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最終章 暴走する悪役令嬢を止める禁句とは
後日談
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あの騒動から二年の時が流れていた。
私は今、王都に住んでいる。
そして、学者たちが調べ終わったあとの貴重な書物を模写する仕事をしている。
「イーモン。こっちを模写を先に頼む」
「ええ? 先生、さっきは別の方を」
「こちらの方が優先度が先と気づいた」
「・・・・・・まったく」
王宮の書庫の中、かつて私にこの仕事を進めた老人と口論になりそうになる。
何のことはない、彼は自由に指示を出せる同僚が欲しかったのだ。
「イーモン、少し休憩しよう。マリン、お茶とお菓子を頼む」
「はーい」
宮殿の学者たちが指示を出す。
彼らはかつてケイトと共に仕事をした者たちでもある。
彼女に優秀さを見せつけ絶望させたと言うからには、少なからず偏屈な性格の者たちと覚悟していたのだが・・・・・・。
実際は多少変わってるが、人柄の良い者ばかりだった。
いや、私は単に模写をする者だからこそ彼らに嫉妬の感情が芽生えないだけなのだろうか?
「マリン、そういえば二人目を懐妊したそうだな」
「ええ。できれば今度は女の子がいいんですけど」
「はは。まあ体を大事にな。アレンも今やこの宮殿に無くてはならない者だからな」
「・・・・・・」
そう、今学者たちと世間話をしているマリンも旦那のアレンと一緒に王都に来ていた。
それぞれ仕事を活発にこなしている。
「そういえば二年前、爵位を返上したヘザー卿は君たち全員に職を紹介してから引退したそうだね」
「ええ、ありがたい話でした」
世間話は続く。
二年前、少し王都で話題になった件だ。
「イーモンはそういえばあそこの娘さんと婚約してたんだっけ?」
「バ、バカ! お前」
「ああ、すまん」
学者の一人が別の学者に口を押さえられる。
そんなに気を使ってもらわなくてもいいのだが・・・・・・。
「とにかくヘザー卿とベアトリクス様とヘンズリー家の者たちは今は田舎で暮らしてるんだってな」
「・・・・・・」
そうらしい。
気になってはいる。
ベアトリクス様はあの後・・・・・・立ち直れたのだろうか?
悪い噂を聞かないのは良いこととも言えるが。
††††††
午後になった。
相変わらずメイド姿のマリンが忙しい忙しいとつぶやいている。
「イーモン。今日の分の模写ってもしかして終わった?」
目があった。
これは何か頼まれるか。
「ああ、今終わったところだ」
「次のに取りかかる?」
「いや、模写は正確性重視だからな。ノルマをこなしたら無理はしない。何か手伝うか?」
「本当? 助かる。買い出しに行って欲しいの」
「わかった。必要なものを言ってくれ」
我々は今は王宮に雇われているが、実際はかなりランクが下の身分。
雑用もいろいろやらなきゃならない。
まあ、給料が良いからそれくらいはいいのだが。
マリンがパタパタと動きながら、買ってきて欲しい物を私に告げる。
「そんなに忙しいならブルーノも呼んだらどうだ? お前のコネで雇ってくれほうだが」
「冗談! あの子は村で畑仕事が合ってるわ」
「まあ、そうかもなあ」
話に出たとおり、マリンの弟は王都には来なかった。
本人は王都での仕事が良いと嘆いていたが・・・・・・。
「とにかくこれを買ってくれば良いのだな?」
メモを持って立ち上がる。
今は午後三時。
買い物しても十分に戻れる時間だ。
†††††
服屋、乾物屋、金物屋、いろいろ回った。
すべてが王宮で消費される物の補充。
「だいぶ時間があまったな」
独り言をつぶやく。
少し疲れたので、オープンカフェで休むことにした。
「紅茶を一つ」
「はーい」
注文して椅子に座る。
今日は天気もいい、けっこう混んでいる。
こういう空気に浸るのもなかなかいいものだ。
「おい、見たか? すっげえ美人だったな」
「ああ、でもどこかで見たことある子だったな」
「・・・・・・」
周りの客の声が聞こえる。
気にせずにテーブルにあったチラシを眺めていた。
しばらく下を向いていると・・・・・・女性に声をかけられた。
聞き覚えのある声だ。
「同伴してよろしいですか?」
「・・・・・・!? ええ、もちろん」
見上げると、そこには小綺麗な庶民の服装の・・・・・・ベアトリクス様が立っていた。
相変わらず美しく、髪型も変わり少し大人びて見えた。
そして、憑きものが落ちたような穏やかな表情をしていた。
「ベアトリクス様、お久しぶりです」
「敬称はいりませんわ。私は今はただの町娘です」
「そう・・・・・・ですか」
敬称を付けるか付けないか、そんなことはどうでも良くなっていた。
早く彼女と語り合いたい。
この二年間、どうしていたのか。
これから、どうするつもりなのか。
・今度は、本当の良い関係を築けるといいのだが。
そう、今度は・・・・・・駆け引きなどではなく、かけて欲しい言葉と相手が聞きたくない言葉を考慮していこう。
おわり
私は今、王都に住んでいる。
そして、学者たちが調べ終わったあとの貴重な書物を模写する仕事をしている。
「イーモン。こっちを模写を先に頼む」
「ええ? 先生、さっきは別の方を」
「こちらの方が優先度が先と気づいた」
「・・・・・・まったく」
王宮の書庫の中、かつて私にこの仕事を進めた老人と口論になりそうになる。
何のことはない、彼は自由に指示を出せる同僚が欲しかったのだ。
「イーモン、少し休憩しよう。マリン、お茶とお菓子を頼む」
「はーい」
宮殿の学者たちが指示を出す。
彼らはかつてケイトと共に仕事をした者たちでもある。
彼女に優秀さを見せつけ絶望させたと言うからには、少なからず偏屈な性格の者たちと覚悟していたのだが・・・・・・。
実際は多少変わってるが、人柄の良い者ばかりだった。
いや、私は単に模写をする者だからこそ彼らに嫉妬の感情が芽生えないだけなのだろうか?
