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第27話 卒業パーティー
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卒業パーティー。
ミヅキの夢ではパーティーに興味なく、ひたすら食事をしていた。しかし、実際はそんなのんきなことをしている暇はなかった。
王太子となったレイージョのパートナーとして、パーティーに参加するのだ。
一週間以上前から、肌や髪の手入れをされた。王妃教育と体重管理はレイージョとの婚約が発表された瞬間から始まった。
学校と王妃教育が1日にほとんど占めていた。更に食事は決められた物しか口にできなかった。
はっきり言って地獄。
だが、レイージョと一緒に参加できると思えば、天国に感じた。
卒業パーティーの一時間前。
ドレスとメイク全て整い、椅子に座って落ち着くことができた。しかし、コルセットに締め付けられて水分も思うように取れなかった。何度もつけてもコルセットには慣れることができなかった。
メイドに常に監視される生活にも慣れなかった。
レイージョが次期王妃である時は寮に監視なんてなかったのに、自分が次期王妃になった途端“拉致”の可能性があると言って寮の入り口とエレベーター前に護衛兵が立った。
フロワーまで設置されなかったのが幸いだった。
小さなため息をついていると、部屋の扉を叩く音がした。返事をすると、扉がゆっくりと開いた。
入ってきたのはレイージョであった。
彼女は王太子の正装をして、長かった銀の髪をばっさりと切っていた。
男装麗人とはまさにことのとこであった。
似合いすぎていて、心臓がバクバクした。
「あぁ、変かな? 王太子は男女関係なくこの正装なんだよ」
言葉遣いも変わっていた。
もう、カッコいいの一言であった。
「え? あぁ」レイージョは頬を赤くした。「言葉ね。王太子らしいモノにしなくてはならないだよ。色々規則があるんだ」
「御髪も?」
「あぁ」笑いながら、レイージョは自分の短くなった髪に触れた。「特に決まりはないが邪魔だからね。戦いになれば王太子として戦場にも出るしね」
戦場……。
血の気が引いた。
そんな所へ行って美しいレイージョに傷でも出来たらと不安になった。
どうしたら、彼女が戦地に行かずにすむか考えた。そこで、以前ユウキが魔道具を使えば国一つくらい簡単に破壊できると言っていたことを思い出した。
「他国がなくなればいい……」
「ちょ、ちょっと待って」
レイージョの慌てる声が聞こえた。
「そう、ならないように外交頑張るから物騒なこと考えないで」
そう言って、レイージョは膝をつくとミヅキの手を優しくとり口づけした。以前も同じことをされたが、今日は本当に王子様の恰好をしているから卒倒しそうになった。
レイ、レイ、レイ、レイ。
国を滅ぼすことなど頭からなくなり、レイージョのことでいっぱいになった。
「ミヅキ、おいで」
エスコートされて、卒業パーティー会場に入った。
入場した途端、盛大な拍手と歓声が上がった。それが恥ずかしくて、立ち止まりそうになるとレイージョが腰に手をまわし抱き寄せてくれた。
それが嬉しくて、気持ちが落ち着いた。
会場の中央までくると、曲が変わった。音楽は全て、楽器による演奏であるためその場の雰囲気で曲や演奏の仕方が変わる。
贅沢だなと思いながらも、レイージョとのダンスを楽しんだ。
ダンスなんてやったことはなかったが王妃の嗜みとして覚えさせられた。上手とは言えないが見られる程度までにはなった。
お貴族様の生活は忙しい。
畑仕事をしている方が楽だと思った。
一曲踊ると、レイージョに手を引かれ壇上に上がり椅子に座った。それをきっかけに曲が変わり生徒たちが踊り始めた。
奥に、美味しそうな料理が並んでいたが誰もその傍にいなかった。今すぐにでもそこへ向かいたかったが、檀上の上から降りられる雰囲気ではなかった。
会場の空気を壊さないように、正装をしているが檀上の上のも下にも護衛の人間がいた。きっと、生徒の中にも護衛の人間が紛れ込んでいるのだろうと思った。
ここ数日、制服を着ているが生徒とは明らかに目つきに違う人間が校内を歩いているのを見かけた。
「ミヅキ」
隣に座っていたレイージョに手を引かれた。そして、耳の近くに口を近づけられると「あそこの、料理は部屋の届けてもらおう」と囁いた。
気を遣ってもらい嬉しくなり、頷いた。
レイージョには自分の気持ちが全てわかってしまっていることを思い出した。普段、そこまで支障がないため忘れているが、意識すると恥ずかしかった。
チラリと、レイージョの方を見ると彼女はすました顔をして生徒のダンスパーティーを見ていた。
髪を切ったため、綺麗な“うなじ”がはっきりと見えた。耳の下あたりホクロを発見した。なんだかとても色気があった。
