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第17話 思いの強さは攻撃になる

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居間に戻ると、テーブルを片付け終わった祐介が座ってお茶を飲んでいた。

(可愛い)

真っ先に頭に流れてきたのは祐介の照れたような言葉だ。
楓は、姫路の手を引いて祐介のもとに来るとにこやかに微笑んだ。

「可愛いでしょ」
「あぁ」
「じゃ、可愛い子と出かけてよ」
「うーん」

楓の言葉に、祐介が悩むと姫路は申し訳ない気持ちになった。

(どこがいいのか? 動物園だと服が汚れちゃうかな。じゃ水族館かな。可愛い子と魚とか最高だね)

「……」

損得を考えずに姫路や楓を楽しませようとして更に自分自身も楽しもうとしてる彼を姫路は好意的に思った。
申し訳ないと感じる方が失礼なのだと感じた。

「水族館すてきですね」

姫路がほほ笑むと、楓がムッとした顔をした。

「違う―」
(違うー)

大きな声と強い思考が流れてきて姫路は顔をひきつらせた。

「ひめリン敬語なしだよ。たくさん年上なんだから。兄貴よりも母さんよりおばあちゃんよりも年上なんだよ。もうご先祖様だよ」
「……ご先祖様」

祐介の目が点になった。
祐介が困惑してるのが心を見ずとも分かった。それは姫路も同じ気持ちだ。
彼女の心の声を読んでいるに意味が分からないことが多い。それが姫路は面白かった。

(えーっと、あれかな。ひめ君は異星人だから俺らより長く生きていて年上だから、ひめ君が俺に敬語を使うのは違うってことかな)

事前情報なしに推測する祐介がすごいと姫路は感心した。

「さすが、兄弟ですね」
「うん? あ、そうか。俺の心読んだのか。あー、いいよ。敬語なしで。むしろ俺が使った方がいいですか?」

祐介がニヤリとして姫路を見た。姫路は首を振った。

「いえ、そんな事はないで……」
「ひめリン」

楓に強く名前を呼ばれて、姫路は言葉を止めて彼女を見た。

(敬語なし)

怖い顔をする楓を見て、姫路はため息をついて祐介を見た。彼は楽しそうにニヤついている。

「わかったよ」

すると、楓は嬉しそうに笑い、それを見て祐介も笑った。その顔は瓜二つであった。

「じゃ、行こうか」

楓はキッチンの横にあった鞄を手にした。祐介は返事をすると寝室に向かった。姫路も自分の鞄が寝室にあることに気づいて、祐介の後を追った。

寝室のクローゼットから鞄を出しながら祐介は姫路に声を掛けた。

「色々、ごめんね。楓は悪い奴じゃないだけどマイペースなんだよ」
「いえ」
「まだ、子どもだから許してほしい。本当に嫌なら一緒に住まなくていいからね」
「一緒に住みたいです。お願いします。楓さんと親友になったので会いたいです」

姫路は楓の言った“死んじゃう”という言葉が頭をよぎり慌てて、祐介に願った。

(あ、そういえば、楓がそんなこと言ってたなぁ。うちにいれば確かにしょっちゅう楓くるしな)

「親友になったんだもんね。いいよ」

(そういや、敬語に戻ってる。まぁ、使いやすい方でいいけどね)

「ありがとうございます」

姫路は自分の命がつながったことに安堵すると同時に、楓との親友契約の解除方法を考えた。“死”という結果をもたらすならそうとう重い契約であることは明白であった。楓の死と共に自分も道連れなる可能性を考えたら時間がない。

楓の寿命は長くとも後100年程度。

ガチャリと寝室の扉が開くとむくれた顔した楓が顔だした。

(遅い。遅い。遅い。遅い。遅い。遅い。遅い。遅い。遅い。遅い。遅い。遅い。遅い)

彼女の顔が視界に入った途端、頭が痛くなるほどの強い言葉が流れてきた。姫路は途端に立っていられなくなり、ふらついた。

「ごめんね。今行くから向こうで待っていてね」

祐介は姫路に様子に気づき、楓を部屋から出すと姫路の側にきた。そして、姫路の背中を支えるとベット座らせた。

「大丈夫。顔色悪いよ」
「いや、大丈夫……」
「じゃないよね? 横になる?」

(大丈夫かな? 貧血?)

祐介は姫路の様子を見ながら「ちょっと待っててね」と言って部屋を出ると、すぐに水を持って戻ってきた。
姫路の横に座ると、渡した。

「これ飲んで、ゆっくりしてね。楓は出かけだから」
「え……」
「あの子は金渡せば大丈夫」
「……そう」

姫路は水を受け取り、口をつけた。口の中が冷やされ、気分が少しよくなってきた。

「あのさ、体調は楓のせい? アイツの心読めなくても彼女の圧は凄く感じるからひめ君は辛いよね」
「ご迷惑をおかけしました。カエの思いは正直強烈で何度も受けるとキツイです」

体調が悪いだけではなく、その原因がバレてしまっているのなら隠す必要はないと思い、素直に言った。

「でも、真っ直ぐで可愛いですね」

フローというわけではなく、姫路は純粋にそう思った。あれだけ真っ直ぐに感情を向けられるのもある種の才能だ。

楓の声は疲れるけれど、裏表のないこの兄弟が姫路は嫌いではなかった。

「少し寝てていいよ」

祐介はそう言って、姫路からコップを受け取ると「何かあったら呼んで」と言って部屋を出た。

姫路はワンピースを脱いで肌着と短パンになりベットに転がった。
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