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2.いつもの教室

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「レーイーキ、元気ないじゃん?」


月曜の朝から机に突っ伏してるオレの肩にぽんって手を乗せて、カオを覗き込んでくる、亮介。



「ううーーーー。」


変なうめき声を上げてみる。





オレ、坂本サカモト 玲紀レイキ

16歳、高2。

昨日、失恋したばっかり・・・



ちなみに彼女いない歴16年。



カオは・・・至って普通、だとおもう。

髪はやや茶色がかった猫っ毛。

身長172cm こっちも至って普通だ。




亮介は、オレにカオを寄せてきて、


「レイキ、もしかしてダメだったのか・・・?」




頼む、聞かないでくれ。放っておいてくれ。


胸のあたりがちりちり痛む。


まだ立ち直れない。





「亮介。まだ放っておいてやれよ」


少し低い、イイ声が響く。


そうそう、まだ傷が癒えてないの、オレは。




「またすぐ立ち直るだろ、レイキは」



ぴきっ。




オレはガタンとイスを鳴らして立ち上がった。





「あのなーーっ、もう少し優しい言葉はかけられないのかよっ!」


オレが睨みつけると、


「ほらな」


って、口角を少し持ち上げてこっちに流し目してくる奴。 

城井シロイ アキラ





あきらとは中学のころからの付き合い。

・・・・とにかくカッコいい。とにかくモテる。



身長180cmに届きそうな長身で、細身。

手足もスラって長くて、カオは小さくてモデルみたい。

サラサラの黒髪をワックスで固めて、少しツンツンさせてて。


中学のころから、年上年下関係なく、とにかくモテまくってる。


ただ、高校入ってからは特定の彼女とは付き合ってない。

・・・・まあ、遊んでるわけだけど。





「・・・オレ、まだ傷心なんですけど」


あきらを睨みながらぼそっと呟く。



「まあまあ。また新しい恋をさがそーぜ、なっ?」


オレの肩をポンポンと叩いてくるのは、亮介。  

清水シミズ 亮介リョウスケ




亮介とは高校に入ってから同じクラスになって仲良くなった。

さわやかなスポーツマンタイプで、黒髪短髪。

身長はあきらより少し低いくらい。



こいつは、あきらみたいにモテるわけじゃないけど、彼女がいたことはある。

今はフリーだけど。





「今日帰り、どっかよろーぜ。うまいもんでも食お。」


にかって笑顔を向けてくれる。


「亮介、やさしーなあ」


オレがほっこりして言うと、


「レイキの失恋話、詳しく聴いてやるからさっ」





・・・前言撤回。

こいつ、面白がってるだけだろ。




オレはぶすっとして席を離れた。




「おい、レイキー?」


亮介を無視して教室を出る。




昨日より、気分はだいぶましだけど、まだ晴れるには程遠い。






トイレに向かう廊下で。



「・・・・あ」



違うクラスの彼女と、鉢合わせ。




「・・・・坂本くん、おはよう」


にっこりほほ笑む彼女。 仁科ニシナ 紗希サキちゃん。



ゆるふわセミロングの髪が揺れる。

色白で、大きな瞳。

・・・・やっぱり、かわいいな。




「・・・・・おはよう」


オレ、笑えてるかな。



「昨日はありがとう。楽しかった」


「・・・うん、オレも」





また、胸が苦しくなってくる。


早くここから立ち去りたい。


紗希ちゃんの前で、無様な姿は見せたくない。




「また、ね」




ひらひら手を振って通り過ぎていく紗希ちゃん。


オレもひらひら手を振り返して。




『また』が無いことは分かってるけど。


その事実が、さらにオレの胸を締め付ける。





トイレに向かうはずだった足は、屋上への階段に向かっていた。



授業を受ける気にはなれない。




・・・・とりあえず、1時間目はサボることにした。



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