いつも髪の隠れて見えないもの見えるというのはドキドキする。
正装も似合っていた。
控室では、衝撃が強すぎてよく見ていなかったが、やはりカッコいい。
スカートの下から見える足を見て長く素敵だと思っていた。その足はピッタリとしたズボンを履くことで、長さが引き立っていた。
スレンダーなレイージョは、男性のように見えた。
カッコいいが、少し不安になった。どんな姿になってもレイージョは美しく、大好きなのは変わらない。
気になるのは、さきほどから熱い視線を送る数名の女子生徒だ。
以前はそういったことはなかった。
パーティーが終わり、檀上から降りるとレイージョが数名の女子生徒に囲まれた。
「ご卒業おめでとうございます」
女子生徒たちが花を渡すとレイージョは優しく微笑むと、一人一人に声を掛けて受け取っていた。その中には、以前レイージョの事を良く言わなかった生徒もいた。
ミヅキはいい気持ちはしなかった。
レイージョも王太子になる前は、無表情でいたのに今は笑顔で女子生徒と関わっている。
納得がいかなかった。
たくさんの花束を持って歩くレイージョ。その後ろを歩く自分。
花束がなかったら、手を繋いで退場できた。
悲しくて、泣きたくなった。レイージョの持っている花束を奪って捨てたかった。
王妃になる自分がそんなことをしてはいけないし、本来なら卒業を祝ってくれたことに対して礼を言わなければならなかった。
笑顔を作れず、挨拶もできない自分を恥じた。
「ミヅキ」
気づくと、寮の部屋のリビングにいた。
ぼーっとしていたらしい。
ジャケットを脱ぎ、花束を持ったレイージョが立っていた。そんな彼女にお祝いの言葉を言うことができなかった。
「ミヅキ」レイージョはほほ笑むと、持っていた花束を全てゴミ箱に捨てた。
「え?」
その行動に驚き、言葉を失って呆然と立ち尽くした。
「ミヅキ、おいで」
レイージョに呼ばれて、ゆっくりと彼女の傍に行くと抱きしめられた。レイージョは温かく気持ちよかった。
「レイージョ・アクヤークが、レイージョ・エラーヒトになったが、愛するのはミヅキだけだよ。だけど、王太子は国民を愛さなくてはならない」
「はい」
「でも、この部屋に王太子は必要ない」
そう言うとレイージョに顎を上げられ、唇が重なった。舌で唇をこじ開けられると、舌同士が絡み合った。
それが、気持ちよくて頭ぼーっとなった。体が熱くなり腰が抜けて立っていられなくなると、レイージョに支えられた。
彼女の力は強く、動けなくなったがそれが嬉しく思った。
ミヅキの夢ではパーティーに興味なく、ひたすら食事をしていた。しかし、実際はそんなのんきなことをしている暇はなかった。
王太子となったレイージョのパートナーとして、パーティーに参加するのだ。
一週間以上前から、肌や髪の手入れをされた。王妃教育と体重管理はレイージョとの婚約が発表された瞬間から始まった。
学校と王妃教育が1日にほとんど占めていた。更に食事は決められた物しか口にできなかった。
はっきり言って地獄。
だが、レイージョと一緒に参加できると思えば、天国に感じた。
卒業パーティーの一時間前。
ドレスとメイク全て整い、椅子に座って落ち着くことができた。しかし、コルセットに締め付けられて水分も思うように取れなかった。何度もつけてもコルセットには慣れることができなかった。
メイドに常に監視される生活にも慣れなかった。
レイージョが次期王妃である時は寮に監視なんてなかったのに、自分が次期王妃になった途端“拉致”の可能性があると言って寮の入り口とエレベーター前に護衛兵が立った。
フロワーまで設置されなかったのが幸いだった。
小さなため息をついていると、部屋の扉を叩く音がした。返事をすると、扉がゆっくりと開いた。
入ってきたのはレイージョであった。
彼女は王太子の正装をして、長かった銀の髪をばっさりと切っていた。
男装麗人とはまさにことのとこであった。
似合いすぎていて、心臓がバクバクした。
「あぁ、変かな? 王太子は男女関係なくこの正装なんだよ」
言葉遣いも変わっていた。
もう、カッコいいの一言であった。
「え? あぁ」レイージョは頬を赤くした。「言葉ね。王太子らしいモノにしなくてはならないだよ。色々規則があるんだ」
「御髪も?」
「あぁ」笑いながら、レイージョは自分の短くなった髪に触れた。「特に決まりはないが邪魔だからね。戦いになれば王太子として戦場にも出るしね」
戦場……。
血の気が引いた。
そんな所へ行って美しいレイージョに傷でも出来たらと不安になった。
どうしたら、彼女が戦地に行かずにすむか考えた。そこで、以前ユウキが魔道具を使えば国一つくらい簡単に破壊できると言っていたことを思い出した。
「他国がなくなればいい……」
「ちょ、ちょっと待って」
レイージョの慌てる声が聞こえた。
「そう、ならないように外交頑張るから物騒なこと考えないで」
