1 / 54
第一話 兄弟①
しおりを挟む
遥(はるか)はマンションの一室で落ち着きなく歩き回っていた。何度も時計の針を確認してはため息をついた。
「……兄」
小さくつぶやくと玄関に向かい動かないノブをじっと見た。ため息をつきまた時計を見たが先ほどから針がほとんど動いていない。
またため息をついた時ノブが動き、扉が開いた。遥は目を大きくして入ってきた人物に飛びついた。
「遥」
遥よりも頭一つ以上小さい兄、遥斗(はると)は驚いてよろけそうになった。遥は慌てて彼が倒れてないように抱きしめた。
その光景はまるで大型犬が飼い主にじゃれているようであった。
遥斗はマスクを取ると、遥を見上げじっと見てからゆっくりと口を動かした。
「ただいま」
「おかえり」
遥は大きな声で答えると、遥斗を抱き上げて部屋にはいった。
遥斗は成人男性としては標準的な身長であるがそれを遥は軽々と持ち上げる。遥のやることに遥斗は抵抗せずに笑っていた。
遥斗が帰宅したことが嬉しくて部屋に入っても降ろせずにいると、遥斗は遥の顔を持ちじっと見た。
「僕、着替えたいだけど」
ゆっくりと口を開きはっきりと伝えられた。しかし、遥は眉を下げて首振った。
遥斗は困った顔して、遥の手に触れると彼は手のひらに口をつけた。それに遥はビクリと体を動かして顔を赤らめた。
『Stay(まて)』
その言葉を聞くと遥の動きは止まり、遥斗を床に降ろした。
「……」
遥斗の命令だから従ったが不本意であった。
大きな図体を小さくして落ち込んだ。
遥斗はどこか遠くへ行くとは言っていない。数歩先の部屋に行って着替えてくるだけだ。
しかし、遥は遥斗と少しでも離れると不安になった。
ずっと自分だけの兄でいればいいと思っていた。
遥斗が寝室から部屋着を持つと風呂場へ向かった。それを遥は玄関と洗面室の間にある廊下に座り込んで見ていた。洗面室の扉が閉まり遥斗の姿が見えなくなると胸が張り裂けそうになった。
遥斗の姿が見たくて洗面室の扉に手をかけたが彼の命令を思い出すと手を引いて両膝を抱えた。
しばらくして扉が開くと「えっ」と驚きを遥斗は上げた。
シャワーを浴びて出てきた遥斗は遥の姿が見て固まった。しかし、すぐに少し困った顔した彼は遥のもとへ行くと抱きしめた。そして、さっきと同じように遥の手の平に口をつけた。
『Good boy(いい子) よく待っていられたね』
「……頑張った。今日の外出にもついていかずに待っていたのに……。帰ってからも離れるなんて」
仕事だということは分かっていたが、一日一人家にいるのは胸が張り裂けそうになった。何をしていても遥斗の事ばかり考えていた。
「ごめんよ。打合せだった」
遥斗に頭をなぜられると気持ちよくなった。
「……うちですれば」
小さな声で遥が言ったが遥斗は小さく首を振った。
「家が嫌なら、俺も一緒に行くのに」
その意見にも首を振られた。
自分がいると仕事の邪魔になることは分かっていたが納得ができなかった。
「兄のSubにしてよ」
そう言うと遥斗は困ったように笑った。
いつもそう言う態度をとる。プレイはしてくれるがそれは体調管理のためでありパートナーではない。
遥は不満そうな顔をしていたが、それを横目に遥斗は台所へ行った。そこには遥が作った食事が置いてあった。
遥斗に手で合図を送られると遥はカウンターに座った。
自分の作った料理を食べている遥斗の姿を見ると、不満であった気持ちがなくなった。自分が作ったものが彼の血肉になると思うと興奮してニヤケそうになったが不審に思われないように我慢した。
食事が終わると片付けを遥斗と一緒にする。遥斗がいつも一人でやると言うのだが一緒に居たいため手伝う。
その後は一緒のベッドで寝る。このマンションに引っ越してくるときベッドを二つ買おうとした遥斗を遥は必死で止めた。「狭い」と言われたが最終的にキングサイズを購入することで決着がついた。
「兄……」
遥斗の背中にぴたりとくっつくと、彼はくるりと遥の方を向いた。そして、手を握り手の平に口をつけた。
『狭くない?』
「うー……」と唸りながら遥斗に抱き着くと足も絡めた。すると遥斗は手をはなし抱きしめ返してくれた。
この時間がとても幸せであった。
「……兄」
小さくつぶやくと玄関に向かい動かないノブをじっと見た。ため息をつきまた時計を見たが先ほどから針がほとんど動いていない。
またため息をついた時ノブが動き、扉が開いた。遥は目を大きくして入ってきた人物に飛びついた。
「遥」
遥よりも頭一つ以上小さい兄、遥斗(はると)は驚いてよろけそうになった。遥は慌てて彼が倒れてないように抱きしめた。
その光景はまるで大型犬が飼い主にじゃれているようであった。
遥斗はマスクを取ると、遥を見上げじっと見てからゆっくりと口を動かした。
「ただいま」
「おかえり」
遥は大きな声で答えると、遥斗を抱き上げて部屋にはいった。
