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第四章
転生者は異世界で何を見る? -いいお宿-
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「すまん……。そういうつもりはなかったんだが、まさかワイルドボアがあんな大物で、しかも傷なしとは思わなかったんだよ」
あんなに高額になるとは思ってなかったと主張するデクスト。だいたい持ち込まれるワイルドボアは小型で傷だらけの、安い金額にしかならないものばっかりだそうだ。
そもそも俺が持ち込んだやつみたいな大物は、そこらの冒険者が持ってる収納鞄には入らないそうな。
高性能な収納鞄になるとそうでもないそうだが、そんなレアアイテムを持ってる冒険者はワイルドボアなんてわざわざ売りに来たりしないと。
「はっはっは! まあこうなっちまったもんはしょうがねえ。まぁ何かあったら声かけてくれよ。あの三人組は俺もどうにかしたかったからよ」
苦笑いしながらガングスはそれだけ言うと、片手を上げて去って行った。
「こんなことになっちまったが、ガングスに気に入られたのは幸いだったかもな。
……あれでもランクBの冒険者だ。何かあったらまぁ……、頼ってもいいんじゃないかな」
そんなガングスを見送りながら歯切れの悪い言い方をするデクスト。
「なんだよそれ。逆に頼りたくなくなる言い方だろうが」
俺がツッコミを入れると瑞樹が一瞬ぶるりと震える。ヤツに手招きされたことでも思い出したんだろうか。
「いやまぁ、悪いヤツではないんだがなぁ……。ちょっと手が早いのがな……」
頬をかきながら苦笑いしているが、話を聞いた瑞樹は顔が引きつっている。元男ではあるが今は女の体だ。
男子高校生が貞操の危機を覚えることなど通常であればありえないだろうが、状況が状況だけに危機感を抱かずにはいられないか。
「ああすまん、さっきも言ったが悪いヤツじゃないんだ。しっかり断れば大丈夫だから安心してくれ」
つまり強引ではあるわけですね。はっきりと断ることが苦手な日本人にはつらいところだ。
いやでもさすがにそれはちゃんと断る……よな? いや断ってくれないと困るんだが。いやなんで俺が困るんだ。どうでもいい……ことはないが、なんとも複雑だ。
引き攣った顔がさらに真っ青になっていく瑞樹を渋面になって眺める。
「で、宿は決まってるのか? まとまった金が入っただろうし、詫び……というわけじゃねーが、紹介してやろうか?」
む、そういやそうだ。今晩の宿のことをすっかり忘れてた。
昨日の宿もデクストの紹介だし、今回も頼むか。
フィアと瑞樹を見回してお互い頷くと。
「お願いします!」
話題を変えるかのように瑞樹が勢いよく返事していた。
紹介してもらった宿は冒険者ギルドから歩いて五分ほどの場所にあった。
大通りに面しており、木造二階建てが多い街では珍しく四階建ての建物になっており目立っていた。
そしてまとまったお金が入って薦められるだけあり、そこそこ豪勢な宿であった。一泊二食付きで一人6000リル。最初に紹介された宿の六倍である。
女将さんに怪訝な顔をされながらも、一人部屋を三つ頼み、夕食後の今は俺の部屋に三人が集合して今後を話し合っている。
ベッドにフィアと瑞樹が腰かけ、部屋に一つだけある椅子に座っているのは俺だ。広くはないがさすが高いだけはある宿だ。一人部屋に三人入ってもそこまで圧迫感はない。
部屋のつくりもしっかりしており、隙間風が入ってくることもないだろう。ただし、やはり風呂がなかったのは残念ではある。まぁ期待するだけ無駄でもあるが。
「で、本当に今夜日本に戻るんだな?」
念を押すように瑞樹に確認すると、ゆっくりと頷いて肯定が返ってきた。
「うん。一度戻って状況を確認したいかな……。それに……、ちょっとこっちにいるといろんなことがありすぎるから……」
まぁ確かにそれは否定しない。異世界に来て驚くことがないことなんてあるはずがないのだ。
これが自分の知ってるゲームの中であれば「あるある」で終わったんだが、見知らぬ世界であればそんなことはない。むしろ何もかもが見たことないものだらけだろう。
「わかった。たとえ日本に戻ってもこっちにはまた戻ってこれるし、まぁゆっくりしたらいいんじゃないかな」
――実家に帰れるかどうかはわからないけど。
という言葉が出かかったがなんとか飲み込む。
そういう意味ではむしろ日本のほうが落ち着かない可能性もある。
こればっかりは本人にしかわからないし、例えそれを話したところで実際に本人が体験してみないとわからないだろう。
実際に昨晩、日本に帰って瑞樹のニュースを見たが、中途半端に事情を知っているだけにやるせなさを感じたばっかりだ。
これが本人になればどうなるかはわからない。
日本に帰ってすぐ、実家に顔を出すという行動をとるかどうかはわからない。
ましてや性別が変わったどころか、人間という種族ですらなくなっている。両親に会って息子だと主張するのかどうかはわからないが、主張したとして信じてくれるかどうかわからないのだ。