そう言って、レイージョは膝をつくとミヅキの手を優しくとり口づけした。以前も同じことをされたが、今日は本当に王子様の恰好をしているから卒倒しそうになった。
レイ、レイ、レイ、レイ。
国を滅ぼすことなど頭からなくなり、レイージョのことでいっぱいになった。
「ミヅキ、おいで」
エスコートされて、卒業パーティー会場に入った。
入場した途端、盛大な拍手と歓声が上がった。それが恥ずかしくて、立ち止まりそうになるとレイージョが腰に手をまわし抱き寄せてくれた。
それが嬉しくて、気持ちが落ち着いた。
会場の中央までくると、曲が変わった。音楽は全て、楽器による演奏であるためその場の雰囲気で曲や演奏の仕方が変わる。
贅沢だなと思いながらも、レイージョとのダンスを楽しんだ。
ダンスなんてやったことはなかったが王妃の嗜みとして覚えさせられた。上手とは言えないが見られる程度までにはなった。
お貴族様の生活は忙しい。
畑仕事をしている方が楽だと思った。
一曲踊ると、レイージョに手を引かれ壇上に上がり椅子に座った。それをきっかけに曲が変わり生徒たちが踊り始めた。
奥に、美味しそうな料理が並んでいたが誰もその傍にいなかった。今すぐにでもそこへ向かいたかったが、檀上の上から降りられる雰囲気ではなかった。
会場の空気を壊さないように、正装をしているが檀上の上のも下にも護衛の人間がいた。きっと、生徒の中にも護衛の人間が紛れ込んでいるのだろうと思った。
ここ数日、制服を着ているが生徒とは明らかに目つきに違う人間が校内を歩いているのを見かけた。
「ミヅキ」
隣に座っていたレイージョに手を引かれた。そして、耳の近くに口を近づけられると「あそこの、料理は部屋の届けてもらおう」と囁いた。
気を遣ってもらい嬉しくなり、頷いた。
レイージョには自分の気持ちが全てわかってしまっていることを思い出した。普段、そこまで支障がないため忘れているが、意識すると恥ずかしかった。
チラリと、レイージョの方を見ると彼女はすました顔をして生徒のダンスパーティーを見ていた。
髪を切ったため、綺麗な“うなじ”がはっきりと見えた。耳の下あたりホクロを発見した。なんだかとても色気があった。
いつも髪の隠れて見えないもの見えるというのはドキドキする。
正装も似合っていた。
控室では、衝撃が強すぎてよく見ていなかったが、やはりカッコいい。
スカートの下から見える足を見て長く素敵だと思っていた。その足はピッタリとしたズボンを履くことで、長さが引き立っていた。
スレンダーなレイージョは、男性のように見えた。
カッコいいが、少し不安になった。どんな姿になってもレイージョは美しく、大好きなのは変わらない。
気になるのは、さきほどから熱い視線を送る数名の女子生徒だ。
以前はそういったことはなかった。
パーティーが終わり、檀上から降りるとレイージョが数名の女子生徒に囲まれた。
「ご卒業おめでとうございます」
女子生徒たちが花を渡すとレイージョは優しく微笑むと、一人一人に声を掛けて受け取っていた。その中には、以前レイージョの事を良く言わなかった生徒もいた。
ミヅキはいい気持ちはしなかった。
レイージョも王太子になる前は、無表情でいたのに今は笑顔で女子生徒と関わっている。
納得がいかなかった。
たくさんの花束を持って歩くレイージョ。その後ろを歩く自分。
花束がなかったら、手を繋いで退場できた。
悲しくて、泣きたくなった。レイージョの持っている花束を奪って捨てたかった。
王妃になる自分がそんなことをしてはいけないし、本来なら卒業を祝ってくれたことに対して礼を言わなければならなかった。
笑顔を作れず、挨拶もできない自分を恥じた。
「ミヅキ」
気づくと、寮の部屋のリビングにいた。
ぼーっとしていたらしい。
ジャケットを脱ぎ、花束を持ったレイージョが立っていた。そんな彼女にお祝いの言葉を言うことができなかった。
「ミヅキ」レイージョはほほ笑むと、持っていた花束を全てゴミ箱に捨てた。
「え?」
その行動に驚き、言葉を失って呆然と立ち尽くした。
「ミヅキ、おいで」
レイージョに呼ばれて、ゆっくりと彼女の傍に行くと抱きしめられた。レイージョは温かく気持ちよかった。
「レイージョ・アクヤークが、レイージョ・エラーヒトになったが、愛するのはミヅキだけだよ。だけど、王太子は国民を愛さなくてはならない」
「はい」
「でも、この部屋に王太子は必要ない」
そう言うとレイージョに顎を上げられ、唇が重なった。舌で唇をこじ開けられると、舌同士が絡み合った。
それが、気持ちよくて頭ぼーっとなった。体が熱くなり腰が抜けて立っていられなくなると、レイージョに支えられた。
彼女の力は強く、動けなくなったがそれが嬉しく思った。
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