1 / 49
第1章 パティシエはアーティスト?
第1話 パティシエは審査されている
しおりを挟む
「そうですね、パティシエとは、アーティストだと思います」
少年が、インタビューに答えていた。
とてもヨーロッパらしい、こじゃれた街。
インタビュアーの金髪美女の瞳が見開かれた。目の前の、笑顔爽やかな日本人の少年パティシエの言葉に、
「それは素敵な考え方ですね!」
心から感動した様子で、大きくうなずく。 ひとしきり、それについて具体的に掘り下げる彼女の質問と、少年の答えが続いた。
「それでは最後に。――間もなく、十月下旬から、毎年恒例のチョコレートの祭典<サロン・ド・ショコラ>が、このパリで開催されますが、参加されるんですよね。一色さんにとってのこのイベントとは? 抱負などは?」
「――ええ。世界中からショコラティエが参加する、ワクワクするようなお祭りですね。もちろん、コンクールでは、優勝しますよ。僕が、世界一のチョコレートを創ってみせます」
少年は、はきはきと言いつつ、心の中で苦笑した。
よく歯の浮くようなセリフがつぎつぎ浮かぶよな。けど、このキャラクターで売ってて、意外にウケてたりするから、困ったもんだ。
カメラマンによる写真撮影。菓子職人の戦闘服たるコックコートに前掛け姿で、パリの石畳や階段、カフェやメリーゴーラウンドを背景に、微笑をサービスする。
それで、その日の取材は終了した。
彼は菓子作りの仕事の続きをするために、店の厨房に戻った。
場所は変わって摩天楼。アメリカはニューヨークのビルの一室。
よく磨かれたマホガニーのテーブルの上に、数通のレポートが、扇状に広げられていた。
どれも、一番上に一枚の写真がついている。
写真は全て、ダブルボタンの白衣――コックコートを着た、青年から中年のヨーロッパ人。一人だけ、アジア人の少年が混ざっていた。
「この中で、よりによってコレが、キミの一番狙いかい? 人材発掘を任せるとは言ったけど……ふん。子供じゃないか」
せせら笑うような声が言った。
デスクの前に立ったビジネスマンが、冷や汗をハンカチで拭いつつ、
「一色京旗(けいき)。才能は確かです。まだ十七というのは、マイナス要素というより、プラスの要素と考えています。イマドキの軟弱な日本人のティーンですから、操りやすく、我が社に確実に貢献させうるかと」
「オーケー。そこまで言うのなら……」
マホガニーのデスクの主は、そのレポートを手に取り、少年のパティシエとしての経歴書を、パラパラとめくった。その表情が、皮肉げな微笑に変わっていく。
彼なりに、上機嫌になってきた証だった。
「へぇ……意外に気に入った。ゴーサインを出してあげるよ」
栗色の刈り込んだ髪の頭をあげ、笑いを含んだ声で言う。
直立不動だったビジネスマンが、ハッ、と、素早く頭を下げた。
「パティシエはアーティストでねぇ! 職人だどッ!! 何度言ったらわかるぞね、こんのバッカもんがあ!!」
パリの一角、サントノーレという名前のついた通り。老舗のお菓子屋さん(パティスリー)に、しわがれた罵声がビンビンと響きわたった。
もちろん、罵声はこんな日本語ではなくフランス語だ。だが、フランス語にも方言やイントネーションの訛りがあって、その罵声のニュアンスを日本語に丁寧に変換してみようとするなら、こんな感じ。
そして、そんな怒号を放ったシェフ・パティシエは、聞いての通り、激怒しまくっていた。
今しがた振り下ろした拳骨を腕組みに変えて、フンと鼻息を吹き出す。その白衣――コックコートとシェフ帽には、洗濯しても落ちない、卵と牛乳とバニラとチョコレートの甘い香りが染みついている。たたきあげの老パティシエの勲章だ。
工場の廊下に殴り飛ばされて転がった、どこか華奢な体つきの従業員は、黒髪黒目の黄色人種。日本人だ。先日街角でインタビューを受けていた少年、ニューヨークで我知らず書類選考されていた少年である。
頬が紅く腫れあがり、顔をしかめて手をあてる。
っててててて、などとは言わない。無言の仏頂面。口を結んだまま、とがらせ気味に、立ち上がる。
目は逸らしたまま、
「ったく、野蛮すね。これだから親方は、古い人間なんて言われるんっすよ」
言って、彼は、殴る直前に叩きつけられた雑誌を床から拾い上げた。埃をパンと払う。
シェフの激怒の元凶が、この雑誌だった。
中表に開かれた分厚い女性向け雑誌のページ。彼の上半身の大きな写真と、インタビュー記事。
