【完結】半吸血鬼の恋人~愛する人と過ごすために俺は神と契約する~

黒夜須(くろやす)

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半吸血鬼とトンボおじさん

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 ブーン

 俺はテーブルに座り静かに読書をしているとその周りを奴が飛んできた。羽音は殆どしないが存在がうるさい。
 余りにうるさいので、手で払うとその手があたりその衝撃で奴は壁にあたりズルズルと下にさがっていった。
 奴は羽を動かして顔を真っ赤にして俺の前まできた。

「なにをするのだ。カナタ」

 本人的には大きな声なのだろうが、耳をすましてやっと聞こえる。
 俺は聞こえないふりをしていると奴は、俺が読んでいる本の上に座った。

「なんだよ」
「なんだよじゃない」

 奴は怒った。
 相変わらず不細工な奴だとおもった。

「触るな。ハゲデブがうつる」
「ハゲではない。見ろ、髪はある」

 奴は右側の髪を伸ばして左にもってきた髪型、いわゆるバーコードハゲを指さしていった。

「それにこのお腹は宝が詰まっているのだ」

 ズボンの上にのった大きなお腹を突き出してポンと叩いて自慢した。
 俺はその姿を見てため息をついた。そしての自慢の腹を指で突っついてやった。

「脂肪だろ」
「あん、やめろ。そこは私の性感帯だ」

 気持ちが悪い声を上げる奴に俺は眉を寄せた。

「おじさんが喘ぎ声は気持ち悪い以外ねぇな」
「おじさんとはなんだ。私は妖精だ」
「ワイシャツにネクタイの妖精なんていねぇよ」

 俺は実際に奴以外の妖精を見た事がない。しかし、絵本で見る妖精はもっと美しい容姿にドレスを着ている。
 コレが妖精と認めたくない。

「これは戦闘服だ。それに、この素晴らしい羽をみたまえ」

 そう言って背中のトンボの羽のそっくりな物を見せられた。
 確かに、俺の手を広げたくらいのサイズで羽がり魔法を使える人型となると妖精の条件をみたしている。

 しかし……美しくない。

「そうですか」
「相棒に向かってなんだ。その態度は。けしからん」
「別に僕がトンボおじさんをパートナーの選んだわけじゃないよ」
「そりゃそうだ。貴様のような半吸血鬼が選べるパートナーなどおらん。パートナーがいないから私が同情してやったのではないか」
「はいはい、ありがとうございます」
「それから私はトンボおじさんではなくオスカル・アレクサンダー・ルドルフという名がある」

 トンボおじさんは俺の本の上で偉そうに腕と足を組んでいる。

「ご立派ですね」

 そう言って俺はトンボおじさんがいる本を勢いよく閉じようとしたが……。

 グググ……。

 トンボおじさんが全力で押し返してきたのだ。奴は妖精のクセに力が強い。外見は筋肉質とは程遠い肥満ボディだ。
 どこにそんな力があるのか不思議だと思う。

「チィッ」

 トンボおじさんの押し返す力があまりに強いため本を閉じるのを諦めて手を離した。
 するとバタンと大きな音を立てて本は開いた。
 いきなり抵抗がなくなったため、トンボおじさんはバランスを崩し本に顔面をぶつけていた。

「イタタ……いいのかい?」

 トンボおじさんが本にぶつけた顔面をさすりながら俺の方を見た。
 俺はトンボおじさんの言わんとしていることが分からず黙って彼をみていた。

「ベルの事を伝えにきたのだ」
「ベル?」

 俺はトンボおじさんを両手でわしづかみにした。

「ぐぁ」

 彼は苦しくて変な声を上げたが一切気にしなかった。

「詳しく話せ」

 そう言って、トンボおじさんを左右に乱暴にふった。その勢いでトンボおじさんは言葉が出なくなり「ぐぇぇ」と変な声を上げている。
 手の中でぐったりとしているトンボおじさんに気付き、手の動きをとめた。

「あ……」

 トンボおじさんはきつかったようで頭を俺の親指あたりにつけて動かない。
 仕方なく、机の上にあった本をどけるとトンボおじさんをそっと机の上に寝かさた。

「起きろよ」

 何度か指先でつっついた。

「あーう……たたた……う……」

 トンボおじさんは辛そうに机に手をついて身体をおこした。
 彼の顔は真っ青であり机に手をついてない方の手で、口を抑えている。

「げ……まさか」

 俺は慌てて立ち上がり、部屋にある棚を掛けた。

「袋……おけ……なにか……」

 このままではトンボおじさんの口からアレが出てきてしまう。奴は身体が小さいためたいした量ではないだろうが臭いのは絶対嫌だ。
 バタバタと棚を開けながら、まだ口から出ていないか不安になり机の上にいるトンボおじさんをみた。
 すると、彼は手招きして俺を呼んでいる。

「なんだよ。大丈夫なのかよ」
「うむ」

 トンボおじさんの顔色はさきほどよりよくなり、胡坐をかいて机の上に座っていた。

「貴様は乱暴だ」
「……ごめん。で、ベルは?」
「うむ。マズイかもしれぬ。今朝からずっと布団からでぬ」
「なんだって? なんでももっと早く教えてくれねぇんだよ」
「昼間だからだ」

 確かに、俺は太陽に光に弱いが純潔ではないため多少ならば問題はない。

 昨夜あった時、ベルはとても元気そうだった……。

 俺は不安に襲われて、慌てて壁に掛かっていた全身を覆うことのできるローブを着てそのフードをかぶり、仮面をつけた。
 そして、玄関の横にある小さい箱からベルの家の鍵を取り出し、ズボンのポケットに入れた。
 トンボおじさんが俺の周りを飛んでいることに、イライラしたが無視することにした。

「まだ太陽の位置は高いぞ」
「知っている」

 トンボおじさんに返事する声が乱暴になってしまったが気にしないことにした。今までベルの容態を知らせない奴が悪い。
 半吸血鬼でも直接日の光を浴びれば無傷ではすまないことは知っている。
 しかし、それでもベルのもとへいきたかった。
 扉から外に出ると、ローブを着ていても日の光が熱く感じた。

「長くいることはできねぇ」

 俺はもうスピードでベルの元へ向かった。その後ろをトンボおじさんがついていく。

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