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文化祭

1.推薦

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夏休みが終わって、2学期。


年に1度の文化祭の準備が始まった。





クラスの模擬店の内容を決めている時、一部の男子が、

「メイドカフェがいい!」

と言い出した。


それが男子全体に伝搬して、メイドカフェをすることに決まったんだけど・・・・


女子からは、

「男子だけが楽しめるんじゃダメ」

という意見が。


そこで、男と女の客、どちらも呼べるように、執事&メイドカフェをすることになったんだ。



メイドカフェや執事カフェの希望を出したクラスは多かったみたいだけど・・・・

うちのクラスは委員長の手腕のおかげか、希望が通っていた。



「女子のメイド姿かあ・・・・ イイなあ。
楽しみだな、レイキ」

うきうきした様子で、オレの肩を叩く亮介。


お前・・・・そんなカオ小山さんに見られたら、怒られるぞ・・・・・?




メイド役と執事役は、希望者や推薦で選ばれたわけだけど・・・・


その中でも、1人以外のクラス全員の一致で選ばれたのは、あきらだった。


・・・・・ちなみに、賛成しなかった1人ってのは、あきら本人だ。




「あきらくんは絶対でしょ!」

「すごいカッコいいんだろうなあ~♡」


盛り上がる女子をよそに、あきらは不満そうだ。


「・・・・・めんどくさい。 接客とか、マジで嫌だ」

「いーじゃん。 あきらなら、愛想よくしなくても、居るだけでみんな喜ぶって」

「そーゆーわけにはいかねーだろ」



あきらとそんな話をしてると、



「いや、オレ、ムリだって!」


亮介が立ちあがって、叫んでる。


何事かと思って見ると・・・・


どうやら、執事役に、亮介も推薦されたらしい。



うん。

亮介もスポーツマン系でカッコいいし、いいんじゃないかなあ。



「お前らからも、ムリだって言ってくれよ」

亮介が、オレとあきらに助けを求める。


「えー、いいじゃん。 亮介、似合うと思うけど」

「ああ。 一緒にやろうぜ、亮介」

賛成するオレとあきらに、亮介はタメ息をついた。



「お前らなあ・・・・ オレは、テニス部の方で忙しいんだよっ!」


あ、そっか。


夏の大会が終わって3年生が引退した後、亮介はテニス部の部長になった。

亮介はテニスも結構うまいし、後輩の面倒見もいいから、適任だと思う。


で、文化祭は部活での催しもあるから、部長の亮介はそっちの方が忙しいってわけか。



「でもさ、ちょっとくらいならヘーキじゃね?」

「せっかく推薦してもらったんだし、さ」


のほほんとしてるオレたちを、亮介は睨みつけた。


「ほー、そーか。 そういう無責任なことを言うんだなあ・・・・
てめーら、覚悟しろよ。 部活の雑用、すげー回してやるからな!」


亮介の凄みをきかせた言い方に焦る。


やべ。

仕事、すっげー押し付けられそうだ。



オレは慌てて挙手をした。

「亮介はテニス部の部長だし、ちょっと無理かなーって思うんだけど」


「じゃあ坂本、他に誰か推薦して?」

委員長にそう言われて、オレはちょっと考えてみる。

うーんって悩みながら、早く決めてしまいたそうに少しイラついてる委員長を眺める。

眼鏡かけてて見た目真面目っぽいけど、けっこーイケメンだよなぁ・・・


「委員長、やれば?」

オレは委員長を推薦した。



軽くそう言ったオレに、委員長がぴきって怒ったのが分かった。



あ、やべ・・・・・・



「オレだって忙しいんだ! もう坂本、お前がやれ!!」


「えーっ、オレ!? ムリだよ!」


「一人くらい、執事っぽくないのが居たっていいだろ。 決まりな」


「ちょっと、待てってー!」



委員長の裁断にみんな、『いいんじゃない?』っていう雰囲気になった。


「うそだろー」


「レイキ、まあがんばれよー」

亮介がにやにやしながらオレの肩を叩く。


「いいじゃん、レイキ。 一緒にやろうぜ」

あきらも嬉しそう。



オレは執事役をやらされることになってしまった・・・・・



オレ、絶対、似合わないと思う・・・・・・
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