侍従の苦悩~お嬢様が自分は悪役令嬢だから家が没落すると大騒ぎして途方に暮れています~

黒夜須(くろやす)

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屋敷の扉が開くと、シドニー家の者ではないが見たことのある護衛が出てきた。
彼の姿を見ると自然と全身がこわばった。それはエマも同じであった。扉の横に控え頭を下げ跪きしばらくすると金髪の王子が出てきた。
「おい」
エドワードはアルベルトの前に立った。
「はい」
「顔をあげろ」
 エドワードの言葉に、返事をし顔を上げるとそこには不敵な笑みを浮かべたエドワードがいた。
「あの女はどうした」
「カトリーナ様が助けた平民でしたら、我が家におります。御用でしたら呼んでまいります」
「いや、あの女の瞳は何色だ?」
「……緑です」少し考えてからアルベルトは答えた。
「緑か、なるほどな」
彼は何かを知っている様で二ヤつきながら頷くと、馬車に乗り込んだ。緑の瞳が気になったが王子に聞けるわけがなかった。アルベルトは他の使用人同様、彼の乗った馬車が見えなくなるまで頭を下げていた。
屋敷に入るとすぐにカトリーナの部屋へ向かった。
部屋をノックするが返事がなかった。声を掛けたが返答はない。何度か声を掛けた後部屋へ入った。
入ってすぐに服を踏んづけた。そこにあったのは森で彼女を見つけた時に来ていた馬丁の服であった。
更に本やカトリーナが勝手に兄のクロ―セッドから持ち出した服もあった。馬丁の服はともかく兄の服はシワになるため床に放置して良いものではない。
服を拾い、カトリーナの部屋から続く衣装部屋を開けた。奥に殆ど手を通していないオーダーメイドのドレスが数着あった。この数は公爵令嬢としては少ない。
公爵は娘のために仕立て屋を呼ぶが本人は「私のドレスよりも家のためにお金使って下さい」と拒否するので無理やりつくった数着だ。その為装飾品も数えられる程度しない。
彼女は自分に金をかけるのを嫌がる。公爵は娘に甘くなんでも買え与えている。まだ、生まれて十二年金銭の価値がわかるはずもなくそういった生活をすれば物であふれかえりそうなものだ。しかし、実際カトリーナの部屋には公爵やエマが必要だと感じ揃えた物しかない。
「お嬢様」
団子のように丸く膨れている布団の側に行くとカトリーナに声をかけた。しかし、返事がない。
森に一人で勝手に向かった事を注意したい気持ちがあった。しかし必死で平民を守る姿を見ると小言は吹っ飛び『なぜ?』という疑問にとらわれた。見るかぎり彼女は平民として最下層だ。カトリーナが気を止める物を持っているように思えかなったがそこはカトリーナだ。自分違う物の見方をしていると考えた。
「エドワード王子殿下はお帰りになりましたよ」
王子の見送りをしなかった事も注意したかったが、今回は色々ありすぎた。そもそも、婚約者を避ける行為は今、始まった事ではない。避けるからこそあの王子は面白がり彼女を構うのだ。
「知ってる」布団から長い銀色まつ毛と真っ青な瞳が出てきた。「ティナ様がいらしたのに私を追っていくるなんて信じられない」
「……平民よりも公爵令嬢であり婚約者の方へ向かうのは当然だと思いますが」
森でも平民に『様』をつけていたのを思い出した。公爵令嬢が平民につけるなどあり得ない事であった。だから聞き間違えだと思っていた。
「いや……あの腹黒が気づかないわけがない。私を追わなくてはいけない理由があったのか」
 カトリーナは不思議そうな顔をしているが、それが当然だ。彼女は自分が貴族である事を忘れているのではないかとたまに感じる。
「腹黒って……」
不敬を問われるような発言にアルベルトは頭が痛くなった。
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