遥斗は成人男性としては標準的な身長であるがそれを遥は軽々と持ち上げる。遥のやることに遥斗は抵抗せずに笑っていた。
遥斗が帰宅したことが嬉しくて部屋に入っても降ろせずにいると、遥斗は遥の顔を持ちじっと見た。
「僕、着替えたいだけど」
ゆっくりと口を開きはっきりと伝えられた。しかし、遥は眉を下げて首振った。
遥斗は困った顔して、遥の手に触れると彼は手のひらに口をつけた。それに遥はビクリと体を動かして顔を赤らめた。
『Stay(まて)』
その言葉を聞くと遥の動きは止まり、遥斗を床に降ろした。
「……」
遥斗の命令だから従ったが不本意であった。
大きな図体を小さくして落ち込んだ。
遥斗はどこか遠くへ行くとは言っていない。数歩先の部屋に行って着替えてくるだけだ。
しかし、遥は遥斗と少しでも離れると不安になった。
ずっと自分だけの兄でいればいいと思っていた。
遥斗が寝室から部屋着を持つと風呂場へ向かった。それを遥は玄関と洗面室の間にある廊下に座り込んで見ていた。洗面室の扉が閉まり遥斗の姿が見えなくなると胸が張り裂けそうになった。
遥斗の姿が見たくて洗面室の扉に手をかけたが彼の命令を思い出すと手を引いて両膝を抱えた。
しばらくして扉が開くと「えっ」と驚きを遥斗は上げた。
シャワーを浴びて出てきた遥斗は遥の姿が見て固まった。しかし、すぐに少し困った顔した彼は遥のもとへ行くと抱きしめた。そして、さっきと同じように遥の手の平に口をつけた。
『Good boy(いい子) よく待っていられたね』
「……頑張った。今日の外出にもついていかずに待っていたのに……。帰ってからも離れるなんて」
仕事だということは分かっていたが、一日一人家にいるのは胸が張り裂けそうになった。何をしていても遥斗の事ばかり考えていた。
「ごめんよ。打合せだった」
遥斗に頭をなぜられると気持ちよくなった。
「……うちですれば」
小さな声で遥が言ったが遥斗は小さく首を振った。
「家が嫌なら、俺も一緒に行くのに」
その意見にも首を振られた。
自分がいると仕事の邪魔になることは分かっていたが納得ができなかった。
「兄のSubにしてよ」
そう言うと遥斗は困ったように笑った。
いつもそう言う態度をとる。プレイはしてくれるがそれは体調管理のためでありパートナーではない。
遥は不満そうな顔をしていたが、それを横目に遥斗は台所へ行った。そこには遥が作った食事が置いてあった。
遥斗に手で合図を送られると遥はカウンターに座った。
自分の作った料理を食べている遥斗の姿を見ると、不満であった気持ちがなくなった。自分が作ったものが彼の血肉になると思うと興奮してニヤケそうになったが不審に思われないように我慢した。
食事が終わると片付けを遥斗と一緒にする。遥斗がいつも一人でやると言うのだが一緒に居たいため手伝う。
その後は一緒のベッドで寝る。このマンションに引っ越してくるときベッドを二つ買おうとした遥斗を遥は必死で止めた。「狭い」と言われたが最終的にキングサイズを購入することで決着がついた。
「兄……」
遥斗の背中にぴたりとくっつくと、彼はくるりと遥の方を向いた。そして、手を握り手の平に口をつけた。
『狭くない?』
「うー……」と唸りながら遥斗に抱き着くと足も絡めた。すると遥斗は手をはなし抱きしめ返してくれた。
この時間がとても幸せであった。
0
あなたにおすすめの小説
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
どうせ全部、知ってるくせに。
楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】
親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。
飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。
※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
被虐趣味のオメガはドSなアルファ様にいじめられたい。
かとらり。
BL
セシリオ・ド・ジューンはこの国で一番尊いとされる公爵家の末っ子だ。
オメガなのもあり、蝶よ花よと育てられ、何不自由なく育ったセシリオには悩みがあった。
それは……重度の被虐趣味だ。
虐げられたい、手ひどく抱かれたい…そう思うのに、自分の身分が高いのといつのまにかついてしまった高潔なイメージのせいで、被虐心を満たすことができない。
だれか、だれか僕を虐げてくれるドSはいないの…?
そう悩んでいたある日、セシリオは学舎の隅で見つけてしまった。
ご主人様と呼ぶべき、最高のドSを…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる