モーニングコーヒーはぬるめで

慶野るちる

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本編

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 そこそこまとまって寝たはずなのに、一時限目から眠い。その、そこそこまとまって、というのがよくないのだろう。ちゃんと途中に起きることなく(トイレは別として)がっつり眠らないと駄目なのだ。
 岡本さんと別れた後、向かいのベッドがかすかにいびきをかいてる部屋にこっそり戻って部屋着に着替えて自分のベッドに潜り込んだ。一時間ほどだが、やはり自分のベッドで眠るのと他人のそれとでは全然違う。安心して深く眠ることができた。朝、相部屋の奴に昨晩のことを謝るとお互い様じゃん、と返ってきた。根掘り葉掘り訊かない良い奴だと思う。俺もオールしようが午前様だろうが訊かないし。たまにはみんな羽目を外したくなる。時間に縛られた窮屈な寮生活の中のちょっとした息抜きだ。その中身はそれぞれでいい。一緒に食堂で朝飯を食った後はクラスが違うこともあって別々に登校した。
 朝のホームルームには当然樫木が来たが目は合わせず。どんな顔をしたらいいかわからんし。目が合ってないから樫木がどんな感じだったのかわからないが、特に呼びつけられることもなく終わり、教室を出て行った。
「奴隷くん、なんかおネムだね」
 授業と授業の合間の休憩時間、机にべたりと伏せっていると前の席に桜野がこっちを向いて座った。
「まあね、勉強のし過ぎかしらね……」
 まさか桜野に話すわけにはいかず。
「ん? そんなにがつがつしないと厳しいの?」
「厳しいよ、俺は桜野と違ってさー。多分志望校変えろって言われるわ」
 これは事実だ。
「そっか……で、樫木先生の弱み握れた?」
 弱み? ああ、なんだかそんなこと言ってたな。
「いいえー、そんな暇ないわよ」
 やられてばっかりで何も応戦できなかったし。そんなことをする余裕を与えられなかった。思い出せばやっぱりあれは強姦紛いだよな。一方的に無言で突き上げられて。
「ふうん、僕は見つけたよ」
 桜野はにっこり笑った。
「マジで? 俺にも教えてよ」
「ダメダメ、共有すると価値が下がる」
「えー、けちー」
 そう言うと思ってたよ、桜野さん。代価が必要そうだもの。
「岡本さんにでも聞いてみれば? ヒントくれるかも」
「オカモト? だれ?」
 そんな人いたっけ。
「誰って、生徒会書記の岡本さん」
 生徒会なんかに知り合いいねえもん。
「それって三年でしょ? 会ったことないのに無理っしょ」
「ええ? 多田は岡本さんと話してるじゃん」
 え?
 ……。
「ええっ!?」
 オカモトって、岡本さん!? あの人、そんな人なのかよ。生徒会の人なのか……俺興味ないから全然知らなかった。有名人じゃん。
「打診されてるのかと思ったんだけど」
「打診、って何の」
「来期の生徒会役員」
 生徒会役員?
「や、そんなの知らんし」
 やるようなタマじゃない。こんなに乱れた生活してんのに。
「樫木先生は生徒会執行部の顧問の一人だからさ、岡本さんに聞けば何かわかるかもしれないよ」
 へ? 顧問? あの二人そういう関係でもあるのか。
「そうなのか……」
「うん。眠気飛んだ?」
「おう……サンキュ?」
「よしよし、残りの授業頑張ろ」
 桜野は俺の肩をぽんと叩いて自分の席に戻っていった。
 なんだ? なんか心配してくれたのか? 俺、様子がおかしく見えるんだろうか……。
 あと一つで授業が終わって、帰りのホームルームになる。
 荷物持ちはまだ終わってない。
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