【完結】腐女子が王子~独身中年女性が異世界王子に転生、ヲタクの知識と魔法と剣術で推しメンの危機を守ります~

黒夜須(くろやす)

文字の大きさ
126 / 146

後悔と反省

しおりを挟む
 身体中の痛みで目が覚めた。
 知らない天井だ。知っている部屋であっても天井は余り、気にしていないからここがどこだか分からない。
周囲に確認しようと身体を動かすと激痛が走った。
 
手足は問題ないのだが、寝返りをするのが辛い……。
 
かなり気を使いながら、横を向く。
 どうやら、各室のようだ。まぁ、王族の私室は破壊されてしまったから仕方ない。
 客室といっても他国の王族や貴族を招くため全て上等な物を揃えてある。異文化に対応できるように、お湯を浴びられる部屋もある。しかし、前世のお風呂と違い、お湯が置いてあるだけだ。それとベットルームとリビングが仕切られているところが私の部屋と違う。トイレは私の部屋同様、小さな個室にオマルが置いてある。
 つまりは私の私室よりも大きく設備が良いのだ。私の部屋はワンルームマンションみたいだ。

使いやすいからいいですがね。

 部屋の扉を叩く音がして、返事をするとアーサーが現れた。頭に包帯を巻き、頬をガーゼで覆っていた。
 その姿を見てアーサーとアンドレーの戦いを思い出した。あの場所の悲惨さを見ると強力な魔法を使ったように思えた。しかし、私が行ってからアーサーが広範囲攻撃魔法を使うと様子はなかった。
 
邪魔をしてしまったようだ。
 
私が行かなければ自由に魔法を使え、アンドレーを捕まえることができたかもしれない。
 あの場所に行く前は、自分が侵入者を捕まえるつもりでいた。アーサーがいるなら加勢するつもりだった。出来ると思っていた。しかし、結果はどうだ。
 倒れた騎士の手当をしていた方が今の百倍以上役に立ったに違いない。

 自惚れていた自分が恥ずかしい。

「あの……」

「ありがとう。加勢に来てくれたでしょ。危なかったから、ルカ達のおかげで退散してくれてよかったよ」

 私が発言する前に優しい言葉をかけてくれた。余計に惨めな気持ちになる。
 一年前、自分の知識や剣術、体力のなさを知ったのにちょっと魔法陣ができたから気持ちが大きくなっていた。剣術はルイには互角だが女性のマリア隊長には負けたではないか。
 私は気落ちしてアーサーに言葉に何も答えることができなかった。どんなに慰められて……私はアーサーやルイ、自分自身を危険にさらした。
 包帯だらけの自分の身体を見ながら、今生きているのは奇跡だと思った。

「そうだ、ルイもルカと同じように怪我をしているけど、大丈夫だよ。ルカの心配ばかりしているよ」

 ルイ……。
 
 彼は本当できた人間だ。私は自分の事ばかり考えているのに彼は私の心配ばかりしている。
 ルイだからあれくらい大丈夫かなとも思っていた。漫画のルイは無敵であり何があって平然としていた。
 漫画とこの世界は似ているが同じではない。そう理解したはずであるに一緒に考えてしまう自分がいた。

「ルカ?」

「はい」

「どうしたの? ルカもルイの心配をしていると思っただけど」

「勿論、心配していました。生きていて安心しました」

 取ってつけたような言い方になってしまったからか、アーサーは細い目を更に細くして眉を寄せた。もしかしてアンドレーに様になると思われてしまっただろうか。
 王になんてなりたいとは思わないし、ルイの暗殺も考えていない。そもそもアンドレーもように強くないし、あんなに魔法を自由に扱えない。
 
 ダメだ……自分で言っていて落ち込む。

「あのさ、ハリー・ナイトと戦ったの?」

「そうです。トーマス騎士団長とハリー・ナイトが戦っていて騎士団長が苦戦していました。そのため、私が間にはいりハリー・ナイトの腕を切りました。するとハリー・ナイトはどこかへ逃げました」

