1 / 25
プロローグ
恋愛なら私にお任せ
しおりを挟む
「ねえ、拓海たくみってさ……彼女とかいるの?」
学校の帰り道、突然の質問に周防拓海は困惑した。
「え、なにいきなり……? 莉乃ってそんな恋愛トークに花を咲かせる人だっけ?」
疑問そのままに、隣で同じように歩いている姫金莉乃に問う。
「私だってするよ」と反論する莉乃は、入学式後の教科書配布のせいで大きくなったカバンを重たそうにしていた。
手を差し出すと、待ってましたと言わんばかりにカバンをこちらに預けてくる。
「……で、なんでそんなことを? 今までそんな話一度もしてこなかったじゃないか」
同じマンション、加えては同じ7階、はたまた加えては隣同士。そんな境遇で育った俺達は物心つく以前から一緒にいた。
同じ保育園、同じ小学校、同じ中学。そこまで一緒だと、もはや家族も同然。
そんな環境を共に過ごした間柄でも、莉乃は一度も恋愛話をしたことがなかった。
だから、てっきり莉乃は恋愛というものにまるで興味がないとばかり思っていた。
「…………拓海って友達できた?」
「――――――!? え! なにが!?」
「その反応……、やっぱりできなかったんだね。クラス内で明らかに浮いてたよ」
「いやいや、初日から友達できる方がおかしいから。そもそもなんで初対面なのにずかずか入り込めるんだよ。仲良くなるのはもっと時間が必要だろ? そんな不用心な人生、俺はお断りだね」
「ほら……ハンカチ使いな?」
「泣いてないから……! ほら、俺めっちゃ元気だし……! そういうのさっ、勝手に決めつけないでもらえます……っ!?」
強引に手渡されたハンカチで視界を覆う。決して現実から目を逸らしている訳ではない。
「でも本当に友達作るのだけは致命的だよね。いい性格してるんだから、もっと積極的になりなよ」
「いい性格って……莉乃さん、あなた俺のこと馬鹿にしてますよね?」
「や、違うから……そういう意味じゃ……」
一瞬顔が赤く見えたのは、夕日のせいだろうか。
「まあでも、拓海は彼女ができただけで結構変わるタイプだと思うよ? そしたらきっと人間関係も克服できるんじゃないかな?」
「彼女か……」
漠然と存在を願ったことはあるが、異性と付き合うなんて友達以上にハードルが高い。
「じゃあ莉乃は恋愛したことあるの?」
「へ……? なんで私?」
「話し振り的に結構なやり手だと見受けられると思いまして」
「何その変な言い方……まあ拓海に比べたら、ね……」
「おお! さすが莉乃! すごいね!」
「ええ……? そ、そうかな……? まあ、インスタのフォロワーさんからもよく恋愛相談を受けるし……?」
莉乃は可愛い。
顔は言うまでもなく、性格も悪くない。敵を作らない性格だ。
きっと彼氏になる人は幸せ者だろう。
「……じゃあさ」
その場に止まった莉乃に気づいて振り返る。
「私と練習してみる?」
「練習って、なにを」
「だから、恋愛の予行演習よ。仮初めだけど私と付き合ってみて、色んなこと経験して、彼女ができた時に失敗しないように練習するの」
「それってつまり、莉乃が彼女役をやってくれるってこと? ……え、莉乃が? なんで?」
「なにそれ、私じゃ不満なの?」
家族同然の莉乃と恋愛ごっこなんて、恥ずかしくて仕方ないだろ。
「大丈夫だって! 経験豊富な私が指南してあげるから!」
「……それって本当にしないと駄目?」
「駄目。もう決定です。取り消せません」
拒否権はないらしい。
「(まあ、俺のためにやってくれるんだもんな……)」
こうして、莉乃による恋愛指導が始まることになった。
学校の帰り道、突然の質問に周防拓海は困惑した。
「え、なにいきなり……? 莉乃ってそんな恋愛トークに花を咲かせる人だっけ?」
疑問そのままに、隣で同じように歩いている姫金莉乃に問う。
「私だってするよ」と反論する莉乃は、入学式後の教科書配布のせいで大きくなったカバンを重たそうにしていた。
手を差し出すと、待ってましたと言わんばかりにカバンをこちらに預けてくる。
「……で、なんでそんなことを? 今までそんな話一度もしてこなかったじゃないか」
同じマンション、加えては同じ7階、はたまた加えては隣同士。そんな境遇で育った俺達は物心つく以前から一緒にいた。
同じ保育園、同じ小学校、同じ中学。そこまで一緒だと、もはや家族も同然。
そんな環境を共に過ごした間柄でも、莉乃は一度も恋愛話をしたことがなかった。
だから、てっきり莉乃は恋愛というものにまるで興味がないとばかり思っていた。
「…………拓海って友達できた?」
「――――――!? え! なにが!?」
「その反応……、やっぱりできなかったんだね。クラス内で明らかに浮いてたよ」
「いやいや、初日から友達できる方がおかしいから。そもそもなんで初対面なのにずかずか入り込めるんだよ。仲良くなるのはもっと時間が必要だろ? そんな不用心な人生、俺はお断りだね」
「ほら……ハンカチ使いな?」
「泣いてないから……! ほら、俺めっちゃ元気だし……! そういうのさっ、勝手に決めつけないでもらえます……っ!?」
強引に手渡されたハンカチで視界を覆う。決して現実から目を逸らしている訳ではない。
「でも本当に友達作るのだけは致命的だよね。いい性格してるんだから、もっと積極的になりなよ」
「いい性格って……莉乃さん、あなた俺のこと馬鹿にしてますよね?」
「や、違うから……そういう意味じゃ……」
一瞬顔が赤く見えたのは、夕日のせいだろうか。
「まあでも、拓海は彼女ができただけで結構変わるタイプだと思うよ? そしたらきっと人間関係も克服できるんじゃないかな?」
「彼女か……」
漠然と存在を願ったことはあるが、異性と付き合うなんて友達以上にハードルが高い。
