侍従の苦悩~お嬢様が自分は悪役令嬢だから家が没落すると大騒ぎして途方に暮れています~

黒夜須(くろやす)

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「よし」エドワードは花を選ぶのをやめると、足早に庭園を出た。
「どこへ向かわれるのですか?」
突然の行動であったが、慌てる事なくシドはエドワードの後を追った。
「これから、シドニー家に行く」
「はぁ……」シドは空を見た。太陽はすでに沈みかけている。
「それでは連絡をいれます」
「いらん」
本来ならば、事前連絡が礼儀である。
まだ、就寝時間には早いが、カトリーナは公爵令嬢であり王太子エドワードの婚約者となった。暇な訳がない。
それはエドワードも知っている。王太子と言う身分のエドワード自身も毎日予定がつまっている。しかし、相手がいない物であればいくらでも移動可能だ。
「それは……」
心配そうな顔をするシドを横目に、足を速めた。
着いたのは馬小屋だ。
「殿下、まさか馬で行くつもりですか?」
「あぁ」
「それはあまりに失礼では? それにすぐに向かうなら護衛が私一人になります」
困ったような声を上げているシドの顔は言葉に反し『面白い』と書いてあった。
「ルカ」
エドワードはずっと黙って近くにいた侍従ルカに声を掛けた。
「はい」
「今日の予定はもうないな」
「はい。全て終わっております。明日の午前中の分までは全て完了しています」
ルカは表情を変えずに静かに答えた。
「そう言えばお前、カトリーナ嬢と同い年であったな」
「はい」
頭を下げるルカにエドワードは口を開いたが言葉を発せずに閉じ考え込んだ。
「まぁ、いい。シドを連れて散歩をする」
「様々な問題が生じます」
「だろうな」
エドワードは頷きながら、馬に鞍を付けた。それを見てシドも馬の準備をした。
「偽装を頼む。失敗したら知らないで通せ。私の勝手な行動でかまわん」
無理難題を押し付けたが、ルカは表情を動かさずに「承知いたしました」と頭を下げた。
ルカはエドワードの侍従になってから五年経つがいまだに彼が何を考えているか分からない。
以前の侍従やシドは気持ちを顔に出すタイプであったため余計に関わりづらかった。仕事は完璧にこなすため不満はないが、不安はあった。腹の底の見えない人間を側に置くのは気持ちが悪い。
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