 あった事を手短に話すとアーサーは「あー」っと声をあげて手で顔を抑えた。
 
何かダメだったのだろうか。
あの時はああするしかなかった。ハリー・ナイトの件の私の行動は正しかったと思う。ハリー・ナイトが逃げた後トーマス騎士団長は倒れた。つまり、私がいなければ彼の命があったかわからない。

が助けちゃったかぁ」 

「なにか問題でも? あの時ハリー・ナイトには剣が無効でした。だから私が魔法使ったのです。でなければ……」

 アーサーは私の言葉の途中で手を振りながら「わかっている」と言った。そういいながら頭を横に振る。

「今回は助かったけどさ。もしかしたら騎士団長を守って王子死亡していた可能性があったよね。生き残った騎士団長はどうなると思う?」

 アーサーの言葉に私は固まった。
 そんなの考えるまでもない。騎士団長は処罰の対象となってしまう。

「まぁ、今はゆっくり休んでね」

 言いたいことはだけ言ってアーサーは去ってしまった。
 私はどうして良いかわからなかった。よく考えたら真面目な騎士団長が王子に助けられて“感謝して終わり”なはずはない。思い余って自害されては全て台無しだ。
 すぐに行動したかったが、身体を動かない。

 本当どうしよう……。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜

みおな
ファンタジー
 私の名前は、瀬尾あかり。 37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。  そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。  今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。  それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。  そして、目覚めた時ー

オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~

鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。 そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。 そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。  「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」 オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く! ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。 いざ……はじまり、はじまり……。 ※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。 異世界転生しちゃいました。 そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど チート無いみたいだけど? おばあちゃんよく分かんないわぁ。 頭は老人 体は子供 乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。 当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。 訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。 おばあちゃん奮闘記です。 果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか? [第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。 第二章 学園編 始まりました。 いよいよゲームスタートです! [1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。 話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。 おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので) 初投稿です 不慣れですが宜しくお願いします。 最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。 申し訳ございません。 少しづつ修正して纏めていこうと思います。

青い鳥と 日記 〜コウタとディック 幸せを詰め込んで〜

Yokoちー
ファンタジー
もふもふと優しい大人達に温かく見守られて育つコウタの幸せ日記です。コウタの成長を一緒に楽しみませんか? (長編になります。閑話ですと登場人物が少なくて読みやすいかもしれません)  地球で生まれた小さな魂。あまりの輝きに見合った器(身体)が見つからない。そこで新米女神の星で生を受けることになる。  小さな身体に何でも吸収する大きな器。だが、運命の日を迎え、両親との幸せな日々はたった三年で終わりを告げる。  辺境伯に拾われたコウタ。神鳥ソラと温かな家族を巻き込んで今日もほのぼのマイペース。置かれた場所で精一杯に生きていく。  「小説家になろう」「カクヨム」でも投稿しています。  

知識スキルで異世界らいふ

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

《完結》当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!

犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。 そして夢をみた。 日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。 その顔を見て目が覚めた。 なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。 数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。 幼少期、最初はツラい状況が続きます。 作者都合のゆるふわご都合設定です。 日曜日以外、1日1話更新目指してます。 エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。 お楽しみ頂けたら幸いです。 *************** 2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます! 100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!! 2024年9月9日  お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます! 200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!! 2025年1月6日  お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております! ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします! 2025年3月17日 お気に入り登録400人達成 驚愕し若干焦っております! こんなにも多くの方に呼んでいただけるとか、本当に感謝感謝でございます。こんなにも長くなった物語でも、ここまで見捨てずに居てくださる皆様、ありがとうございます!! 2025年6月10日 お気に入り登録500人達成 ひょえぇぇ?! なんですと?!完結してからも登録してくださる方が?!ありがとうございます、ありがとうございます!! こんなに多くの方にお読み頂けて幸せでございます。 どうしよう、欲が出て来た? …ショートショートとか書いてみようかな? 2025年7月8日 お気に入り登録600人達成?! うそぉん?! 欲が…欲が…ック!……うん。減った…皆様ごめんなさい、欲は出しちゃいけないらしい… 2025年9月21日 お気に入り登録700人達成?! どうしよう、どうしよう、何をどう感謝してお返ししたら良いのだろう…

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!

えながゆうき
ファンタジー
 妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!  剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!

処理中です...