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番外編 制服
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アキヒトは卒業してすぐに、レイージョの側近として働くことになった。王太子をしていたのだからとレイージョに指名されたのだ。
レイージョは慣れない公務で大変なはずであるが、早朝から晩まで平気な顔をして働いていた。自分への指示も適格である上に指摘までされた。
改めて、王太子を譲って良かったと思った。
「そろそろ、時間だよ。帰宅して構わない」
山のような書類の中からレイージョの声が聞こえた。彼女の仕事を手伝うと言ったが帰宅を促されたため従った。
レイージョは自分よりも早く着て遅く帰宅する。
「ミヅキ様可愛そうですよ」
「……わかっている」そうつぶやくレイージョにハエのように追い出された。
挨拶をして、部屋を出ると自室に向かった。
廃太子になったが部屋は以前と同じ場所を使用している。レイージョもミヅキと城に住むつもりらしいが、まだ寮に荷物が残っているらしい。
城に住む予定で、両方で生活していた自分とは違って引っ越すのが大変なようだ。
部屋に戻ると自然と欠伸がでた。公務は慣れている上にレイージョが効率よく仕事を振ってくれている。しかし、仕事は疲れる。
彼女がいなかったらと思うとゾッとした。
「部屋に戻れないかも」笑いながら寝室までくると、ベッドの上にある大きな箱に目がいった。
見覚えのある箱であったがなんだったか思い出せない。
部屋にあるのだから危険物ではないが、不安に思った。ゆっくりと箱に近づいて周りを見るが不審な点はない。
開けて中身を見ると「はぁ?」と王族らしからぬ大きな声をだしてしまった。
「可愛いですよね」突然、後ろから聞き覚えのある声がした。
「カナイ。君の仕業か」ため息しかでない。
「はい」嬉しそうな顔をして近づいてきた。「レイージョ様から買い取った制服です」
「買い取ったって、あ……」
以前、“制服”という言葉に反応したレイージョが大きな箱をカナイに渡しているのを思い出した。
「これか」
「はい。直してもらいました」
「直し?」
カナイは頷くと、箱から制服を嬉しそうに広げた。
「わざわざ、彼女のためにオーダーメイドした服」
「……嫉妬か?」とふざけて聞くと、カナイは真顔で頷いた。
「そうですね」
その顔が怖かった。
思わず下がると、手を掴まれ引き寄せられた。
「なっ」
「どうです?」とニヤリと笑い制服を当ててられた。
ミヅキの為に作った制服であるはずだが、ずいぶんと大きかった。
「直してもらったって、そういう……」大きくため息をついた。制服は自分の身丈にあっていた。
ミヅキのために制服をオーダーしたのが気に入らないというのは分かったが、それを着ろというのは理解に苦しむ。
「気に入らないなら捨てればいい」
「僕だけを見てほしいです。もちろん無理なことは分かっています。僕以外の人間を思って作ったなんて……」
「だから、捨てればいいでしょ」
「いえ。アキヒト様がオーダーしたものを捨てるなんてできません」
彼の理屈は分からない。
顔は整っているし、仕事もできるが、性癖がおかしい。
カナイは前髪をゴムで括ると、顔を近づけた。彼のキラキラとした目に心が揺らぐ。
普段見えない顔に近づかれると心臓に悪い。
「わかった。女装なんて似合わないよ」
根負けして着ることにした。
着替えている姿をじっと見られると、やりづらくて仕方ない。
着替えると鏡をいて落ち込んだ。想像していたがここまで似合わないと多少傷つく。
細身でカナイよりも身長が低いが女性に見間違えられることはない。剣術をやっているから全体的に筋肉質な身体をしている。
スカートからは太い足は引き締まっており、女性の足と間違えることはまずない。
しかし、カナイは「すばらしいです」と言って抱きしめてきた。
彼は目がおかしい。ついでに頭もどこか壊れている。