見出しは『日本人の繊細な感性、器用な手先から作り出される極上スイーツ』『ヨーロッパ各都市から注文殺到』『新作アントルメ・△×ユーロ』『若干十七歳の超新星、一色京旗』……そんなところだ。
売り込まなくても売り出しができると、調子に乗って雑誌記者のインタビューの申込をいくつか受けてたった中で、「パティシエはアーティスト」説をぶったのが、シェフの目に止まって、怒りを買ってしまったというわけだった。
「これ、親方がわざわざ買ってきたんすか? ご購読ありがとうございます。売り上げが上がると、また僕に取材がきちゃいますね。またまた取材料が稼げるかも……うぐっ!」
憎まれ口がすらすらと口をついて出て、その次の瞬間、老骨のボディブローが、京旗の体を一瞬宙に浮かせていた。
げほげほと、咳きこむ京旗。
「舐めた口を叩くでねぇ!! 誰のお陰でここまでの腕になれたと思ってけつかる!!」
そんな青筋たててると、血管切れちゃいますよー、と、また喉まで出かかって、すんでで飲み込む。冷たい毒舌が頭にぽんぽん浮かんできてしまうのは、悪い癖だと我ながら思う。
老シェフ――この店の主人は、今や目を血走らせて、肩ではあはあと息をしていた。顔も、鼻の頭も紅い。
「……どこの馬の骨ともわからん、しかも未経験だというてめえをこの店に拾ってやって、二年。たった二年だ」
唸るように、オーナーシェフは言った。
「たった二年でそこまで腕をあげたってなぁ、たしかにスゲェ。俺にとっても驚き桃の木こんちくしょう、ったく、てえしたもんだった。……だがな。てめえの菓子は、ここまでよ。そう思いあがってちゃ、この道の先にゃあ、ぜってぇ行けねえ。そりゃあ、てめえでもそろそろ分かってきてやがんだろうッ!!」
ビリビリと窓ガラスが震える音が重なって聞こえた。シェフの声は、最後は結局、大音量の怒鳴り声になっていた。
「……分かりませんよ。僕の作品たちのどれが、美味しくないって言うんすか。焼き菓子! 冷菓! パイ! チョコレート! アメ細工! 砂糖菓子!……どれをとっても、親方の仕込みのおかげで、最高のデキのハズですけどね?」
――
お読みいただきありがとうございます!
たぶんあなたは私のアルファポリスでの最初の読者さまです
絶対おもしろい物語にしますね。ぜひブックマーク・フォローをお願いします
――
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません
少年が、インタビューに答えていた。
とてもヨーロッパらしい、こじゃれた街。
インタビュアーの金髪美女の瞳が見開かれた。目の前の、笑顔爽やかな日本人の少年パティシエの言葉に、
「それは素敵な考え方ですね!」
心から感動した様子で、大きくうなずく。 ひとしきり、それについて具体的に掘り下げる彼女の質問と、少年の答えが続いた。
「それでは最後に。――間もなく、十月下旬から、毎年恒例のチョコレートの祭典<サロン・ド・ショコラ>が、このパリで開催されますが、参加されるんですよね。一色さんにとってのこのイベントとは? 抱負などは?」
「――ええ。世界中からショコラティエが参加する、ワクワクするようなお祭りですね。もちろん、コンクールでは、優勝しますよ。僕が、世界一のチョコレートを創ってみせます」
少年は、はきはきと言いつつ、心の中で苦笑した。
よく歯の浮くようなセリフがつぎつぎ浮かぶよな。けど、このキャラクターで売ってて、意外にウケてたりするから、困ったもんだ。
カメラマンによる写真撮影。菓子職人の戦闘服たるコックコートに前掛け姿で、パリの石畳や階段、カフェやメリーゴーラウンドを背景に、微笑をサービスする。
それで、その日の取材は終了した。
彼は菓子作りの仕事の続きをするために、店の厨房に戻った。
場所は変わって摩天楼。アメリカはニューヨークのビルの一室。
よく磨かれたマホガニーのテーブルの上に、数通のレポートが、扇状に広げられていた。
どれも、一番上に一枚の写真がついている。
写真は全て、ダブルボタンの白衣――コックコートを着た、青年から中年のヨーロッパ人。一人だけ、アジア人の少年が混ざっていた。
「この中で、よりによってコレが、キミの一番狙いかい? 人材発掘を任せるとは言ったけど……ふん。子供じゃないか」
せせら笑うような声が言った。
デスクの前に立ったビジネスマンが、冷や汗をハンカチで拭いつつ、
「一色京旗(けいき)。才能は確かです。まだ十七というのは、マイナス要素というより、プラスの要素と考えています。イマドキの軟弱な日本人のティーンですから、操りやすく、我が社に確実に貢献させうるかと」
