本からはじまる異世界旅行記

m-kawa

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第四章

倉科瑞樹

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 自宅に戻ると夕日が赤く染まる時間になっていた。
 あれから宿の部屋に行き休憩していたのだが、さすがに異世界生活一日目は疲れたのか、瑞樹は一人部屋にこもるとすぐに寝てしまった。
 それを確認したところで俺たちはこうして日本へと帰ってきたのだ。

「まだ一日しかたってないけど、疲れた……」

 フィアがへたり込みながらベッドへと腰かける。

「あー、まあいろいろありすぎたな。特にあの胡散臭い神様とか」

 俺は電源が付いたままのパソコンの前に座り、マウスを操作すると検索窓に『倉科瑞樹』と打ち込む。
 果たして出てきた結果は予想した通りのものだった。
 キサラギ高校で謎の事件が発生し、生徒が一名死亡したという内容だ。うーん、やっぱ死んだことになってんのね……。
 スマホでも同じサイトを開いてスクリーンショットを撮っておく。

「にしてもやっぱりこの高校って何かあんのかね……」

 何となしに検索窓に『キサラギ高校 事件』と打ち込んでみる。
 出てきたのは今回の瑞樹の事件と、以前の明と穂乃果の行方不明事件の記事ばっかりだった。

「ああ、そりゃ直近の事件がトップにくるよな……」

 スクロールするも検索結果の内容は特に代わり映えしない。次のページへいっても変わらない内容に俺は調べるのを止めた。

「何か見つかった?」

 フィアが俺の肩越しにパソコンのモニタを覗き込んで尋ねてくる。

「いや、最近二つも事件があったせいでそれが目立ってるな。調べるならもうちょっと時間のあるときじゃないと難しいかも」

「そっか」

 それだけ呟くとベッドに座りなおすかと思いきや、部屋の外へと向かって歩いていく。

「ちょっとお風呂の用意してくるね」

「おう」

 この一か月の生活でフィアも毎日風呂に入る習慣に慣れてきたのだろう。俺もまあ、入らない日があるとなんとなく落ち着かないんだが。
 これからまた異世界に戻るとなるといつ風呂に入れるかわからんからな。
 フィアが風呂の用意をしている間に、俺も瑞樹に日本へ帰れることの証拠をいろいろと用意するか。
 さっきまで持ってなかった自分自身の記事入りスマホを見せるだけでも十分とは思うが、念のためだ。

「ただいま」

 あれこれ考えながら用意しているとフィアが戻ってきた。

「おかえり」

「もう用意できてるから先に入ってきていいよ」

「そうか。ありがとう。じゃあお先に行ってくる」

「うん。私は部屋にいるから、上がったら教えてね」

「おう」

 そうして二人で俺の部屋を出るとフィアはさくらの部屋へ、俺は風呂へと向かった。



「はぁ~、いいお湯だった」

 リビングでのんびりしているとフィアが風呂から上がってきた。
 風呂上がりでピンク色に染まった頬に寝間着姿のフィアは非常に色っぽい。
 優雅な手つきで冷蔵庫を開けると、冷えた麦茶をコップに注いで飲んでいる。

「これからどうするの?」

 俺の座るテーブルに何もないのを確認すると、もうひとつコップを取り出して麦茶を注いで俺に差し出す。

「ありがとう。
 そうだな……。とりあえず一眠りして向こうに戻るとして、瑞樹に日本に戻る気はあるか聞いてみるかな」

「もし戻らないって言ったら?」

「そんときはそんときだ。一週間くらいなら俺たちも向こうにいるつもりだし、それ以降でもちょくちょく様子を見に行ってもいいと思う」

「うん。わかった」

「ま、気楽にいこう」

 リビングのテレビでは瑞樹の不審死のニュースがひたすらに流れている。
 通学中に校門をくぐったところで、太陽が降り注ぐいい天気だったにもかかわらず、落雷のような現象が起こったそうな。
 辺りは一瞬ではあるが真っ白になったようで、その様子は多数の生徒が目撃している。
 が、そんな現象の後にもかかわらず、瑞樹には傷一つなかったそうだ。それだけ見ると胡散臭い神様が嘘をついたように思うが、そんなことはなかった。
 辺り一面真っ白になったせいで、学校の校門に運悪くトラックが突っ込んだそうだ。

 ――少なくともニュースではそう告げられていた。

「こうやってニュースであの神様がやっちゃった失敗を見ると、なんだかやるせないね……」

 テレビを見ながらフィアが悲しげに目を伏せる。
 確かに、こんな大ごとになった事件が「間違えました」程度でやらかされたと思うと腹が立ってきた。
 といっても相手は胡散臭くても神である。どうすることもできない。

 というかすでに謝罪を受け、転生という形でまた人生を歩むことができるようになっているのだが、どうにも気持ちが納得できなかった。
 生まれ変わった本人と対面したあとで事故の真相を知るという逆順をたどったせいだろうか。被害者の写真が瑞樹と一致しないのもあるかもしれない。

「ああ……、だけどもうどうしようもない。
 本人がそれほど落ち込まずに前向きな姿勢なのが救いだな」

 しばらく二人黙ってテレビを見ていたが、ニュースが終わったところを境にしてそれぞれの部屋へ戻り眠りについた。
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