勇者パーティーから追放される雰囲気だったに、勇者が豹変。動揺するしかない俺。

黒夜須(くろやす)

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道中、魔物が合われるたびにイズクに魔物の闘争心を入れた。対象方法が分からない事もあり不安であった。
彼は必ず正気に戻って来るがいつソレが終わるか分からない。
魔物に移すと例外なく正気を失い暴れていた。拘束して心臓を指してもその場でジタバタと動いている。体内に入れた闘争心は、魔物になじんで仕舞ったようで見る事ができない。時間の経過と共に、身体の動きが悪くなり黒ずんでくる。真っ黒になる頃には全く動かなくなる。
カズマは拳くらいの小さな魔物を見ていた。心臓を貫き、手足を切っても襲いかかろうとする姿は異常だ。
まるで屍。
その話をすると、イズクは驚くどころか納得していた。逆の立場であったら、能力の媒体になる事を嫌がったり、屍を不気味がったりすると思うがイズクは平然とその現実を受け止めている。
イズクの身体を確認したが黒ずんでいる部分はない。
森で襲ってきた野盗に、魔物の闘争心を入れた。全員が狂暴化して襲ってきた。野盗に体内を観察したが、魔物の体内にあった時にように闘争心は光らない。黒い靄も見えない。
目を血走らせた野盗が、カズマに襲い掛かってきた。その速さによけきれず両肩を捕まれた。野盗の口が開き鋭い牙がカズマの首を狙った。
「ぼーっとしてないでよ」
イズクが剣で野盗の頭を飛ばした。ゴロリと落ちた頭は動かなくなったが、カズマの肩をつかんだ手は離れない。頭がなくなっても暴走は止まらない。
イズクは剣を両手に持ち、飛び上がると上から拳を振り下ろし両手を叩き切った。切られた反動で、野盗は倒れた。他の野盗も頭部や手足がなくなっていた。
「イズクがやったのか」
「カズ」真っ赤に染まったイズクと目があった。「俺が守ってやるよ」
惨めだ。
自分の能力も理解できず、生まれ育った村を破壊し、他人に守ってもらうなんて情けない。
イズクは狂暴化した全員、野盗を切り刻んだ。すると、野盗が動かなくなり黒くなると崩れ落ちた。
「体のどこかに弱点があるんだね」
黒い灰をイズクはじっと見ていたかと思うと、灰に触れた。
「うーん、原型がない」
人だったモノに触るのは、怖かった。しかし、暴走した時止める方法がないのは困る。イズクと一緒に灰の中を丁寧に調べたが、特に気になる点は無かった。
「とりあえずは、細切れにするしかないね」
「……うん」
頷きながらイズクを見た。彼が暴走化した時、カズマには止める自信がなかった。
破壊された村と無残な姿の村人を思い出した。
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