侍従の苦悩~お嬢様が自分は悪役令嬢だから家が没落すると大騒ぎして途方に暮れています~

黒夜須(くろやす)

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アルベルトは平民の手を引いた。彼女は抵抗することなくついてきたが、真っ青な顔をして若干震えている。
身分の高い人間が声を掛けているのだから当たり前といえば当たり前であった。馬に乗せた時は硬直していた。
彼女の案内で、住まいについたがアルベルトは最初家だと分からなった。家とは名ばかりの酷い建物で屋敷の倉庫の方が遥かに住みやすそうであった。
小汚い場所に足を踏み入れるのは抵抗があったが、カトリーナが彼女を気にしているという事実がある以上彼女の生活を確認したかった。
扉を開けると、部屋中は埃っぽく鼻が曲がるような臭いがした。何度も嘔吐きそうになったのが必死で耐えた。
「ここに住んでいるのか?」
「はい。汚くて申し訳ございません」
足踏み入れると、悪臭が強くなりそれ以上前に進めなかった。奥に布を被った大きなモノがあった。
「おい、奥のあれはなんだ?」
「母です」
平民は微笑むと、布をとった。それを見たアルベルトは顔を歪めた口を手で抑えた。
厚めの布の上に置かれたソレは人の形をしていたがウジがわき腐っているように見えた。
「母、最近元気がなく動かないのです」
「死んでいるのではないか?」
アルベルトが目を細めると、平民は大きく首をふった。
「生きているという根拠は?」
「村長が紹介して下さいましたお医者様の診断です。全身に虫がおりますでしょ」
「あぁ」
「この虫が栄養をあたえてくれるのですよ。最近、臭いが酷くなりお医者様に診てもらうと弱っているようで……」平民は悲しそうな顔をした。「だから、森に薬草を取りに行ったのです」
「それは医師が言ったのか?」
「はい。薬草の名はお医者様が教えてくだり、場所は村長です。でも、銀髪の方が薬をくれたのでその必要もなくなりました」
楽しそうに話す平民にアルベルトは大きなため息をついた。そして、息をとめると平民が母と行ったモノ近づいた。
「母は返事もできないです。横になったままで申し訳ありません」
 平民の言葉に返事をせず……、息を止めているのでできず、母と言われた塊を上から下まで見た。
肉は腐り落ち、全身に至る所虫がわいている。気持ちが悪いことこの上になかったが覚悟を決めると母と紹介されたモノの頭をつかんだ。
「ーーッ」平民は驚いて声を出ないようであった。
持ち上げるだけで、頭は簡単に胴体から離れた。
「え、え、そ、そんな……」
アルベルトが投げた頭部を抱きかかえた平民は泣き崩れた。
「え、そんな、だって……」
泣いている平民をアルベルトは抱き上げると、俵のように肩にかかえた。
「何をするのですか」
平民に返事をせず、悪臭のする場所から出ると大きく深呼吸をした。久しぶりの酸素に身体を喜んだ。その矢先、平民自身から強い臭いを感じた。
「母は死んだ。もうお前がここにいる必要ないだろ」
「そんな……」
落胆する平民を気に留めることなく、馬に乗り屋敷向かった。その間、平民は何度も返してほしいと言ったが気に留めなかった。
悪臭を放つコレを一刻も早くなんとかしたかった。
屋敷に到着すると、すぐにエマが出てきた。
「おかえりなさいませ」
「あぁ」
馬を降りると、屋敷の前で待機していた馬丁がアルベルトに頭を下げ、馬を受け取った。
「おい」
「はい」
普段、声を掛けられない馬丁は驚いて目を大きくした。
「この女も使え」
「馬の世話をさせるのですか? 女にはキツイですよ」
「構わん。だたし、そいつはカトリーナ様のお気に入りだ。下手なことすると物理的に首が飛ぶぞ」
「はい」
馬丁は頭を下げると平民と馬を引いてその場を去って行った。去り際、平民が何か言いたそうな顔をしていたが声を掛けなかった。
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