「オーケー。そこまで言うのなら……」
マホガニーのデスクの主は、そのレポートを手に取り、少年のパティシエとしての経歴書を、パラパラとめくった。その表情が、皮肉げな微笑に変わっていく。
彼なりに、上機嫌になってきた証だった。
「へぇ……意外に気に入った。ゴーサインを出してあげるよ」
栗色の刈り込んだ髪の頭をあげ、笑いを含んだ声で言う。
直立不動だったビジネスマンが、ハッ、と、素早く頭を下げた。
「パティシエはアーティストでねぇ! 職人だどッ!! 何度言ったらわかるぞね、こんのバッカもんがあ!!」
パリの一角、サントノーレという名前のついた通り。老舗のお菓子屋さん(パティスリー)に、しわがれた罵声がビンビンと響きわたった。
もちろん、罵声はこんな日本語ではなくフランス語だ。だが、フランス語にも方言やイントネーションの訛りがあって、その罵声のニュアンスを日本語に丁寧に変換してみようとするなら、こんな感じ。
そして、そんな怒号を放ったシェフ・パティシエは、聞いての通り、激怒しまくっていた。
今しがた振り下ろした拳骨を腕組みに変えて、フンと鼻息を吹き出す。その白衣――コックコートとシェフ帽には、洗濯しても落ちない、卵と牛乳とバニラとチョコレートの甘い香りが染みついている。たたきあげの老パティシエの勲章だ。
工場の廊下に殴り飛ばされて転がった、どこか華奢な体つきの従業員は、黒髪黒目の黄色人種。日本人だ。先日街角でインタビューを受けていた少年、ニューヨークで我知らず書類選考されていた少年である。
頬が紅く腫れあがり、顔をしかめて手をあてる。
っててててて、などとは言わない。無言の仏頂面。口を結んだまま、とがらせ気味に、立ち上がる。
目は逸らしたまま、
「ったく、野蛮すね。これだから親方は、古い人間なんて言われるんっすよ」
言って、彼は、殴る直前に叩きつけられた雑誌を床から拾い上げた。埃をパンと払う。
シェフの激怒の元凶が、この雑誌だった。
中表に開かれた分厚い女性向け雑誌のページ。彼の上半身の大きな写真と、インタビュー記事。
見出しは『日本人の繊細な感性、器用な手先から作り出される極上スイーツ』『ヨーロッパ各都市から注文殺到』『新作アントルメ・△×ユーロ』『若干十七歳の超新星、一色京旗』……そんなところだ。
売り込まなくても売り出しができると、調子に乗って雑誌記者のインタビューの申込をいくつか受けてたった中で、「パティシエはアーティスト」説をぶったのが、シェフの目に止まって、怒りを買ってしまったというわけだった。
「これ、親方がわざわざ買ってきたんすか? ご購読ありがとうございます。売り上げが上がると、また僕に取材がきちゃいますね。またまた取材料が稼げるかも……うぐっ!」
憎まれ口がすらすらと口をついて出て、その次の瞬間、老骨のボディブローが、京旗の体を一瞬宙に浮かせていた。
げほげほと、咳きこむ京旗。
「舐めた口を叩くでねぇ!! 誰のお陰でここまでの腕になれたと思ってけつかる!!」
そんな青筋たててると、血管切れちゃいますよー、と、また喉まで出かかって、すんでで飲み込む。冷たい毒舌が頭にぽんぽん浮かんできてしまうのは、悪い癖だと我ながら思う。
老シェフ――この店の主人は、今や目を血走らせて、肩ではあはあと息をしていた。顔も、鼻の頭も紅い。
「……どこの馬の骨ともわからん、しかも未経験だというてめえをこの店に拾ってやって、二年。たった二年だ」
唸るように、オーナーシェフは言った。
「たった二年でそこまで腕をあげたってなぁ、たしかにスゲェ。俺にとっても驚き桃の木こんちくしょう、ったく、てえしたもんだった。……だがな。てめえの菓子は、ここまでよ。そう思いあがってちゃ、この道の先にゃあ、ぜってぇ行けねえ。そりゃあ、てめえでもそろそろ分かってきてやがんだろうッ!!」
ビリビリと窓ガラスが震える音が重なって聞こえた。シェフの声は、最後は結局、大音量の怒鳴り声になっていた。
「……分かりませんよ。僕の作品たちのどれが、美味しくないって言うんすか。焼き菓子! 冷菓! パイ! チョコレート! アメ細工! 砂糖菓子!……どれをとっても、親方の仕込みのおかげで、最高のデキのハズですけどね?」
――
お読みいただきありがとうございます!
たぶんあなたは私のアルファポリスでの最初の読者さまです
絶対おもしろい物語にしますね。ぜひブックマーク・フォローをお願いします
――
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる