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気持ちが悪い

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 窓からの太陽の光が私を照らした。

 真横では聞き慣れた声が聞こえる。ブツブツと呟くその声は私の睡眠を妨げるには十分であった。
 「う…う…」
 目を覚ますと昨日ルイと一緒に魔法陣を作成してた図書館にいた。私の足元には家系図の本が落ちている。窓から朝日が見えた。

 朝食にはまだ時間があるのかな。

 ぼんやりとした頭で考えながら、起き上がろうとしたが、上手く起き上がれずにそのまま床に突っ伏していまう。この感覚を私は知っている。疲労感である。魔法陣の使用は体力がいるため長時間や連続して発動するとものすごい眠気と疲労感に襲われる。
 
 眠ってしまった時点で魔法陣の発動はとまるのだから、起きた時に疲労感があるのはおかしい。眠れば回復するはずであるが回復していない。
 
 「ルイ」
 
 動けないのは困るので、助けて貰おうとルイの方を無理やりむく。ルイは魔法陣を発動していた。できないと言っていたのにできるじゃんと思ったが魔法陣を見て思い直す。あれは私が発動したものである。つまり、ルイは私が発動した魔法陣を発動し続けたのである。
 

 私の疲労感の意味を理解すると腹がたった。

 「バカルイ」

 意識を失いそうになりながら今でる限界の声で怒鳴った。その頃は目の前が真っ暗になった。

 改めて目を覚ましたのは自室のベッドの上であった。あれだけあった疲労感はなくなり、頭もスッキリしている。
 
 「ルカ」

 ベッドの横に重い空気を背負った人物が座っていた。私と視線を合わせる事ができず、不自然なほど正しい姿勢で目だけ床をじっと見つめている。
 何も言わずにベットに横になったまま、ルイをじっと見続けるとその視線に気づき顔あげる。今度は視線があった。ルイにいつもの笑顔がなく暗い顔をしている。

 『バカルイ』

 気絶前に私がルイに言った言葉を思い足してスーッと血の気が引くのを感じた。兄であり王位継承者であるルイに言ってしまった言葉に後悔する。最近いくら関係が近くなったとは言え私は2つ下の弟であり将来は使える身である。不敬罪を問われても文句は言えない。
 
 最近ルイが可愛くて完全に友人の子どもと同じ扱いをしてしまっていた。
 
 私は慌てて身を起こすとルイと対面になるように座った。その様子にルイは驚き止めようとしたがそれを制した。
 「申し訳ありません。”バカルイ”などと軽率な言葉を使ってしまいました。」
 
 自分のやってしまった事の重大さに思わず敬語になってしまった。その言葉にルカは眉間をシワを寄せて渋い顔をする。

 「普通に話してと言ったよね。」
 
 私の敬語を咎めた。そして、少し間を置いたあとまた視線は床に落ちた。そして蚊の鳴くような声で言った。

 「僕を罵倒するのは構わないよ。」

 耳まで赤くなり、声は小さいがなんだか嬉しそうである。

 私は意味がよくわからなくて聞き返すと、今度は勢いよく顔を上げて私の目をしっかり見てくる。
 
 「だから、ルカなら僕をいくら罵倒してくれていいよ。むしろ歓迎する。」
 
 ルイは高揚しているようであり、とても楽しそうに笑うがその笑顔はいつものルイの王子様スマイルとは程遠い。
 
 そして、顔が近い。
 
 椅子に座ったままであるが上半身を限界まで乗り出しているようである。私は思わず体をひいてしまった。

 「気持ちが悪い」

 思わず口に出てしまった言葉にルイは更に嬉しそうである。私は間違えたセリフを言ってしまったと後悔する。
 
 完璧王子様のルイは今まで一度も叱られることやまして気持ち悪がられることなど一度もなかったであろう。むしろ、その容姿から賛美されることが多かったはず。

 実際にまだ成人してないにも関わらずあらゆる方面から婚約の申し込みがあると言う。私は数回しかルイと共に茶会には出たことがないが1秒たりとも1人で過ごす姿をみた事がない。
 
 だから、きっと初めて罵倒されることで快感を覚えてしまったのかもしれない。

 私はいたいけな少年の扉を開けてしまった。

 ルイのそんな性癖なんて漫画でも現実世界でも聞いたことがない。

 本当にどうして良いかわからなかった。しかし、よく考えれば元々持っていたものであり私が気にする必要はないもかもしれない。

 よし、見なかったことにしよう。そして、今後も気にしない。

 私は固く決意すると別の話に切り替えることにした。


 「私が倒れた理由なんだけど。」

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