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第一部
テンプレ発生?
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「朝食は30フロンだよ」
くっ……、ここでもお金がいるとは……。当たり前だけど。
というわけで昨日の夕飯に続き、今日の朝食も部屋で保存食をむしゃむしゃと食べた。せめて火が使えればスープなんてものも用意できたんだが、そこは仕方がない。お風呂は大事だったのだ。
「よし、じゃあ気を取り直して仕事を探しますか」
ほぼ無一文になってしまったので、ここで稼げなければ野営になる。さすがに宿のベッドは快適だった。いまさら野営に戻りたくはない。
気合を入れて冒険者ギルドへと向かうと、昨日とは違って人であふれていた。朝一で依頼が張り出されるというのは、どこのラノベでも同じらしい。
……しかし。
「ちょっとあそこに突っ込んでいく勇気は出ないな……」
依頼ボードの前は戦場であった。ギルド内での揉め事は禁止なため殴り合いにまでは発展しないが、罵声飛び交う戦場と化していた。
日本人であるただの高校生には敷居が高い。かつ朝からどんな依頼があるのかわかっていない状態で参戦したところで、割のいい依頼を見つけられるとも思えない。
結局依頼が半分ほどになるまでボードの前には立てなかった。
「朝から幸先が悪いわね……」
「うーん。人気のある依頼は討伐系みたいだなー」
どんどんと剥がされていく依頼を遠目から確認する。
カウンターはまだ並んでいるので、空いてきたボード前の依頼を見てみる。
「ん~」
常時依頼の欄には昨日やったFランクの薬草と毒消し草がある。他のFランク採集依頼は軒並み剥がされてしまったあとだ。
一つ上のEランクの常時依頼にはレグルスの実と、薬草花の採取依頼があるようだ。それぞれ200フロンと150フロンだ。Fランクの十倍じゃん。そんなに難しいのか。異空間ボックスにいっぱい入ってるけど……。
とりあえずランクをひとつあげれば今の宿でもいけそうだ。いつまでも手持ちを納品するわけにもいかないから、実際に採集には行ってみないとだけど。
「うーん。手持ちの薬草と毒消し草を放出してちゃっちゃとランク上げちゃおうか?」
「そうねぇ……。さすがにちょっと持ってるものをわざわざ探しに行くのも面倒ね」
そうと決まればカウンターが空いてくるまでもうちょっと待つか。
ほとんどの冒険者は常時依頼だけでEランクになってるのかな。この争奪戦を潜り抜けるのはなかなか難易度が高い気がするぞ。
しばらく待った後、手持ちの薬草を放出してランクを上げた。毒消し草十五束で90フロンになった。
聞いたところによると特にNGなやり方ではないらしい。お金に余裕のある人や、騎士などを引退したすでにある程度実力のある人などが、ある程度のランクから冒険者を始められるための抜け道でもある。
「よし、じゃあさっそく行くか!」
「レグルスの実は魔の森だよね」
「みたいだな。街の北側だっけか。北門まで二時間くらい、そこから魔の森まで三時間か。走ったらもうちょっと早く着くかな?」
「そだね。うーん、目立って急いで行くより、野営前提でゆっくり歩いて行ったほうが目立たないかも?」
「あー、宿取ってるわけじゃないからそれでもいいな」
「うん」
そんなことを話し合いながらギルドを出て、さっそく魔の森へと向かうべく歩き出したところで。
「そこの嬢ちゃん、ちょっと待ちな」
身長二メートルに近いガタイのいい男が前に立ち塞がった。どうやらその後ろにも男が二人いるようだ。見たところ前衛に弓職と斥候といったところか。
「はい? 何か用ですか?」
声を掛けられたのは俺じゃなさそうだったけど、莉緒をかばう様に前に出て返事をする。
「そっちの嬢ちゃんに話しかけてんだ。関係ねぇ奴はすっこんでろ」
低い声ですごんでくるが、師匠や魔の森奥地の魔物の圧力と比べればどうということはなさそうだ。
「二人並んで歩いてるのに関係ないわけないでしょうに」
「あぁ?」
尚もすごんでくるが、まったく恐怖は感じない。
しかしここは一度は言ってみたいセリフのアレを言うべき時か。うん、きっとその時に違いない。
「俺の女に――」
「じゃあ私が直接話を聞きましょうか」
何か用かって聞いてんだよ。というセリフは、前に出てきた莉緒の言葉に遮られてしまった。でも途中まで喋った言葉は聞こえてたようで、耳が真っ赤になっている。
一瞬の沈黙が訪れるが、何だこの空気。遮られる俺もそうだけど、遮っちゃった莉緒もやっちまった感が半端ない。
「……ふん。女の尻に敷かれてるような奴はやっぱり引っ込んでろ」
ってそう解釈しますか。そうですか……。
「お嬢ちゃん、アンタ魔法使いだな? だったらそんなヒョロい無職のガキなんかと組んでないで、俺たちのパーティーに入ったほうがいろいろとお得だぜぇ。魔法を使うにはちゃんとした前衛が必要だろう」
ちょっとだけ折れた心をなんとかまっすぐにしようとしていたら、男が目的を告げてきていた。さすがに冒険者ギルドが俺たちの職業をバラしたとは思えないので、もしかしてこいつら鑑定持ちなのか。師匠からは珍しいスキルだって聞いてたんだけどな。
「別に必要ないので邪魔しないでくれますか?」
