勇者パーティーから追放される雰囲気だったに、勇者が豹変。動揺するしかない俺。

黒夜須(くろやす)

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子どもは雄叫びと共に、姿が変化していった。子どもの背中からはコウモリのような羽が生え、口からは涎がダラダラと垂れている。目は血走っている。
「――ッ」
子どもだったモノと目があった。
即座に短剣を手にしたが遅かった。構える前に、鋭い爪が飛んできて、短剣を持っている腕に刺さった。
「ぐっ……」
痛みに耐え、短剣を握りしめると身体を下げると、爪が抜けた。血が吹き出した。
走ったせいかさっき自分で刺した足の傷が開いた。
血が滲んでいる。
「アハハ」危機すぎて、笑いがこみ上げてきた。
今まで、こんなに危機に落ちる事はなかった。全てはイズクのおかげだ。いつも守られ、この危険な世界を安全してくれた。
空しくなった。
「俺はお姫様じゃねぇ」
自分の立ち位置。甘え。ここ数時間で痛いほど感じた。
「これクリアできないなら死んだほうがいい」興奮から、手足の痛みを感じない。
近くにある木に駆け上がると、ヤツが追ってきた。身体に見合わない力を出しているようで、木を掴んだ手はボロボロであった。
よく見ると、肌が剥がれ落ちている。
今までは、オオカミ型の魔物の闘争心を大人、それも争い慣れた荒くれ者に入れていたため身体が壊れる様子はなかった。しかし、今回はカズマよりも遥かに大きな魔物の闘争心を小さな子どもに入れた。
大きすぎる力に子ども身体が対応できない。
指が膨張し、筋肉が丸見えになった。
木はメリメリと嫌な音が鳴り始めた。カズマは慌てて、近くの木に飛び移った時、大きな音を立てて木が倒れた。
子ども……いや、だった者が雄叫びをあげている。
まさに狂人だった。
アレをなんとかしなくてはいけないと思うが、どうして良いか分からない。
まともに戦って勝てる相手ではない。
アレの中に闘争心は見えない。真っ黒なモヤが渦巻いている。
悩んでいる間に、狂人は消えた。どこを探しても見当たらない事に安堵した。
「いや……違う」
安心した自分の顔を思いっきり引っ叩いた。
「ダメだろ」
狂人をあのままにして言い訳がない。アレが街に行ったなら大変な事になる。その時、手足の傷が痛みだした。
「……」
真っ赤になった手足を見て、嫌気が差した。
怪我を理由に狂人を追うのをやめようとしている自分がいる。アレを作ったのはカズマ自身であるのに逃げようとした。そんな自身が気持ち悪くて仕方なかった。
何の躊躇いもなく魔物に向かっていくイズクに合わせる顔がない。
「死にたい……」
罪悪感で押しつぶされそうになった。
「あぁぁぁあ!!!!」
大声で叫ぶと、立ち上がり木から飛び降りて狂人を追った。
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