さて、日本に――まずは俺の自宅に帰ってからどうなることやら。
あんなに高額になるとは思ってなかったと主張するデクスト。だいたい持ち込まれるワイルドボアは小型で傷だらけの、安い金額にしかならないものばっかりだそうだ。
そもそも俺が持ち込んだやつみたいな大物は、そこらの冒険者が持ってる収納鞄には入らないそうな。
高性能な収納鞄になるとそうでもないそうだが、そんなレアアイテムを持ってる冒険者はワイルドボアなんてわざわざ売りに来たりしないと。
「はっはっは! まあこうなっちまったもんはしょうがねえ。まぁ何かあったら声かけてくれよ。あの三人組は俺もどうにかしたかったからよ」
苦笑いしながらガングスはそれだけ言うと、片手を上げて去って行った。
「こんなことになっちまったが、ガングスに気に入られたのは幸いだったかもな。
……あれでもランクBの冒険者だ。何かあったらまぁ……、頼ってもいいんじゃないかな」
そんなガングスを見送りながら歯切れの悪い言い方をするデクスト。
「なんだよそれ。逆に頼りたくなくなる言い方だろうが」
俺がツッコミを入れると瑞樹が一瞬ぶるりと震える。ヤツに手招きされたことでも思い出したんだろうか。
「いやまぁ、悪いヤツではないんだがなぁ……。ちょっと手が早いのがな……」
頬をかきながら苦笑いしているが、話を聞いた瑞樹は顔が引きつっている。元男ではあるが今は女の体だ。
男子高校生が貞操の危機を覚えることなど通常であればありえないだろうが、状況が状況だけに危機感を抱かずにはいられないか。
「ああすまん、さっきも言ったが悪いヤツじゃないんだ。しっかり断れば大丈夫だから安心してくれ」
つまり強引ではあるわけですね。はっきりと断ることが苦手な日本人にはつらいところだ。
いやでもさすがにそれはちゃんと断る……よな? いや断ってくれないと困るんだが。いやなんで俺が困るんだ。どうでもいい……ことはないが、なんとも複雑だ。
引き攣った顔がさらに真っ青になっていく瑞樹を渋面になって眺める。
「で、宿は決まってるのか? まとまった金が入っただろうし、詫び……というわけじゃねーが、紹介してやろうか?」
む、そういやそうだ。今晩の宿のことをすっかり忘れてた。
昨日の宿もデクストの紹介だし、今回も頼むか。
フィアと瑞樹を見回してお互い頷くと。
「お願いします!」
話題を変えるかのように瑞樹が勢いよく返事していた。
紹介してもらった宿は冒険者ギルドから歩いて五分ほどの場所にあった。
大通りに面しており、木造二階建てが多い街では珍しく四階建ての建物になっており目立っていた。
そしてまとまったお金が入って薦められるだけあり、そこそこ豪勢な宿であった。一泊二食付きで一人6000リル。最初に紹介された宿の六倍である。
女将さんに怪訝な顔をされながらも、一人部屋を三つ頼み、夕食後の今は俺の部屋に三人が集合して今後を話し合っている。
ベッドにフィアと瑞樹が腰かけ、部屋に一つだけある椅子に座っているのは俺だ。広くはないがさすが高いだけはある宿だ。一人部屋に三人入ってもそこまで圧迫感はない。
部屋のつくりもしっかりしており、隙間風が入ってくることもないだろう。ただし、やはり風呂がなかったのは残念ではある。まぁ期待するだけ無駄でもあるが。
「で、本当に今夜日本に戻るんだな?」
念を押すように瑞樹に確認すると、ゆっくりと頷いて肯定が返ってきた。
「うん。一度戻って状況を確認したいかな……。それに……、ちょっとこっちにいるといろんなことがありすぎるから……」
まぁ確かにそれは否定しない。異世界に来て驚くことがないことなんてあるはずがないのだ。
これが自分の知ってるゲームの中であれば「あるある」で終わったんだが、見知らぬ世界であればそんなことはない。むしろ何もかもが見たことないものだらけだろう。
「わかった。たとえ日本に戻ってもこっちにはまた戻ってこれるし、まぁゆっくりしたらいいんじゃないかな」
――実家に帰れるかどうかはわからないけど。
という言葉が出かかったがなんとか飲み込む。
そういう意味ではむしろ日本のほうが落ち着かない可能性もある。
こればっかりは本人にしかわからないし、例えそれを話したところで実際に本人が体験してみないとわからないだろう。
実際に昨晩、日本に帰って瑞樹のニュースを見たが、中途半端に事情を知っているだけにやるせなさを感じたばっかりだ。
これが本人になればどうなるかはわからない。
日本に帰ってすぐ、実家に顔を出すという行動をとるかどうかはわからない。
ましてや性別が変わったどころか、人間という種族ですらなくなっている。両親に会って息子だと主張するのかどうかはわからないが、主張したとして信じてくれるかどうかわからないのだ。
さて、日本に――まずは俺の自宅に帰ってからどうなることやら。
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