だが何事もなかったかのようにバッサリと男三人を切り捨てる莉緒だった。
くっ……、ここでもお金がいるとは……。当たり前だけど。
というわけで昨日の夕飯に続き、今日の朝食も部屋で保存食をむしゃむしゃと食べた。せめて火が使えればスープなんてものも用意できたんだが、そこは仕方がない。お風呂は大事だったのだ。
「よし、じゃあ気を取り直して仕事を探しますか」
ほぼ無一文になってしまったので、ここで稼げなければ野営になる。さすがに宿のベッドは快適だった。いまさら野営に戻りたくはない。
気合を入れて冒険者ギルドへと向かうと、昨日とは違って人であふれていた。朝一で依頼が張り出されるというのは、どこのラノベでも同じらしい。
……しかし。
「ちょっとあそこに突っ込んでいく勇気は出ないな……」
依頼ボードの前は戦場であった。ギルド内での揉め事は禁止なため殴り合いにまでは発展しないが、罵声飛び交う戦場と化していた。
日本人であるただの高校生には敷居が高い。かつ朝からどんな依頼があるのかわかっていない状態で参戦したところで、割のいい依頼を見つけられるとも思えない。
結局依頼が半分ほどになるまでボードの前には立てなかった。
「朝から幸先が悪いわね……」
「うーん。人気のある依頼は討伐系みたいだなー」
どんどんと剥がされていく依頼を遠目から確認する。
カウンターはまだ並んでいるので、空いてきたボード前の依頼を見てみる。
「ん~」
常時依頼の欄には昨日やったFランクの薬草と毒消し草がある。他のFランク採集依頼は軒並み剥がされてしまったあとだ。
一つ上のEランクの常時依頼にはレグルスの実と、薬草花の採取依頼があるようだ。それぞれ200フロンと150フロンだ。Fランクの十倍じゃん。そんなに難しいのか。異空間ボックスにいっぱい入ってるけど……。
とりあえずランクをひとつあげれば今の宿でもいけそうだ。いつまでも手持ちを納品するわけにもいかないから、実際に採集には行ってみないとだけど。
「うーん。手持ちの薬草と毒消し草を放出してちゃっちゃとランク上げちゃおうか?」
「そうねぇ……。さすがにちょっと持ってるものをわざわざ探しに行くのも面倒ね」
そうと決まればカウンターが空いてくるまでもうちょっと待つか。
ほとんどの冒険者は常時依頼だけでEランクになってるのかな。この争奪戦を潜り抜けるのはなかなか難易度が高い気がするぞ。
しばらく待った後、手持ちの薬草を放出してランクを上げた。毒消し草十五束で90フロンになった。
聞いたところによると特にNGなやり方ではないらしい。お金に余裕のある人や、騎士などを引退したすでにある程度実力のある人などが、ある程度のランクから冒険者を始められるための抜け道でもある。
「よし、じゃあさっそく行くか!」
「レグルスの実は魔の森だよね」
「みたいだな。街の北側だっけか。北門まで二時間くらい、そこから魔の森まで三時間か。走ったらもうちょっと早く着くかな?」
「そだね。うーん、目立って急いで行くより、野営前提でゆっくり歩いて行ったほうが目立たないかも?」
「あー、宿取ってるわけじゃないからそれでもいいな」
「うん」
そんなことを話し合いながらギルドを出て、さっそく魔の森へと向かうべく歩き出したところで。
「そこの嬢ちゃん、ちょっと待ちな」
身長二メートルに近いガタイのいい男が前に立ち塞がった。どうやらその後ろにも男が二人いるようだ。見たところ前衛に弓職と斥候といったところか。
「はい? 何か用ですか?」
声を掛けられたのは俺じゃなさそうだったけど、莉緒をかばう様に前に出て返事をする。
「そっちの嬢ちゃんに話しかけてんだ。関係ねぇ奴はすっこんでろ」
低い声ですごんでくるが、師匠や魔の森奥地の魔物の圧力と比べればどうということはなさそうだ。
「二人並んで歩いてるのに関係ないわけないでしょうに」
「あぁ?」
尚もすごんでくるが、まったく恐怖は感じない。
しかしここは一度は言ってみたいセリフのアレを言うべき時か。うん、きっとその時に違いない。
「俺の女に――」
「じゃあ私が直接話を聞きましょうか」
何か用かって聞いてんだよ。というセリフは、前に出てきた莉緒の言葉に遮られてしまった。でも途中まで喋った言葉は聞こえてたようで、耳が真っ赤になっている。
一瞬の沈黙が訪れるが、何だこの空気。遮られる俺もそうだけど、遮っちゃった莉緒もやっちまった感が半端ない。
「……ふん。女の尻に敷かれてるような奴はやっぱり引っ込んでろ」
ってそう解釈しますか。そうですか……。
「お嬢ちゃん、アンタ魔法使いだな? だったらそんなヒョロい無職のガキなんかと組んでないで、俺たちのパーティーに入ったほうがいろいろとお得だぜぇ。魔法を使うにはちゃんとした前衛が必要だろう」
ちょっとだけ折れた心をなんとかまっすぐにしようとしていたら、男が目的を告げてきていた。さすがに冒険者ギルドが俺たちの職業をバラしたとは思えないので、もしかしてこいつら鑑定持ちなのか。師匠からは珍しいスキルだって聞いてたんだけどな。
「別に必要ないので邪魔しないでくれますか?」
だが何事もなかったかのようにバッサリと男三人を切り捨てる莉緒だった。
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