モーニングコーヒーはぬるめで

慶野るちる

文字の大きさ
9 / 49
本編

しおりを挟む
 朝の五時過ぎ、なんて時間なんだと思いながらも寮の門へ歩いていくと、そこにはジーンズにパーカー姿の岡本さんが立っていた。
 ……申し訳ない。三年生なのに。受験生なのに。本当にごめんなさい。
 それに何よりも岡本さんは俺と樫木が寝たことを多分知ってる。一晩樫木の家にいたってことはそうなんだろうと簡単に想像もつくことだし、樫木は隠さず話しただろう。
 樫木は約束通り車で送ってくれたのだが、さすがに門の前までというわけにはいかず少し離れたところで降ろしてくれた。
 俺は上着と鞄を手に持ってネクタイをせずに、なんだか呑んだくれた朝帰りのサラリーマンのような格好で門をこっそり開けてくれた岡本さんの前に立った。
「おはよう、多田君」
「すみません、こんな朝早くに」
 結局、樫木が岡本さんに連絡を取ってくれて迎えに来てくれるよう話をしてくれた。俺は相部屋の奴に頼むと言ったのだが、どうやら昨日の時点で俺は岡本さんの部屋で一夜を過ごしたことになってるらしくて直々に岡本さんが話をしてくれたらしい。びっくりしたかもな。三年生がいきなり部屋に来れば。俺はあいつがカラオケで午前様するのをフォローしてるから俺の寮内朝帰りを知ったとしても(石井さんと毎週のようにしてることではあるがそこは気付いてない、多分)何とも思わなかったはずではあるが。
「樫木さん絡みは慣れてるよ。急な手伝いもね。まあ寮の門を開けたことはなかったけど。そもそも樫木さんがやらかしたんじゃないの?」
 まあそれだけとは言い難い、か。さっさと寮に帰らなかった俺も悪くないとは言い切れない。でも。岡本さんに監視されてるから始まったことで。ひいてはやっぱり樫木が悪いのか。岡本さんが悪いわけじゃない。
「まあいろいろ複合的な理由で……」
「うんまあ、恙無く誤魔化せそうだしね。そこは多田君が良ければ僕はそれでいい」
「本当にすみませんでした」
 良いも悪いもないというか。
 岡本さんには多大な迷惑をかけている。樫木がちゃんとお礼するのだろうけど(大人なのだから)、俺も何かしないといけないだろう。
「ま、とりあえず解散しよう。多田君はもう少し休んだ方がいいよ。樫木さんに美味しいもの食べさせてもらった?」
 岡本さんが踵を返して歩き出したので後をついていく。それぞれの棟の玄関に着くまで。
「いえ……」
「え? ご飯なし?」
「さっきコンビニでサンドイッチを買ってくれて車の中で食べました」
「はあ? なにそれ」
 そして岡本さんは足を止めた。
「あの人馬鹿だな……ホンモノの馬鹿だ。どうしようもない馬鹿だ」
 そう言って深いため息をつくけど、そこまで馬鹿を連呼しなくても。
「もう僕は手を貸すのやめようかな。樫木さんは何考えてるんだろうね?」
「はあ……」
 樫木が岡本さんに見捨てられそうになっている。それでいいのかどうかも俺にはわからないが。
「じゃあね、多田君。おやすみ」
 早朝とは思えないほど軽快な足取りで岡本さんは二番館の玄関へ入っていった。
 起こさないよう静かに部屋に戻ってもう少し寝よう。朝飯なくてもいいし。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

キスの仕方がわかりません

慶野るちる
BL
全寮制男子校に入学した市原はクラス委員長になったため書類を提出しに生徒会室に行くと、そこに一人いた、初対面の副会長の近藤に襲われてしまう。  混乱するも相部屋の同級生・松川に助けられて元気を取り戻したある日、生徒会長の桜野から仕事を手伝って欲しいと依頼される。  最初は近藤に無視されていたが手伝う中で近藤から告白され、近藤への印象が少しずつ変わっていく市原だが。 表紙:Photo by Markus Spiske on Unsplash / powered by かんたん表紙メーカー様

有能副会長はポンコツを隠したい。

さんから
BL
2.6タイトル変更しました。 この高校の生徒会副会長を務める僕・東山 優真は、普段の仕事ぶりから次期生徒会長の最有力候補と言われている。……んだけど、実際は詰めの甘さやうっかりミスを根性論でカバーしてきたポンコツだ。 こんなに頑張れているのは、密かに思いを寄せている安西生徒会長のため。 ある日、なんの奇跡か会長に告白され晴れて恋人同士となった僕は、大好きな人に幻滅されないためにポンコツを隠し通すと決めたけど……!?(内容は他サイト版と同じですが、こちらの方がちょっと読みやすいはずです)

入社1ヶ月のワンコ系男子が、知らずのうちに射止めたのはイケメン社長!?

monteri
BL
CM制作会社の新入社員、藤白純太は入社1ヶ月で教育係の先輩が過労で倒れたため、特別なクライアントの担当を引き継ぐことになる。 そのクライアントは、女子禁制ミーハー厳禁の芸能事務所だった。 主人公の無知で純なところに、翻弄されたり、骨抜きにされるイケメン社長と、何も知らない純太がドキドキするお話です。 ※今回の表紙はAI生成です ※小説家になろうにも公開してます

僕の恋人は、超イケメン!!

八乙女 忍
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?

【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。

紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。 相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。 超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。 失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。 彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。 ※表紙をAI君に描いてもらいました。(2026.2.21) ※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。

バスケ部のイケメン先輩に誘惑されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 他にも書きたいのがいっぱいある。

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

処理中です...