侍従の苦悩~お嬢様が自分は悪役令嬢だから家が没落すると大騒ぎして途方に暮れています~

黒夜須(くろやす)

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エドワードはすぐに広場を出るのかと思いきやゆっくりと平民の方に向かった。その彼は人でも殺しそうな表情をしていた。
平民がそれに怯え、涙を浮かべた。
「調子にのるな」
低い声で警告したエドワードは広場をでた。シドはそんなエドワードに困った顔をしながら彼を追い広場から出た。
すごまれた平民は石にように固まっていた。流石にアルベルトも同情した。王族というだけで彼女は怯えているのに更に追い打ちをかけられた。
哀れだと思ったがカトリーナに特別扱いされている平民に声を掛けたくはなかった。しかし、このままではカトリーナが彼女の心配をして寄り添う。
二人が近づくのは避けたかった。
「おい」
 どっちにしろ、ほっておく置く事は出来ない。ならば利用する他ないとアルベルトは思った。
「……はい」
平民はか細い声が聞こえた。
アルベルトはあたりを見回すと、侍女エマの姿が見えた。彼はエマに手で合図を送った。
「部屋まで送ろう」
「……そ、その……だい」
はっきりと返事をしない彼女にイラ立った。その表情が怖かったのか彼女は顔を引きつらせた。
「いえ、あの……、ちょっと落ち着かないと……」
「……」
理由は分からないが時間が掛かる事は理解した。しかし、待つつもりはなかった。
アルベルトは平民を俵のように担いだ。
「ひやぁ」
平民が変な声を上げたが無視した。
本来はシドのように横向きに抱えるのが親切なのだろがアルベルトはそれをする気はなかった。彼女が気に入らないというのもあるが単純に持てないのだ。
騎士であるシドは毎日訓練をしているため筋力があり長身である。それに比べいくら剣術の訓練をしてもアルベルトの方が劣る。
アルベルトの業務は主人の身の回りの世話であり戦う事が主な騎士とは違うのだから当たり前だ。
しかし、騎士に立ち向かうカトリーナを見ると自身の訓練時間も増やさなくてはならないと感じた。
「……ここは?」
平民は運ばれた部屋を見て不思議そうな顔をした。
「お嬢様の部屋だ」
「え、そんな……。な、んで?」
服が散乱している部屋を平民は目を大きくしてみた。その時、何かを思い出した様な声を上げた。
「あ、馬。お世話しないと……」
「馬の世話はいい。お前はお嬢様に感謝しているようだな」
「……はい」平民は目を点にして頷いた。
「では、お嬢様のために動け」
「……カトリーナ様のため」
「そうだ、お嬢様は適当な部分がある」アルベルトは汚れた部屋を指さした。「侍女は年老いたエマしかいないため片付かない」
「え」平民は首を傾げた。「広場にたくさんお手伝いの方いましたよね」
「お嬢様は侍女をエマしか信用していないため、エマ以外を部屋にいれない」
「……では、私もおこられるのでは……」
「大丈夫だろ。片付けをさせたこと私に怒るかもしれん。しかし、エマ体力的に厳しくなってきてきる」
カトリーナに気に入られている平民が片づけをしてくれるなら願ってもいない事だ。
平民はゆっくりと部屋を見回した。
「私も片付けをしているが、他にも仕事があってな」
「……」
平民は悩んでいるようであるがアルベルトの提案が嫌なわけではないようだった。
「汚い部屋で生活をすることでカトリーナ様が体調を崩すかもしれん」
「それは……」平民は大きく頷いて覚悟をきめたようだ。「分かりました。村長の自宅掃除もしていたのでできます」
「そ、よかった。今からできるか?」
「はい」
しっかりと返事をする彼女は先程オドオドしていた時よりも好感が持てた。
王太子のエドワード睨まれたら、怯えるのは仕方ない。下手すれば胴体から首がなくなる。
「じゃ、掃除用具の場所とか教えるから」
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