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第13話 うさの過去

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ふと目を覚ますと、あたりは真っ暗でありまだ日が登るまで、まだ時間がありそうだった。目の前では優吾が幸せそうな顔して眠っていた。

そんな彼の顔を見ると、うさは幸せな気持ちになった。彼はここまで1人に人間に執着したのは初めてであった。
十五夜の月明かりの下で初めてあった優吾は、なんて心が綺麗なんだと思った。

種族特有の白髪、赤目にウサギ耳の格好を見ても怖がったり自分の利益を考えたりせずに助けようとしてくれた。

うさの一族は、考えていることがわかるため余り人間を信用しない傾向にあった。

うさもその1人であった。

「う……、うさ……?」
「わりぃ、起こしたか」
「いや、あ、昨日はありがとう。辛い過去を教えてくれて」
「いや、受け入れてくれてありがとな」

うさが、優吾の額に口付けすると彼はまた寝息をたてた。

過去……。

うさは、優吾に話をしたことを思い出した。

身分を上げるために月から降りたのは、今から100年以上前の話だ。当時、俺は若くて、身分を上げ優位にたつ事ばかり考えていた。

月から降りる時に、この国に行くなら山奥の村がいいと言われたので向かった。
数日歩くと小さな村を発見した。しかし、いきなり村に入るわけにも行かず、村の近くを歩いていた。するとやせ細った若い男にあった。

奴は俺の容姿を見て腰を抜かしたが俺の能力を知る取引を持ちかけてきた。それは男が連れてくる人間の思考を伝えれば、女をよこしてくれると言ったものだ。

「女じゃねーんだよな。俺の血を継いだ男が欲しい」
「分かりました」

男は、村の外に大層な屋敷を建てて俺を住ませた。約束通り、連れてきた人間の思考を伝えると次々と女をよこした。

女に口付けをすると、皆たちまちとろけてた顔して「もっと」と俺にしがみつきむぼった。

「あぁぁん。もう……ここ」

大きく足を広げて、俺を誘った。
そこを貫くと野獣のような悲鳴をあげよがった。数回やるとどの女も意識を失い、その女を村の人間が回収して、数か月すると子どもを持ってきた。

俺はそれを月に送った。そのたびに身分が上がり、この国で名乗ることを許される身分も近づいてきた。

この時代の戸籍は家制度であり家督を継ぐ言う考え方であったためそれにならったものが用意されることとなった。

俺は、月で餅をついているより楽しいと思っていた。

そんな日々が何十年も続いた。

「入れ」

怒鳴り声と共に、小さな娘が投げ込まれるように入ってきた。俺が驚いているとニヤニヤと下品な笑いを浮かべた男が立っていた。

俺と取引をして、女を連れてくる男だ。出会た時はやせ細った若者であったが今は丸々と太ったジジイだ。俺が睨みつけると男は頭を下げた。

「申し訳ございません。この娘が暴れるものでして……」
「ヒィぃぃぃ」

娘は俺の姿を見た途端、悲鳴をあげて逃げようとした。それを「黙れ」と言って男が押さえつけた。
当時、俺はうさ耳をつけた白髪の赤目姿で過ごしていた。

「あぁ? この姿がこえぇのか?」
「いえいえ、この女が頭が悪いだけで、素敵なお姿でございます」

男は胡散臭い笑いを浮かべた。俺は少し考えてから、姿を変えた。村の人間と同じように黒髪に黒目、肌も少し黒くした。ついでにうさぎ耳も見えなくした。

「え……?」
「おぉ」

男も娘も驚いた顔をした。
俺は、娘に近づくと男に去るように指示をした。すると、男はあっという間にいなくなった。

「こい」

俺はニヤリと笑い娘に声を掛けると、彼女は身体を震わせていた。それに眉を寄せると、彼女は立ち上がり俺の後をつてきた。

(大丈夫。村のためだから。終わって帰ったらすぐ死のう)

彼女の物騒な言葉に俺は振り向いた。すると、彼女は真っ青な顔をして、下を向いていた。今までの女は嬉しそうにしていたために不思議の思った。

「なんで死ぬだよ」
「え……。あ、考えがお分かりになられるのでしたね」
「あぁ、で、死ぬってだんだ?」

すると、彼女は黙り下を向いた。俺は面倒くさいと思いつつ、彼女の思考をよんだ。

俺が孕ませた女は出産まで大切にされる。生まれた子どもが男なら俺に献上されるが女なら村で育てられている。村の女は全て俺に差し出されていたから村の男は段々減っていった。

今では男は村長である俺と取引した男だけになった。

俺に何度も孕まされて、使えなくなった女は処分される。
村には赤子か妊婦しかいなかったため作物を育てることもままならなかった。

「あぁ、村衰退してんのか」
「……」

(あなたのせいです)

娘は俺を睨んだ。

「まぁいいや。こい」

俺は、娘を部屋に連れて行くと布団に寝かし着物をはいだ。その身体はやせ細りアバラが見えていた。気にせずに口付けをした。

しかし、彼女は乱れることなく俺を睨みつけた。
彼女の口の中に唾液をながしたが、震え耐えている。

「あー、もしかして、てめぇーこれから何するか分かってねぇのか?」
「知ってます。ここに、それを入れるですよね」

彼女は足を開き、俺のモノを指さした。

「あー、やめた」

俺は萎えている自分のモノを見て、彼女から離れると部屋をでた。
あの娘を孕ませば、この国で名前を名乗り裕福な暮らしができる。しかし、彼女に手を出すことができなかった。

俺の体液を体内に入れることで起こる催淫効果は、性欲増加であり元々ないものには効果ない。

「あの娘、そんなに幼いのか」

俺は娘のいた部屋に戻った。彼女は身なりを整えていたが、俺の顔を見ると「ヒィ」っと声を上げて身体を強張らせた。

「何もしねぇよ。お前、もう村に帰れ。で、女はもういらんと伝えろ。俺はこの屋敷を出る」
「え……、それは……」

娘は戸惑ったが、お構いなしに彼女をわきに抱えて飛び上がった。そのまま男の家行き娘を返した。

男は慌てた。

「待って下さい。どういうことでしょうか。この子がお気に召しませんでしたでしょうか」
「そうじゃねぇよ。今、妊娠してる者の子どもは貰う。それで終わりだ」

俺は妊婦の元を周り、子どもを回収した。

「生まれていない者はいないのか。ちょうどいいな」

すると、男が息を切らせて俺のもとに走ってきた。

「待って下さい。この村にはもう女しかおりません。貴方様にいなくなられると……」

俺は眉をひそめて男の顔を見た。

「あ……、なるほどな。俺がいれば拷問するより正確な情報得られるしな。あぁ、情報を買ってるのは……ねぇ。そりゃ、たんまりじゃねーの。でも、その割にはこの村貧乏じゃねぇ?」
「それは……」

俺は男の高そうな着物を見て、状況がなんとなくつかめてきた。

「俺は手を引く」

そう言い残して俺は子どもを月に献上すると、村を出た。

しばらくして月から連絡があった。この国の戸籍をもらることになり、嬉しくて俺は村に戻った。
俺がいなくなったから、女を取られなくなり村人は幸せに暮らしていると思っていた。

現実は違った。

村はなくなっていた。正しくは家や畑はあるが、荒れ果て誰もいない。
俺は信じられなくて村中を歩いた。

すると、老婆がいた。彼女は俺を見つけると持っていたクワを持ち上げて襲ってきた。慌てて飛び上がりそのまま月へ帰った。

そこから、俺はずっと引きこもっていた。子どもの献上をしないから身分はどんどん下がっていった。餅もつかないからとうとう月から追い出された。

それが優吾と会った晩の話だ。
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