織、人物など全てフィクションです。 ※主人公の癖が若干終わっているのは師匠のせいです。 ゆっくり投稿です。

最弱スライムに転生した俺、捕食スキルで無限進化していたら魔王軍すら支配してました

チー牛Y
ファンタジー
残業中に倒れた俺が次に目を覚ました時、なぜか異世界で最弱モンスターのスライムになっていた。 完全に詰んだ、戦う力もない。そう思っていた時、俺には一つだけ、とんでもないスキルがあった。 【捕食】 それは、倒した相手を取り込み、能力・スキル・力のすべてを奪うチート能力だった。 ゴブリンを食べれば腕力を獲得。 魔物を食べれば新スキルを習得。 レベルは爆速で上がり、進化は止まらない。 森の魔物を支配し、ダンジョンを制圧し、気づけば俺は魔物たちの王になっていた。 やがてその力は魔王軍すら飲み込み、世界の勢力図を塗り替えていく。 これは―― 最弱スライムから始まる、無限進化の成り上がり無双譚。

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。 ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。 そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。 問題は一つ。 兄様との関係が、どうしようもなく悪い。 僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。 このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない! 追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。 それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!! それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります! 5/9から小説になろうでも掲載中

どうやら俺は、魔王を倒した英雄の両親より強いらしい。~オリハルコンを斬ってくっつけたら試験無しで王立学園に入学、いろいろやらかすハメに

試運転中
ファンタジー
山を割るほどに剣を極めたおとん「ケン」と、ケガなど何でも治してしまうおかん「セイ」。 そんな二人に山で育てられた息子「ケイ」は、15歳の大人の仲間入りを機に、王都の学園へと入学する。 両親の素性すらも知らず、その血を受け継いだ自分が、どれほど常軌を逸しているかもわからず。 気心の知れた仲間と、困ったり楽しんだりする学園生活のはずが…… 主人公最強だけど、何かがおかしい!? ちょっぴり異色な異世界学園ファンタジー。

ポンコツと蔑まれた冒険者は最強クランをつくる

ぽとりひょん
ファンタジー
エアハルトは、幼なじみのエルメンヒルトを追ってダンジョンの町「ゴルドベルク」で冒険者になろうとする。しかし、彼のアビリティを見た人たちは冒険者を諦め村へ帰るように説得する。彼には魔力がなかった。魔力がなければ深層で魔物と戦うことが出来ないのだ。エアハルトは諦めきれずエルメンヒルトと肩を並べて冒険するため、冒険者となってポンコツと蔑まれながら、ソロでダンジョンに挑み始める。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

半世紀の契約

篠原皐月
恋愛
 それぞれ個性的な妹達に振り回されつつ、五人姉妹の長女としての役割を自分なりに理解し、母親に代わって藤宮家を纏めている美子(よしこ)。一見、他人からは凡庸に見られがちな彼女は、自分の人生においての生きがいを、未だにはっきりと見い出せないまま日々を過ごしていたが、とある見合いの席で鼻持ちならない相手を袖にした結果、その男が彼女の家族とその後の人生に、大きく関わってくる事になる。  一見常識人でも、とてつもなく非凡な美子と、傲岸不遜で得体の知れない秀明の、二人の出会いから始まる物語です。

処理中です...