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第四十六話 星遥斗⑬
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遥はすぐに退院できたが、学校へ復帰させることに遥斗は戸惑っていた。
日中は以前と同じように、人懐っこい笑顔を見せてくれた。
しかし――。
「いや――」
深夜、遥の部屋から泣き叫ぶ声がした。慌てて向かうと、目をつぶって布団の中で暴れていた。
「ごめんなさい、ごめんなさい、こないで」
「遥」
声を掛けて抱きあがると「いや、だれ?だれ?」と言ってひっかかれ殴られる。力を入れて抱きしめることで、落ち着き寝付くが数時間後またそれがおこる。
昼間はそのことを忘れているのだろう穏やかだった。しかし、睡眠不足のためよく昼寝をしているその時間一緒に睡眠をとるので遥斗の体調も問題はなかった。
「あれ……、なにこれ」
遥はランドセルをじっと持っていた。
「どうしたの?」
「あ、兄。これなんだっけ?」
ランドセルを振りながら遥が言ったことに驚愕した。
――忘れている?
なんでもないわけがなかった。
遥の心が限界であった。
「遥、今日は一緒に寝ようか。僕の部屋へおいで」
「うん」
遥は幼子のように頷いた。
抱きしめて寝ることにより、夜の発作はなくなった。そのため日中は起きていられるようになった。
しかし、心配もあり新宮医師に連絡をとったが、Subの薬と精神安定剤は相性がよくないと断られた。
様子を見るしかできない状態がもどかしかった。
その中でも、遥は学習や手話、読唇術の勉強には励んでくれたので良かった。
「遥、散歩しないか?」
自ら言い出すこと待っていたが、一向に外へ行く気配がないため誘った。
「外?」
「いこう」
遥はピンときていないようで首を曲げた。
実際に外へ出てみると、何もかもが珍しいようであたりを見回していた。幼い頃から住んでいる近所であるにも関わらず。
――記憶があいまいになっている?
動物をみると「可愛い」と言って反応して追いかけていた。ただ、耳が聞こえないため周囲の人間や車を感知できない。何度も危険な目にあった。
それから毎日、散歩にでかけ人や物の気配を悟れるように伝えていった。遥は飲み込みがいいためすぐに覚えたが感知してから行動まで時間が掛かる。
そんな時、新宮ひな子にあった。偶然ではなく待ち伏せをされていた。
連絡をくれれば遥に合わせないことはないのに不思議であった。
遥は新宮を覚えていて喜んだ。それは歓迎すべきことであったが、遥斗は面白くなく感じた。
だから、思わず彼女に遥への恋愛感情を聞いてしまった。12歳の少女にだ。非常日滑稽であったが、彼女は意味を理解していないようで呆気にとられていた。そして悩ませてしまった。
話を聞いていると彼女は何か欠如しているようであった。しかし、頭のいい彼女と関係を築けたのは良かったと思っている。
「新宮医師の娘で自分のダイナミクスを知らない……」
あの人のことだ。検査をして本人に知らせていないだけの可能性もある。
彼女がいたから遥は中学から復学ができた。
復学してすぐに彼女から電話がきた。彼女には遥斗のみつながる専用携帯を渡していた。
「星さん?」彼女は怒ったような、呆れたような声で「星、弱いですけど、過保護じゃないですか?」と言われた。
返す言葉はない。
遥斗自身が守るつもりでいたため遥に護身術はなにも伝えていない。
「昔は愛想が良かったからいいです。でも、今は耳が聞こえないためか無愛想です。読唇術疲れるんでしょうね。必要ないと思う話は聞いてないですよ」
要するに敵を作りやすい対応をしているらしい。
ずっと、二人で彼に合わせた生活をしてため気づかなかった。
新宮の母は格闘家であるため、任せることにした。
毎日のようにボロボロになって帰って来る遥を見て「もうやめていい」と何度も言いそうになった。しかし、「負けない」と意気込む彼を見て言葉を飲み込んだ。そして、笑い飛ばしてやった。
笑えば場が明るくなった。
笑えば辛くないような気がした。
日中は以前と同じように、人懐っこい笑顔を見せてくれた。
しかし――。
「いや――」
深夜、遥の部屋から泣き叫ぶ声がした。慌てて向かうと、目をつぶって布団の中で暴れていた。
「ごめんなさい、ごめんなさい、こないで」
「遥」
声を掛けて抱きあがると「いや、だれ?だれ?」と言ってひっかかれ殴られる。力を入れて抱きしめることで、落ち着き寝付くが数時間後またそれがおこる。
昼間はそのことを忘れているのだろう穏やかだった。しかし、睡眠不足のためよく昼寝をしているその時間一緒に睡眠をとるので遥斗の体調も問題はなかった。
「あれ……、なにこれ」
遥はランドセルをじっと持っていた。
「どうしたの?」
「あ、兄。これなんだっけ?」
ランドセルを振りながら遥が言ったことに驚愕した。
――忘れている?