「じゃあ莉乃は恋愛したことあるの?」
「へ……? なんで私?」
「話し振り的に結構なやり手だと見受けられると思いまして」
「何その変な言い方……まあ拓海に比べたら、ね……」
「おお! さすが莉乃! すごいね!」
「ええ……? そ、そうかな……? まあ、インスタのフォロワーさんからもよく恋愛相談を受けるし……?」
莉乃は可愛い。
顔は言うまでもなく、性格も悪くない。敵を作らない性格だ。
きっと彼氏になる人は幸せ者だろう。
「……じゃあさ」
その場に止まった莉乃に気づいて振り返る。
「私と練習してみる?」
「練習って、なにを」
「だから、恋愛の予行演習よ。仮初めだけど私と付き合ってみて、色んなこと経験して、彼女ができた時に失敗しないように練習するの」
「それってつまり、莉乃が彼女役をやってくれるってこと? ……え、莉乃が? なんで?」
「なにそれ、私じゃ不満なの?」
家族同然の莉乃と恋愛ごっこなんて、恥ずかしくて仕方ないだろ。
「大丈夫だって! 経験豊富な私が指南してあげるから!」
「……それって本当にしないと駄目?」
「駄目。もう決定です。取り消せません」
拒否権はないらしい。
「(まあ、俺のためにやってくれるんだもんな……)」
こうして、莉乃による恋愛指導が始まることになった。
0
あなたにおすすめの小説
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
Hand in Hand - 二人で進むフィギュアスケート青春小説
宮 都
青春
幼なじみへの気持ちの変化を自覚できずにいた中2の夏。ライバルとの出会いが、少年を未知のスポーツへと向わせた。
美少女と手に手をとって進むその競技の名は、アイスダンス!!
【2022/6/11完結】
その日僕たちの教室は、朝から転校生が来るという噂に落ち着きをなくしていた。帰国子女らしいという情報も入り、誰もがますます転校生への期待を募らせていた。
そんな中でただ一人、果歩(かほ)だけは違っていた。
「制覇、今日は五時からだから。来てね」
隣の席に座る彼女は大きな瞳を輝かせて、にっこりこちらを覗きこんだ。
担任が一人の生徒とともに教室に入ってきた。みんなの目が一斉にそちらに向かった。それでも果歩だけはずっと僕の方を見ていた。
◇
こんな二人の居場所に現れたアメリカ帰りの転校生。少年はアイスダンスをするという彼に強い焦りを感じ、彼と同じ道に飛び込んでいく……
――小説家になろう、カクヨム(別タイトル)にも掲載――
ホウセンカ
えむら若奈
恋愛
☆面倒な女×クセ強男の不器用で真っ直ぐな純愛ラブストーリー!
誰もが振り返る美しい容姿を持つ姫野 愛茉(ひめの えま)は、常に“本当の自分”を隠して生きていた。
そして“理想の自分”を“本当の自分”にするため地元を離れた大学に進学し、初めて参加した合コンで浅尾 桔平(あさお きっぺい)と出会う。
目つきが鋭くぶっきらぼうではあるものの、不思議な魅力を持つ桔平に惹かれていく愛茉。桔平も愛茉を気に入り2人は急接近するが、愛茉は常に「嫌われるのでは」と不安を抱えていた。
「明確な理由がないと、不安?」
桔平の言葉のひとつひとつに揺さぶられる愛茉が、不安を払拭するために取った行動とは――
※本作品はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。
※イラストは自作です。転載禁止。
貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
玖羽 望月
恋愛
朝木 与織子(あさぎ よりこ) 22歳
大学を卒業し、やっと憧れの都会での生活が始まった!と思いきや、突然降って湧いたお見合い話。
でも、これはただのお見合いではないらしい。
初出はエブリスタ様にて。
また番外編を追加する予定です。
シリーズ作品「恋をするのに理由はいらない」公開中です。
表紙は、「かんたん表紙メーカー」様https://sscard.monokakitools.net/covermaker.htmlで作成しました。
橘若頭と怖がり姫
真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。
その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。
高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。
再会した幼馴染は××オタクになっていました。
星空永遠
恋愛
小さい頃から幼なじみの黒炎(こくえん)くんのことが好きな朱里(あかり)。そんな彼は引っ越してしまい、気持ちは伝えられず。しかし、高校で再会することができ、それを喜ぶ朱里だったが、彼は以前とは変わっていて……。
だけど、黒炎くんのお家にお泊りしたり、遊園地では朱里にとっては驚くハプニングが!?二人の距離はどんどん近づいて……。イケメンの幼なじみにドキドキが止まらない!じれったい二人の恋の行方は……?
この恋は本気なんです……!
表紙絵=友人作。
昔好きだったお姉さんが不倫されたので落としに行ったら後輩からも好かれていた
九戸政景
恋愛
高校三年生の柴代大和は、小学校一年生の頃からの付き合いである秋田泰希の姉である夕希に恋心を抱いていたが、夕希の結婚をきっかけに恋心を諦めていた。
そして小学生の頃の夢を見た日、泰希から大和は夕希の離婚を伝えられ、それと同時にある頼みをされる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる