本からはじまる異世界旅行記

m-kawa

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第四章

通過儀礼

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「へー、そうなんだ……」

「……あんまり驚いてないな」

「いや十分驚いてるよ。でもさ、なんていうか、驚き飽きたというかなんというか。耐性が付いたというか」

 そういえば瑞樹はここ数日驚きっぱなしだったな。もう何が来ても動じなくなったのか。それはそれで面白くないが。
 わざわざスカートに着替えたフィアも、瑞樹の反応には不満そうだ。
 ここ数日で体験した内容を思えば、フィアの言葉をすんなりと信用する基になったのではあるだろうが。

「ふむ。まぁいい。
 そんなわけだから、俺たちがさっきまでいた世界だけじゃなく、他の世界にも行くことができるぞ。そもそもフィアは他の世界出身だからな」

「……それはおれも行っていいのかな?」

 若干考え込みながらそんなことを聞いてくるが、俺としては特に問題はない。

「別にいいんじゃない?」

 俺が頷くと、フィアも特に異論はないようで。
 モンスターズワールドの世界にいる瑞樹を想像するが、問題はないだろう。
 むしろ魔法をもっと覚えてもらって、観光旅行時の移動手段を確立してもらえるとありがたいくらいだ。
 しかしお城でフィアの両親と対面しているところを想像した瞬間、何か背中を冷たい汗が流れるのを感じた気がした。

 ――なんだ今のは。……気のせいかな。

「そ、そうなんだ……」

「まぁまぁ、とりあえず今は難しいことは考えずに、お風呂に入ってきたらどう?」

 動きが止まった俺と、戸惑っている瑞樹にフィアが声を掛ける。

「あぁ……、そうだな。じゃあちょっと行ってくる」



「いやいやいやいや! さすがに……、それは無理だからっ!!」

 風呂から上がってきたことを知らせようと二階にきたのだが、その時ちょうどフィアの部屋から瑞樹の抗議する叫び声が聞こえた。
 何があったのか訝しみながらもフィアの部屋のドアをノックする。

「おーい、どうした? 風呂空いたぞー?」

「はーい! ……じゃあ着替えはそれだから、お風呂まで案内するね」

 元気な返事が返ってきたかと思えば、フィアがドアを開けて部屋から出てくる。

「だからこれは無理だって……! ちょっ、待ってよ!」

 後から出てきた瑞樹は顔を真っ赤にして泣きそうになっている。

「……どうしたんだ?」

「……なっ、なんでもないよ!?」

 慌てて何もないと主張する瑞樹であるがそれは無理な相談だ。どう見ても態度が「何かありました」と言っている。

「ほら、ミズキちゃんも今じゃ立派な女の子なんだから、男物のし、……服はダメだよ?」

 あー、そういうことか? 元男としてはフリフリのかわいい服なんて着れませんってことかな?
 まぁ別に男物でもいいんじゃないかと思うが、フィアにとってはダメなんだろうか。
 しかし何でもない風を装う必要はない気はするが。

「まぁ別に無理やり嫌がる服を着せんでもいいんじゃないか……?」

「ダメに決まってるじゃないですか! これはデリケートな問題だから、マコトは黙ってて!」

 中身の性別と外見を一致させる必要もないと思って軽く瑞樹を擁護してみるが、断固拒否するフィアの言葉が返ってきた。
 反論を許さない剣幕に思わず一歩後ずさる。

「……お、おう、そうか。……まぁ、瑞樹がんばれ」

「……っ!」

 何か言いたそうな顔をしていたが、「何でもない」と言った手前反論することが躊躇われたのだろうか。
 結局何も言わずにフィアに引きずられるようにして瑞樹は階下へと消えていった。

「ふう……、結局なんだったんだろうな……」

 とりあえず自分の部屋で椅子に座って一息つくと、パソコンに向かってキサラギ高校の事件について検索してみる。
 相変わらず検索結果上位に出てくるのは二人の行方不明事件と、一人の死亡事故の記事ばかりだ。
 スクロールしながら次のページへと次々と切り替えていくが、検索結果に変わり映えはしない。
 マウスのスクロールをころころしていると部屋のドアがノックされ、許可を出すとフィアが入ってきた。

「はぁ~」

 疲れた感じで部屋へと入ってくると、ベッドへと腰かけて大きなため息をつくフィア。

「……どうした?」

「ん~、ミズキちゃんの諦めがあまりにも悪くってね……」

 肩をすくめながらまたもため息をつくが、ここは話を掘り下げないでおくことにする。

「そうか」

 俺はまたパソコンに向き直ると、あの高校に他に事件がなかったか検索を再開すると、フィアが後ろから覗き込んできた。

「何か見つかった?」

「いやー、他には何も見つからないなぁ」

「ふーん、そっか。……今度実際にその学校に行ってみる?」

 そんな何気ないフィアのセリフに俺は勢いよく振り返る。
 ……が、思ったよりフィアの顔が近くにあって。

「……あ、うん。……実際に行ってみれば、何かわかるんじゃないかなって……」

 頬を染めてしどろもどろになりながら話を続けるが、語尾がだんだんと小さくなっていた。

「ああ……、そうだな。……機会があれば行ってみるのもいいかもしれないな」
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