「マリン、そういえば二人目を懐妊したそうだな」
「ええ。できれば今度は女の子がいいんですけど」
「はは。まあ体を大事にな。アレンも今やこの宮殿に無くてはならない者だからな」
「・・・・・・」
そう、今学者たちと世間話をしているマリンも旦那のアレンと一緒に王都に来ていた。
それぞれ仕事を活発にこなしている。
「そういえば二年前、爵位を返上したヘザー卿は君たち全員に職を紹介してから引退したそうだね」
「ええ、ありがたい話でした」
世間話は続く。
二年前、少し王都で話題になった件だ。
「イーモンはそういえばあそこの娘さんと婚約してたんだっけ?」
「バ、バカ! お前」
「ああ、すまん」
学者の一人が別の学者に口を押さえられる。
そんなに気を使ってもらわなくてもいいのだが・・・・・・。
「とにかくヘザー卿とベアトリクス様とヘンズリー家の者たちは今は田舎で暮らしてるんだってな」
「・・・・・・」
そうらしい。
気になってはいる。
ベアトリクス様はあの後・・・・・・立ち直れたのだろうか?
悪い噂を聞かないのは良いこととも言えるが。
††††††
午後になった。
相変わらずメイド姿のマリンが忙しい忙しいとつぶやいている。
「イーモン。今日の分の模写ってもしかして終わった?」
目があった。
これは何か頼まれるか。
「ああ、今終わったところだ」
「次のに取りかかる?」
「いや、模写は正確性重視だからな。ノルマをこなしたら無理はしない。何か手伝うか?」
「本当? 助かる。買い出しに行って欲しいの」
「わかった。必要なものを言ってくれ」
我々は今は王宮に雇われているが、実際はかなりランクが下の身分。
雑用もいろいろやらなきゃならない。
まあ、給料が良いからそれくらいはいいのだが。
マリンがパタパタと動きながら、買ってきて欲しい物を私に告げる。
「そんなに忙しいならブルーノも呼んだらどうだ? お前のコネで雇ってくれほうだが」
「冗談! あの子は村で畑仕事が合ってるわ」
「まあ、そうかもなあ」
話に出たとおり、マリンの弟は王都には来なかった。
本人は王都での仕事が良いと嘆いていたが・・・・・・。
「とにかくこれを買ってくれば良いのだな?」
メモを持って立ち上がる。
今は午後三時。
買い物しても十分に戻れる時間だ。
†††††
服屋、乾物屋、金物屋、いろいろ回った。
すべてが王宮で消費される物の補充。
「だいぶ時間があまったな」
独り言をつぶやく。
少し疲れたので、オープンカフェで休むことにした。
「紅茶を一つ」
「はーい」
注文して椅子に座る。
今日は天気もいい、けっこう混んでいる。
こういう空気に浸るのもなかなかいいものだ。
「おい、見たか? すっげえ美人だったな」
「ああ、でもどこかで見たことある子だったな」
「・・・・・・」
周りの客の声が聞こえる。
気にせずにテーブルにあったチラシを眺めていた。
しばらく下を向いていると・・・・・・女性に声をかけられた。
聞き覚えのある声だ。
「同伴してよろしいですか?」
「・・・・・・!? ええ、もちろん」
見上げると、そこには小綺麗な庶民の服装の・・・・・・ベアトリクス様が立っていた。
相変わらず美しく、髪型も変わり少し大人びて見えた。
そして、憑きものが落ちたような穏やかな表情をしていた。
「ベアトリクス様、お久しぶりです」
「敬称はいりませんわ。私は今はただの町娘です」
「そう・・・・・・ですか」
敬称を付けるか付けないか、そんなことはどうでも良くなっていた。
早く彼女と語り合いたい。
この二年間、どうしていたのか。
これから、どうするつもりなのか。
・今度は、本当の良い関係を築けるといいのだが。
そう、今度は・・・・・・駆け引きなどではなく、かけて欲しい言葉と相手が聞きたくない言葉を考慮していこう。
おわり
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