桜華学園~悪役令嬢に転生した俺はヒロインに盗聴、盗撮、ストーキングされる~

黒夜須(くろやす)

文字の大きさ
103 / 131

102話 生徒会への挨拶

しおりを挟む
 レイラは生徒会室の前に立っていた。生徒会ではないレイラはこの部屋を開けることができないため、カードリーダーの下にあるブザーを押した。

 しばらく待つと、「はい」と言う返事と共に生徒会副会長の岡田(おかだ)光一(こういち)が扉を開けて顔を出した。

「どな……、え、レイラ様」

 彼はレイラの顔を見た瞬間、固まったがすぐに笑顔になり、扉を開けるとレイラを招いた。
 彼女が室内に入った途端、その場にいた全員が目を大きくして固まった。

 生徒会室は桜花会室の半分程度の大きさしかない。入って正面の一番奥に会長用の机があり、中央に大きな四角いテーブルがある。それを囲うようにして生徒会の人間が座っていた。

 レイラを見ると、生徒会長である江本(えもと)貴也(たかや)はすぐにキーボードから手をはなしパソコンを閉じると立ち上がりレイラのもとにやってきた。そして、一礼した。それを見た他の生徒会メンバーも同じ様にパソコンを閉じて立ち上がり頭を下げた。

「みなさん、そんな、大丈夫ですわ。座ってください」

 レイラは慌てて、伝えたが誰一人して座る人間はいなかった。

(まるで、ヤクザみたいだぁ)

「これは大道寺レイラ様、本日はこのような場所にどうなされました? ご用がありましたら生徒会のから向かいましたのに」
「突然の訪問、申し訳ありません。事前に伝えますと皆様がいらしてしまうと思い足を向けました」

 レイラが頭を下げると、室内は静まり返った。生徒会メンバーが全員がそろっているが呼吸の音だけしか聞こえない。。

「会長になるからには、きちんと生徒会の皆様全員に自らの足で向かい挨拶をしようと思い伺いました」

 レイラは頭をあげるとニコリと笑った。

「改めてまして、以前全校生徒メールで報告致しましたが、来年度桜花会会長なります大道寺レイラと申します。よろしくお願いしますわ」
「挨拶に来て頂いたこと、申し訳ありませんが生徒会(ぼくら)は桜花会の神格化や行事では協力をしますがそれ以上の距離が近くなるわけにはいかないのです」

 貴也は、穏やかに笑いながらレイラに丁寧に説明した。レイラが首を傾げていると、彼女にだけ聞こえる小さな声で「生徒会の成り立ちについて聞いていますよね」と言われた。レイラがゆっくり頷くと、“なら、わかりますよね”と声に出さないで言った。

(そうだよなぁ。まゆタソが入学前に生徒会と仲良くしたら学校でも彼女と一緒にいられると思ったが……。学校の規則を桜花会が提案して、生徒会が可決する制度があるうちは二つの組織が仲良くすると癒着を疑われる事は確かだだよな。他にも色々言われたなぁ。それも全部、中村幸宏(アイツ)のせいか。爪痕残すなぁ)

 レイラはため息をつき、生徒会一人ひとりの顔を見た。彼は困惑しているようであった。

 覚悟を決めた。

「江本会長、何を言ってますの。私(わたくし)は桜花会の次期会長ですわよ。黒服ごときが気軽に話しかけていい立場の人間ではありませんわ」

 レイラは口に手をあて、笑いながら周囲を見回した。生徒会のメンバーは苦い顔をしている中、貴也だけは“それでいい”と言うように頷いていた。
 以前貴也から生徒会と桜花会の関係を聞いている彩花はバツの悪そうな顔をしていた。

「でも、これから私(わたくし)の手足となって働く人間の事が知りたいですわ。名乗って下さるかしら、次期会長の緒方(おがた)先輩」

 そう言って、レイラは一番恥にいたがタイの良い短髪の黒髪の男子生徒を指刺した。

(名前と顔は知っているが実際に見て、性格もある程度確認しときたいな)

「え……? 名前」

 緒方一(おがた はじめ)が動揺して固まると貴也はにこりと笑い、彼の背中を押した。

「流石レイラ様ですね。今年度は幹部ではいらっしゃないので生徒会との打ち合わせに出ておられませんよね。それで顔と名前が一致しているのですか」
「特待の方、全員覚えています」

 レイラの淡々とした返事に、貴也は笑顔で頷いた。そして、一の耳元に口を近づけるとさっさと自己紹介をするように促した。

 一は小刻みは頷くと目を細め一歩前にでた。

「自分は書記であり、次期会長の緒方一です。……レ、レイラ様が何を考えていらっしゃるかは、ぞ、存じませんが、突然部屋にくるのは礼にかけていますね」

 一は震える声でレイラに忠告した。

(なんだ? なにか文句つけなくちゃいけないと思っているのか? でかいなりして震えてるじゃねぇーか)

