侍従の苦悩~お嬢様が自分は悪役令嬢だから家が没落すると大騒ぎして途方に暮れています~

黒夜須(くろやす)

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アルベルト、平民に掃除用具がある場所に案内しながら、屋敷の最低規則と主な部屋の場所を伝えた。 彼女は飲み込みが早く教えがいがあった。
部屋の掃除とドレス管理仕方など一度に多くのことを伝えたが全て頭で覚えた。
「お前、字は?」
「あ、えっと」平民は動揺しどもったが、深呼吸をして気持ちを落ち着かせた。「読めませんし書けません。ですので、口頭で全て伝えて頂けると助かります」
鼻息荒く言う平民が面白いと感じた。そんな自分に驚き、妙に納得した。
「あ、おかしな事をいいましたか? 申し訳ありません」
笑っているアルベルトに平民は頭を下げた。
「いや、別に。字は教える」
「本当ですか?」
「ただ、カトリーナの侍女として仕事もしてもらうから大変だろうけど」
「構いません」
平民は拳をにぎり両手を身体の前に持っていくと気合いをいれた。
「……」不覚にもそれが可愛いと思ってしまった。
「何をしている」
聞き覚えのある声が聞こえた。
振り向くと、目を大きくしたカトリーナがいた。その後ろにはエマが頭を下げていた。
「ティナ様」
カトリーナはアルベルトの前を素通りして平民に元へ行った。不快に感じた。
「何をなさっているのですか?」
「掃除です」平民は自信満々に答えた。「お部屋綺麗な方が健康的な生活が送れます」
「そうですが、これは侍女……」
そこまで言うと悲しそう顔になった平民に気づきカトリーナは口を噤み綺麗になった部屋を見た。
「ありがとうございます。掃除して頂き嬉しく思います」
「私よく出来ていますか?」
「はい。完璧です」
「それでは私はカトリーナ様の侍女になれますね」
「え……?」カトリーナ眉を寄せてアルベルトの方を見た「アルの提案か?」
「はい」
カトリーナが平民を侍女にする事に反対であろう事は想定していた。
「反対ですか」
「当たり前だ。ティナ様が私の世話をするなどありえない」
きっぱりと否定してきた。
「では彼女を今後どうするつもりですか?」
「……それは」
「客人しても構いませんがいつまでもはできませんよ。それとも村に戻されますか」
「それはダメだ」大きな声を出すと平民がビクリとした。それを見てカトリーナは眉を下げた。「すまない。そうだな。侍女としてなら……」
何度か呼吸をすると、アルベルトの方を見た。
「ティナ様の事を考えてくれたんだよな。ありがとう」
そういうと、カトリーナは平民の方を見た。
「我が家に貴方様を置くには現状侍女という立場になります。ご不満でしょうが辛抱ください」
平民は跪きカトリーナを見上げた。
「不満なんてありません。私侍女になるって言っているじゃないですか」
平民は立ち上がると手を大きく開き、キレイなった部屋を見せつける様に笑った。そんな平民にカトリーナは苦笑した。
「人格者ですね。本当に侍女の仕事をする必要はありません。そのうち……」
「やりますよ」
平民はカトリーナの言葉にかぶせてきた。すると、カトリーナは口を抑えて笑った。
「そうでした。貴女様はそういうお人でしたね。しかし、本当に私の侍女をするのは……」
カトリーナは口に手を当てて、ぶつぶつと独り言を言い始めた。
「でも……ルートが、あ……」
「カトリーナ様、私大丈夫です。頑張れますよ。それにアルベルト様が字を教えてくださるとも言ってくださいました」
「字を……?」
すごい勢いでカトリーナはアルベルトの方を振り向いた。
「本当か」
「シドニー家の侍女として必要な事ですから」
「アルが教えるのか?」
「ええ、他に頼むと説明がやっかいです」
カトリーナが険しい顔をしたので、アルベルトは首を傾げた。
「アルはティナ様をどう思っている?」
「え……? 平民ですが」
カトリーナが言っている意図が分からず首を傾げた。平民は平民であり可も不可もない。道端に落ちている石に対して感情がないのと同じだ。
「記憶力が良いようですね。教えがいがあるとは思いました」
先ほどの掃除の時に、どうせ無理だろうと高をくくったアルベルトは、大量の情報を一気に与え仕事をするように指示した。彼女は全てを正しく記憶して実践した。
「学べば使えるようになると思います」
「それだけか?」
「ええ」
「まぁ、そうだよな」カトリーナはニンマリと笑った。「アルは私が一番だもんだ」
「はい」
脈絡のない会話に戸惑ったが、アルベルトにとってカトリーナは何にも代えられない存在である事は確かだ。
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