不思議なことに褒められると、その気になった。もう二度と着るつもりはないがカナイが満足するなら今日は付き合おうと思った。
レイージョは慣れない公務で大変なはずであるが、早朝から晩まで平気な顔をして働いていた。自分への指示も適格である上に指摘までされた。
改めて、王太子を譲って良かったと思った。
「そろそろ、時間だよ。帰宅して構わない」
山のような書類の中からレイージョの声が聞こえた。彼女の仕事を手伝うと言ったが帰宅を促されたため従った。
レイージョは自分よりも早く着て遅く帰宅する。
「ミヅキ様可愛そうですよ」
「……わかっている」そうつぶやくレイージョにハエのように追い出された。
挨拶をして、部屋を出ると自室に向かった。
廃太子になったが部屋は以前と同じ場所を使用している。レイージョもミヅキと城に住むつもりらしいが、まだ寮に荷物が残っているらしい。
城に住む予定で、両方で生活していた自分とは違って引っ越すのが大変なようだ。
部屋に戻ると自然と欠伸がでた。公務は慣れている上にレイージョが効率よく仕事を振ってくれている。しかし、仕事は疲れる。
彼女がいなかったらと思うとゾッとした。
「部屋に戻れないかも」笑いながら寝室までくると、ベッドの上にある大きな箱に目がいった。
見覚えのある箱であったがなんだったか思い出せない。
部屋にあるのだから危険物ではないが、不安に思った。ゆっくりと箱に近づいて周りを見るが不審な点はない。
開けて中身を見ると「はぁ?」と王族らしからぬ大きな声をだしてしまった。
「可愛いですよね」突然、後ろから聞き覚えのある声がした。
「カナイ。君の仕業か」ため息しかでない。
「はい」嬉しそうな顔をして近づいてきた。「レイージョ様から買い取った制服です」
「買い取ったって、あ……」
以前、“制服”という言葉に反応したレイージョが大きな箱をカナイに渡しているのを思い出した。
「これか」
「はい。直してもらいました」
「直し?」
カナイは頷くと、箱から制服を嬉しそうに広げた。
「わざわざ、彼女のためにオーダーメイドした服」
「……嫉妬か?」とふざけて聞くと、カナイは真顔で頷いた。
「そうですね」
その顔が怖かった。
思わず下がると、手を掴まれ引き寄せられた。
「なっ」
「どうです?」とニヤリと笑い制服を当ててられた。
ミヅキの為に作った制服であるはずだが、ずいぶんと大きかった。
「直してもらったって、そういう……」大きくため息をついた。制服は自分の身丈にあっていた。
ミヅキのために制服をオーダーしたのが気に入らないというのは分かったが、それを着ろというのは理解に苦しむ。
「気に入らないなら捨てればいい」
「僕だけを見てほしいです。もちろん無理なことは分かっています。僕以外の人間を思って作ったなんて……」
「だから、捨てればいいでしょ」
「いえ。アキヒト様がオーダーしたものを捨てるなんてできません」
彼の理屈は分からない。
顔は整っているし、仕事もできるが、性癖がおかしい。
カナイは前髪をゴムで括ると、顔を近づけた。彼のキラキラとした目に心が揺らぐ。
普段見えない顔に近づかれると心臓に悪い。
「わかった。女装なんて似合わないよ」
根負けして着ることにした。
着替えている姿をじっと見られると、やりづらくて仕方ない。
着替えると鏡をいて落ち込んだ。想像していたがここまで似合わないと多少傷つく。
細身でカナイよりも身長が低いが女性に見間違えられることはない。剣術をやっているから全体的に筋肉質な身体をしている。
スカートからは太い足は引き締まっており、女性の足と間違えることはまずない。
しかし、カナイは「すばらしいです」と言って抱きしめてきた。
彼は目がおかしい。ついでに頭もどこか壊れている。
不思議なことに褒められると、その気になった。もう二度と着るつもりはないがカナイが満足するなら今日は付き合おうと思った。
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