 レイラはキッと一を睨みつけると、彼はビクリと身体を動かした。

「その話は江本会長と今して私(わたくし)は謝罪しましたわよね。次期生徒会長ともあろう人間が桜花会の話を聞いてないなんた先が思いやられますわね」

 大きなため息をつくと、一は眉を下げて口を閉じた。
 レイラは一を馬鹿にしたような笑いを浮かべた。

「江本会長。この方が本日に次期生徒会長ですの? 江本会長と後釜としては不十分ではないですか?」

 レイラの言葉を聞いた一はまた、ビクリと体を動かし、子犬が助けを求めるような瞳で貴也を見た。

「仕方ないのですよ。生徒会は成績のみで役職が決まるのです」

 ニコニコと笑い穏やかな口調だが、一を助けるような言動は一切なかった。それ以降、一は口を閉じた。
 レイラはそんな彼を気にせず、次々と指名した。
 現在会計で次期生徒会副会長の石田(いしだ)栄之助(えいのすけ)、現在役職はないが次期書記の安本(やすもと)隼人(はやと)は名前だけを名乗りすぐに下がった。隼人は表情のよめない顔をしていたが栄之助はレイラに怯えているようであった。

「ここにいる来年度の生徒会メンバーは私で最後ですね。岡本副会長は卒業ですしね」

 笑顔で前にでたのは彩花だ。
 彼女の言葉に現在副会長の岡本光一は静かに頷いた。彼の顔には“早く終われ”と書いてあるようであった。

「同じクラスなので、面識ありますが改めてまして中村(なかむら)彩花(あやか)です。よろしくお願いします」
「あら、ここにきてはじめて“よろしくお願いします”と言う言葉を聞きましたわ」

 レイラが目を細めて周囲を見ると、貴也以外と視線が合わなかった。みんな彼女の視線を避け、下を向いていた。

「あはは、レイラ様が睨むからではないですか」
「睨む? 被害妄想が激しいのではなくて、私(わたくし)は皆さんのお顔をしっかりと覚えようとおもっていたのですわ」

 2人の会話はまるで、虎と獅子が戦っているような緊迫した雰囲気であった。それを貴也は満足そうに見ていたが、他のメンバーは顔をあげることすら叶わなかった。

「では、もう十分ですよね。それでは、桜花会室までお送りします」

 彩花はそういうと、手の平を上して扉をさした。すると、全員が改めてお辞儀をした。それはまるで、ヤクザの親分を送り出す場面に似ていた。

「そうですの。ありがとうございます。それでは皆様、ご機嫌よう」

 レイラは彩花と共に、部屋を去ると全員がため息をついた。そして、一気に緊張がとけた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

悪役令嬢に転生するも魔法に夢中でいたら王子に溺愛されました

黒木 楓
恋愛
旧題:悪役令嬢に転生するも魔法を使えることの方が嬉しかったから自由に楽しんでいると、王子に溺愛されました  乙女ゲームの悪役令嬢リリアンに転生していた私は、転生もそうだけどゲームが始まる数年前で子供の姿となっていることに驚いていた。  これから頑張れば悪役令嬢と呼ばれなくなるのかもしれないけど、それよりもイメージすることで体内に宿る魔力を消費して様々なことができる魔法が使えることの方が嬉しい。  もうゲーム通りになるのなら仕方がないと考えた私は、レックス王子から婚約破棄を受けて没落するまで自由に楽しく生きようとしていた。  魔法ばかり使っていると魔力を使い過ぎて何度か倒れてしまい、そのたびにレックス王子が心配して数年後、ようやくヒロインのカレンが登場する。  私は公爵令嬢も今年までかと考えていたのに、レックス殿下はカレンに興味がなさそうで、常に私に構う日々が続いていた。

なりゆきで妻になった割に大事にされている……と思ったら溺愛されてた

たぬきち25番
恋愛
男爵家の三女イリスに転生した七海は、貴族の夜会で相手を見つけることができずに女官になった。 女官として認められ、夜会を仕切る部署に配属された。 そして今回、既婚者しか入れない夜会の責任者を任せられた。 夜会当日、伯爵家のリカルドがどうしても公爵に会う必要があるので夜会会場に入れてほしいと懇願された。 だが、会場に入るためには結婚をしている必要があり……? ※本当に申し訳ないです、感想の返信できないかもしれません…… ※他サイト様にも掲載始めました!

【完結】転生したら悪役継母でした

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。 その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。 しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。 絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。 記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。 夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。 ◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆ *旧題:転生したら悪妻でした

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

処理中です...