なんでもないわけがなかった。
遥の心が限界であった。
「遥、今日は一緒に寝ようか。僕の部屋へおいで」
「うん」
遥は幼子のように頷いた。
抱きしめて寝ることにより、夜の発作はなくなった。そのため日中は起きていられるようになった。
しかし、心配もあり新宮医師に連絡をとったが、Subの薬と精神安定剤は相性がよくないと断られた。
様子を見るしかできない状態がもどかしかった。
その中でも、遥は学習や手話、読唇術の勉強には励んでくれたので良かった。
「遥、散歩しないか?」
自ら言い出すこと待っていたが、一向に外へ行く気配がないため誘った。
「外?」
「いこう」
遥はピンときていないようで首を曲げた。
実際に外へ出てみると、何もかもが珍しいようであたりを見回していた。幼い頃から住んでいる近所であるにも関わらず。
――記憶があいまいになっている?
動物をみると「可愛い」と言って反応して追いかけていた。ただ、耳が聞こえないため周囲の人間や車を感知できない。何度も危険な目にあった。
それから毎日、散歩にでかけ人や物の気配を悟れるように伝えていった。遥は飲み込みがいいためすぐに覚えたが感知してから行動まで時間が掛かる。
そんな時、新宮ひな子にあった。偶然ではなく待ち伏せをされていた。
連絡をくれれば遥に合わせないことはないのに不思議であった。
遥は新宮を覚えていて喜んだ。それは歓迎すべきことであったが、遥斗は面白くなく感じた。
だから、思わず彼女に遥への恋愛感情を聞いてしまった。12歳の少女にだ。非常日滑稽であったが、彼女は意味を理解していないようで呆気にとられていた。そして悩ませてしまった。
話を聞いていると彼女は何か欠如しているようであった。しかし、頭のいい彼女と関係を築けたのは良かったと思っている。
「新宮医師の娘で自分のダイナミクスを知らない……」
あの人のことだ。検査をして本人に知らせていないだけの可能性もある。
彼女がいたから遥は中学から復学ができた。
復学してすぐに彼女から電話がきた。彼女には遥斗のみつながる専用携帯を渡していた。
「星さん?」彼女は怒ったような、呆れたような声で「星、弱いですけど、過保護じゃないですか?」と言われた。
返す言葉はない。
遥斗自身が守るつもりでいたため遥に護身術はなにも伝えていない。
「昔は愛想が良かったからいいです。でも、今は耳が聞こえないためか無愛想です。読唇術疲れるんでしょうね。必要ないと思う話は聞いてないですよ」
要するに敵を作りやすい対応をしているらしい。
ずっと、二人で彼に合わせた生活をしてため気づかなかった。
新宮の母は格闘家であるため、任せることにした。
毎日のようにボロボロになって帰って来る遥を見て「もうやめていい」と何度も言いそうになった。しかし、「負けない」と意気込む彼を見て言葉を飲み込んだ。そして、笑い飛ばしてやった。
笑えば場が明るくなった。
笑えば辛くないような気がした。
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