侍従の苦悩~お嬢様が自分は悪役令嬢だから家が没落すると大騒ぎして途方に暮れています~

黒夜須(くろやす)

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しばらくすると、リチャードがハリソンに何かを言った。すると、名残惜しそうにハリソンはアルベルトから離れた。
リチャードは、「詳細は後で話す」と言ってアルベルトを部屋から出した。
アルベルトが部屋から離れたのを確認すると、リチャードは下を向くハリソンに声を掛けようとした。
すると……。
「お前……」
うなり声を上げたハリソンの顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃであった。
「ハリー」
名前を呼ぶと、睨みつけられた。
本人に選択させたとはいえ、誘導したのはリチャードだ。ハリソンに恨まれても仕方ない。
「俺はお前を今この場で殺したい」
「うん」
「だけど、それ以上に俺自身を殺したい。アルが断ればいいと思う反面、受けてくれた事に安堵している自分がいる」
「そっか。その苦しみは君だけに背負わせない」
「ん?」
「アルベルトが行くとなれば必ず、あの子も向かう」
リチャードは大きくため息をついた。
「牢屋にでも閉じ込めれば防げるだとうが、そこから出した途端に大暴れするだろうね」
普段の彼女を知っていれば、その姿は容易に想像できる。
「僕がどんなに止めても、あの子は止まらない。折角王太子の婚約者になれたのに喜ぶどころか逃げ回っている……」
落ち込むリチャードの言葉はどんどん幼い時の物へと変わっていた。
「リック……」
「ドレスを嫌い、剣を振り回し、アルベルトと対等にあろうとするんだ。彼が好きなのかと思いきやそうでもないようだし……」
 リチャードは大きくため息をついた。
「今回の件だって、家の騎士を使っても構わないだが、するとあの子が追うだろ」
「……それならアルも行くだろうね」
リチャードとハリソンは同時に大きな息を吐いた。
 緑の瞳を黒の国に返すとなると、必ず、あの子がついてくるなら初めからそうするのが効率的だ。

だが、心が痛んだ……。

もう祈るしかないと二人は思った。
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