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しおりを挟む結局、ちらりとリンツを一瞥したまま何も話さないマルコを不審がりつつ、リンツは外国語担当室を出て、更には魔法書解析課まで出て、気がつくと魔法省の建物すら出ていた。
そこで待っていたのは、何故だかかかわり合いは皆無と言って差支えのない近衛騎士二名で、リンツはマルコにあっさりと引き渡される。
「彼がそうです」
硬い声でそう言ったマルコにそのうちの一人が頷き両脇を固められたかと思えば、二人はあっという間に転移魔法を展開した。
「え、うわっ、」
リンツは魔法なんて高貴で高度なものを習ったことは無いし、平民の知り合いの誰も魔法を使える人間はいない。だから生活魔法以外で魔法を見たのも巻き込まれたのも初めてのことだったが、それを転移魔法だと判別できたのは魔導書を翻訳したことがあったからに他ならない。
確かに「胃がひっくり返るような不快感を伴う」
と訳した覚えがあるが、これは「内臓を無理やり引き出されるような」も付け加えるべきだろう。
「うぇぇぇ……」
「なんだこれは」
「まさか、このような……」
「貴様! 不敬であろう!」
気がつくと鏡のように磨かれた床にへばりついていたリンツになんだかんだと様々な声と視線が向けられていた。
ーうるさい、ちょっと待ってください。吐きそうなんで……おえ
「リンツ・エレヴィス殿」
グイッと誰かにやや乱暴気味に腕を引かれよろよろと立ち上がったが、視線をあげた瞬間にリンツはそれを後悔した。
なぜなら、その先に偉く豪勢な椅子に鎮座したオルティス王国国王、エデルバーグ3世がいたからだ。
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