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必要な犠牲
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扉を叩く音がして、返事をするとサラが焼き菓子を持って戻ってきた。扉が閉まると同時に私は「失礼します」とルイとアーサーに声をかけてから席を立ちサラの方へ向かった。ルイとアーサーが驚いているようであったが気にしなかった。
サラは私が勢いよく走ってきたので目を大きくしていたが、近づくと膝をついて優しい笑顔で要件を聞いてくれた。
「サラ……サラはサラでいいのですか」
気持ちが高ぶり上手く言葉にできなかった。サラは私の言っている意味が理解できないようであったが優しい微笑みを絶やすことはなかった。
「サラはサラでございます」
サラの優しい言葉に大きく首を振った。ちがう、伝えたいのはそうではない。彼は本来騎士である。主を戦い守る人間が私なんかの侍女をして我儘を聞いて、そして死を待つようなことはしてほしくない。
「サラメンテ・ジョーンズが貴方名前です。今回の任務は戦わずして死亡する可能性がある事を知っていますか」
口調を強め伝えると、不思議なサラは不思議な顔して私を見た。
「騎士の任務は常に死と隣り合わせです。今回はルカ第二王子殿下もその周囲の安全を守ることが任務です。しかし、ルカ第ニ王子殿下の体質は極秘であります故、護衛も知られる訳に参りませんからこの格好をさせて頂いております。見苦しく申し訳ありません」
サラが深々と頭を下げた。
謝らせてしまった事に対して罪悪感で胸がいっぱいになった。彼は何も悪くないのに。むしろ私の方に責任があるのに私は彼に謝罪する事も叶わない。
「感謝しています」
謝罪できないから感謝の気持ちを伝えた。
ルイもアーサーも私の行動を見て不思議な顔している。
私はどうしても騎士が主君の為に命をかけるのが当たり前というのが納得できなかった。私のために誰も死んで欲しくはない。
誰かを犠牲にするなら……私なんて……。
「ルカ」
ルイに呼ばれ、浮かない気持ちで返事をしてからテーブルに向かう。サラも一緒についてきた。ルイに促され着席するとサラは焼き菓子をテーブルに置いた。それから紅茶を入れ直してくれた。
席に座った私をテーブルの上で手を組んだルイが見つめてくる。
「ルカは、多少の犠牲も許さないってことかな」
ルイの台詞に引っ掛かった。人の死を“多少の犠牲”というなど非人道的だ。ルイを睨むように見ると彼は悲しそうに眉を下げていた。
本当はわかっている。
私の魔力が暴走、もしくは意図せずに魔法陣を発動してしまった場合、それを誰かがとめなくてはいけない。その誰かがサラなのだ。止める人がいない場合はどれくらいの被害がでるか計り知れない。民を守るのは騎士の役目だ。サラは間違っていない。
誰も死なせたくないというには私の我儘だ。
サラは私が勢いよく走ってきたので目を大きくしていたが、近づくと膝をついて優しい笑顔で要件を聞いてくれた。
「サラ……サラはサラでいいのですか」
気持ちが高ぶり上手く言葉にできなかった。サラは私の言っている意味が理解できないようであったが優しい微笑みを絶やすことはなかった。
「サラはサラでございます」
サラの優しい言葉に大きく首を振った。ちがう、伝えたいのはそうではない。彼は本来騎士である。主を戦い守る人間が私なんかの侍女をして我儘を聞いて、そして死を待つようなことはしてほしくない。
「サラメンテ・ジョーンズが貴方名前です。今回の任務は戦わずして死亡する可能性がある事を知っていますか」
口調を強め伝えると、不思議なサラは不思議な顔して私を見た。
「騎士の任務は常に死と隣り合わせです。今回はルカ第二王子殿下もその周囲の安全を守ることが任務です。しかし、ルカ第ニ王子殿下の体質は極秘であります故、護衛も知られる訳に参りませんからこの格好をさせて頂いております。見苦しく申し訳ありません」
サラが深々と頭を下げた。
謝らせてしまった事に対して罪悪感で胸がいっぱいになった。彼は何も悪くないのに。むしろ私の方に責任があるのに私は彼に謝罪する事も叶わない。
「感謝しています」
謝罪できないから感謝の気持ちを伝えた。
ルイもアーサーも私の行動を見て不思議な顔している。
私はどうしても騎士が主君の為に命をかけるのが当たり前というのが納得できなかった。私のために誰も死んで欲しくはない。
誰かを犠牲にするなら……私なんて……。
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ルイの台詞に引っ掛かった。人の死を“多少の犠牲”というなど非人道的だ。ルイを睨むように見ると彼は悲しそうに眉を下げていた。
本当はわかっている。
私の魔力が暴走、もしくは意図せずに魔法陣を発動してしまった場合、それを誰かがとめなくてはいけない。その誰かがサラなのだ。止める人がいない場合はどれくらいの被害がでるか計り知れない。民を守るのは騎士の役目だ。サラは間違っていない。
誰も死なせたくないというには私の我儘だ。
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