No Thank you~殿方なんていりません。悪役令嬢一択~

黒夜須(くろやす)

文字の大きさ
23 / 33

第23話 王家

しおりを挟む
部屋に戻るとどっと疲れが襲ってきてソファに寄りかかった。
レイージョが紅茶ローテーブルに置くとミヅキに隣に腰を下ろした。

「おいで。疲れたでしょ」

レイージョに誘われて、彼女の膝に頭を置いた。レイージョのいい匂いいがして気持ちが落ち着くどころか少し興奮した。

彼女はそんなミヅキの様子に気づいたようで、頭をなぜながら口づけをされた。柔らかい唇に触れられてドキドキした。

「あ……」触れるだけですぐに離れてしまい寂しさを感じた。すると、レイージョは「ふふふ」と艶かし笑みを浮かべた。

心臓が持たない。

「続きは後にしましょう。まだ今日は長いわ」
「あぅ……」

レイージョの色気にやられて言葉が出なかった。

「忙しなくてごめんなさいね。本当は順序立ててやりたかったのだけど……」
「誘拐されるのは嫌です。私の為にありがとうございます」
「いえ。でも……」と言ってレイージョは難しい顔をした。「あそこでも言ったけど、ショータ家が貴女を王妃にすることを承諾したのが不思議なのよ。何か裏がありそうで怖いわ」

不安そうにするレイージョに、ミヅキはためらいながら以前、森であったユウキの兄であるイルミとした約束の事を話した。

「迷惑料として、“わたくしと一緒に居られるように手伝え”なんて告白かしら」

レイージョの言葉を聞いて恥ずかしくなった。あの時は、たいして期待していなかった。
なんとなく希望を言っただけであったが思わぬ所で効果を発揮して驚いている。

「でも、なんで迷惑料を貰うことになったのかしら」
「それは……」

言いづらそうにすると、レイージョは何かを感じとったようですぐに「いいわ」と言った。

「噂によると、ユウキ・ショータが父である当主に頭を下げたらしいわよ」
「え?」
「更に、ミヅキの王妃を承諾しないとショータ家を辞めるとまで言ったらしいわ」
「そこまで……」

あの約束はそんな重いものではなかったはず……。
そこで、約束に承諾したのはユウキではなくイルミであったことを思い出した。

「あの、先ほどから御三家貴族の承諾と言っていますが王族はいいのですか?」
「国王はクラーイ家よりで王妃はショータ家じゃないの。彼らは自分の家の当主と同じ意見を言うわよ。王族なんてそんなもの」

思っていたより王族の価値が軽い。

「だから、私が女王になっても決定権はないのよ。アクヤーク家と同じ意見しか許されないわ。大量の公務をこなすのにね」
「あまり、いい立場ではないですね」
「だから、アキヒトが簡単に王位を譲ったのでしょ。王族なんて鎖でしばられているだけよ」
「そんな、王族になってレイは後悔してないのですか?」

心配になるとレイージョは穏やかに笑いながら、ミヅキの髪をなぜた。

「それが、ミヅキと居られる最善の方法ですもの」そう言う、レイージョを見ると幸せを感じた。

その時、ふと、“卒業パーティーでレイージョがアキヒトに婚約破棄をされる”夢を思い出した。すでにアキヒトとの婚約は解除され、レイージョが王位継承権を得た今、それが実現することはない。

レイージョに予知夢と言われたが、たいして信憑性がないものだと思った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた

22時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。

悪意には悪意で

12時のトキノカネ
恋愛
私の不幸はあの女の所為?今まで穏やかだった日常。それを壊す自称ヒロイン女。そしてそのいかれた女に悪役令嬢に指定されたミリ。ありがちな悪役令嬢ものです。 私を悪意を持って貶めようとするならば、私もあなたに同じ悪意を向けましょう。 ぶち切れ気味の公爵令嬢の一幕です。

悪役令嬢の心変わり

ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。 7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。 そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス! カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!

【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

悪役令嬢の逆襲

すけさん
恋愛
断罪される1年前に前世の記憶が甦る! 前世は三十代の子持ちのおばちゃんだった。 素行は悪かった悪役令嬢は、急におばちゃんチックな思想が芽生え恋に友情に新たな一面を見せ始めた事で、断罪を回避するべく奮闘する!

婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた

夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。 そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。 婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜

高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。 婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。 それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。 何故、そんな事に。 優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。 婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。 リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。 悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない

ラム猫
恋愛
 幼い頃に、セレフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セレフィアはそれを喜んで受け入れた。  その後、十年以上彼と再会することはなかった。  三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セレフィアはその場を離れた。  しかし治療師として働いているセレフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。  それどころか、シルヴァードはセレフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。 「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」 「お願い、セレフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」 ※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

処理中です...